<膵臓がんで余命半年宣告 1年半生きてる映画プロデューサー叶井俊太郎が語る現在、過去、未来>3
末期がんの映画プロデューサー叶井俊太郎氏(56)が対談集「エンドロール! 末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論」(CYZO)を出版した。昨年6月に膵臓(すいぞう)がんで余命6カ月を宣告されながら、抗がん剤治療、手術を拒否して仕事を続けてきた。映画「アメリ」の大ヒット、漫画家倉田真由美氏(52)の夫としても知られ、公開中の映画「恐解釈 桃太郎」の宣伝に奔走する叶井氏に“余命から1年後”の現在、過去、未来について聞いてみた。【小谷野俊哉】
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倉田氏と結婚したのは2009年(平21)。
「くらたまは悲しんでるけど、最近は慣れてきたんじゃないですか。今、一緒に住んでいる娘は中学2年。娘はもう全然なんとも思ってないですよ。彼女も本当に、なるようにしかならんと思ってる子だから。病院でお父さん苦しんでたらなんだろうけど、日常生活送ってるから別に全然悲しんでないです。良かったなと思いますよ。深刻になってないんで」
霊の存在や呪いを描いたホラー映画を、たくさん手がけてきた。死んだら、どうなるのだろう。
「よく分かんないです。今ちょうど『三茶のポルターガイスト・パート2』というドキュメンタリーを撮ってますけど、コックリさんのシーンがあるわけですよ。そこで僕を呼び出してくれれば、死んでいればそこに行けるじゃないですか。来年6月に公開なんで、そういうことやってみたいなと思いますけどね。それまでに死んでなけりゃいけないんだけど、なかなか死なないんです。そういう意味で、今もバリバリ仕事やってますよ」
ハワイ留学、ラジオのADなどをへて、洋画の配給会社に入って外国映画の買い付けを担当した。
「30年くらい前ですね。カルトな『人肉饅頭』とか『キラーコンドーム』をやってました」
01年のフランス映画「アメリ」は空想が好きなパリの女の子の恋愛模様を描いて、若い女性の支持を得て興収16億円の大ヒットになった。
「『アメリ』は、先月デジタルリマスターで公開されました。ネット媒体とかに呼ばれて、インタビューを受けましたよ。もう22年くらい前なんですよ。完成する前に、ホラー映画だと間違って買ってるんですよ。ジャン・ピエール・ジュネ監督が『アメリ』の前に撮った映画が『エイリアン4』なんですよ。その前には『デリカテッセン』とかの近未来人肉映画を撮ってるんです。『エイリアン4』の監督の最新作ってうたったんですけど、全然違うじゃないですか。あれは衝撃でしたよ」
それでも「アメリ」の大ヒットで、フランスから買い付けた叶井俊太郎にもスポットが当たった。
「当たりましたね。ぶっちゃけ『アメリ』に関して言うと、フランスの功績がデカいわけですよ。だって、何もしてないってことですから。日本でのプロモーションだって、フランスのヒットの余波がそのまま来た。日本のフランス系の『エル・ジャポン』とか『フィガロ』とか、そういうおしゃれ雑誌にね、毎月のように『アメリ』が紹介されて何十ページも割いてくれた。それは話題になりますよ。女性が食いついて、いろんなメディアから写真貸してくれって来て、それをさばいてだけだから。こっちから率先して何かやったっていうのはないんで」。
実は『アメリ』の内容を、よく知らない。
「なんか『アメリ』騒動に巻き込まれて気づいたら終わってたと。あんまり言ってないけど、忙しすぎて見てない。『アメリ』が完成する時に、バイヤーとしてフランスに招待されて、その時しか見てないんですよ。だから字幕が付いてないんで、内容がよく分からなかった。日本でやるリマスター版を見に行こうと思っています。そこまで元気じゃないといけないです。最後まで字幕を見て、意味が分かって死にたいなって」
(続く)
◆対談集「エンドロール! 末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論」(CYZO) 膵臓がんで余命半年を宣告された叶井氏が友人、知人である鈴木敏夫、奥山和由、ロッキン・ジェリービーン、河崎実、岩井志麻子、中瀬ゆかり、中村うさぎら15人の文化人と対談。あとがきは夫人の倉田真由美氏。
◆叶井俊太郎(かない・しゅんたろう)1967年(昭42)9月18日、東京都生まれ。ラジオ局ADなどをへて、91年(平3)に映画配給会社入社。92年香港映画「八仙飯店之人肉饅頭」買い付け。ジャンルはエログロ・変態から恋愛まで幅広い。01年映画「アメリ」が興収16億円の大ヒット。03年ファントム・フィルム設立も05年退社。同年トルネード・フィルムを設立して社長。同社は10年に3億円の負債を抱えて破産申請。プロデューサーとして「いかレスラー」「ヅラ刑事」「日本以外全部沈没」など河崎実監督作品を手がける。09年9月に漫画家倉田真由美氏と4度目の結婚。中2の娘がいる。昨年6月に膵臓がんで余命半年の宣告を受ける。