片岡愛之助、ルパン三世「偉大さ感じる」…「流白浪燦星」で「歌舞伎という夢に浸ってほしい」

「流白浪燦星(ルパン三世)」に出演する片岡愛之助(撮影・鈴木正人)

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片岡愛之助(51)が新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン三世)」(12月5~25日、東京・新橋演舞場)に挑む。原作はモンキー・パンチ氏による世代を超えて愛されるコミック、アニメ。このほど愛之助が、作品に臨む意気込み、主人公ルパン三世の魅力、歌舞伎の世界観との融合を語った。【小林千穂】

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「ルパン三世」の物語、キャラクターの魅力について愛之助は「盗むけど悪に立ち向かうところがすてき。おしゃれでダンディー、三枚目だけど決めるところは決める。歌舞伎にしやすい」と言う。

それにしても大きな挑戦だ。世界観、イメージがすでに作られている作品だけに、プレッシャーが大きいのではと思ったが、軽やかだった。「気負ってたら、恐ろしくてできませんよ! 断ります!」と笑い「恐怖心はないです。そんなこと言ってると何もできないです。アニメと完全に同じものをやるわけではありませんし。歌舞伎は夢の世界、テーマパーク。大きな刀をびゅーんと振り回しただけで、20人くらい倒れちゃうような世界ですから、歌舞伎という夢に浸ってほしいです」と話した。

歌舞伎版のオリジナルストーリーで、安土桃山時代に活躍するルパンたちを描く。ルパンと歌舞伎、2つの世界は自然に融合しそうだ。歌舞伎には“家宝の刀”がキーになる物語が多くあるが、新作でも刀が重要な役割を果たす。「ストーリー的に無理がないので、展開しやすく作りやすいです」と言う。

仲間たちとのきずなが構築される、エピソードゼロ的な部分もあると明かした。「ルパンと五ェ門はまだ仲間になっていないんです。俺が1番だ、いや俺が1番だ、どっちが宝を先に手に入れるんだと争っている-という感じです。古典歌舞伎の中では、石川五右衛門は大泥棒で確たる地位を築いている。歌舞伎を普段ご覧になられている方は、世界観をだぶらせて見ると楽しいと思います」。

ルパン、五ェ門、次元大介、銭形警部、峰不二子の扮装(ふんそう)写真も解禁された。ルパンは赤を基調にしたしゃれ者風情。力強さとスマートさが同居する。愛之助は「コスプレにはしたくなかった。皆さまの中にあるイメージを大切にしながら不自然にならないようにしました。かつらも古典のものを織り交ぜながら作りました」とした。

衣装やかつらは試行錯誤を重ねた。細かいところでいえば、盗賊である悪の部分はかつらに落とし込んだ。歌舞伎には大悪党として有名な仁木弾正というキャラクターがいるが、仁木のかつらの形を、ルパンにも一部使った。アニメ好きも、歌舞伎好きも楽しめるような工夫を重ねた上で、これがなくちゃというポイントもきっちり押さえた。

「皆さまが聞きたいというせりふ、『不~二子ちゃん』『待てルパ~ン!』はあります。和楽器で演奏されるテーマ曲も聞くとワクワクします」と話した。

脚本、演出の戸部和久氏はすでに続編への意欲も見せている。記者の周囲では「流白浪燦星」で初めて歌舞伎を見るという者もいる。愛之助に伝えると「ルパンさまさまです。ルパンの偉大さを感じます」と笑みを見せ「世界観はいい」と自信ものぞかせた。

■いい仕事のため「休」

1年も残り少なくなってきたということで、来年の目標を色紙にしたためてもらった。「休」と書いた愛之助は「いい仕事をするために、休みは必要ですからね」。休みが取れたら何したいかと聞くと「妻を旅行に連れていってやりたいなと思って」と、妻で女優藤原紀香に触れた。1カ月の休みだと次の公演準備でまとまって休めないが、2カ月公演期間が空けば2週間休める、と言う。2週間あればやはり海外ですかと問うと、愛之助は「どこでもいいんです。あの人の行きたい所へ」と即答した。

■キャラ設定汎用性高い

脚本、演出の戸部和久氏は、「ルパン三世」の歌舞伎化について「歌舞伎も大変な時代にきている。息が長く、古典作品に将来発展できるような題材がないだろうかといろいろ探す中、『ルパン三世』が出てきました」と説明した。「キャラクターの設定が歌舞伎に当てはめても汎用(はんよう)性が高い。歌舞伎座でかかるような、何本かのうちの1本のような作品に展開できる可能性がある題材」と、今後への期待を示している。

◆「流白浪燦星(ルパン三世)」 安土桃山時代、盗賊ルパン三世(愛之助)と次元大介(市川笑三郎)が、お宝「卑弥呼の金印」を狙っている。封印を解くために、雄龍丸と雌龍丸という宝剣が必要。雌龍丸を手にしている石川五ェ門(尾上松也)も金印を狙っており、ルパンがほれる峰不二子(市川笑也)も事情を知っている様子。ルパンと五ェ門は銭形警部(市川中車)に追われる-。ほか尾上右近、中村鷹之資、市川寿猿、市川猿弥、坂東彌十郎らが出演。