56歳叶井俊太郎氏の余命1年後 抗がん剤、手術拒否し映画宣伝、痩せた以外は元気に仕事

りりしい表情でカメラを見る叶井俊太郎氏(撮影・鈴木みどり)

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映画プロデューサー叶井俊太郎氏(56)が対談集「エンドロール!末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論」(CYZO)を出版した。昨年6月に膵臓(すいぞう)がんで余命6カ月を宣告されながら、抗がん剤治療、手術を拒否。映画「アメリ」の大ヒット、漫画家倉田真由美氏(52)の夫としても知られ、公開中の映画「恐解釈 桃太郎」の宣伝に奔走する叶井氏に“余命から1年後”の現在、過去、未来について聞いてみた。【小谷野俊哉】

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先々月10月に、昨年6月に膵臓がんで余命6カ月の宣告を受けていたことを明かした。

「去年の6月に、ちょっと黄疸(おうだん)が出ちゃって、病院に行った。内視鏡で検査されて『奥さん、呼んでくれ』って言われて。くらたま(倉田真由美氏)と一緒に行ったら『膵臓がんがステージ3です』と軽く言うんですね。で、『余命は半年で、もって1年です』と。体調の悪さとかは、全然なかったんですよね。健康診断的なものは毎年やってますけど、会社の健康診断では見つからなかったです。10月初めに末期がんを公表したら小中高の友達からも、何十年ぶりかに連絡とって、会えたりしました」

抗がん剤、手術といった標準治療を拒否して、仕事を続ける道を選んだ。

「抗がん剤治療してから手術すると、10%から20%の成功率だから。抗がん剤治療を受けないで手術っていうのは、できないって言われました。がんを小さくしてから切除するんだけど、それの成功率が10%から20%。残りはすぐ転移か、再発だと。そこで手術してうまくいかなければ、かえってがんが暴れちゃうっていうよりも、転移とかすると終わりらしいですね。だからそれにさ、10%にはかけられなくないですか。だから僕も、それはやめときますって言ったら『大多数の人がやるんですけどね』って言われて。ああ、そうなんだと」

56歳。映画界ではエログロ映画のバイヤー、宣伝マンのイケメン、モテ男として知られる。09年に4度目の結婚をした倉田氏との間に中学2年生の女の子もいる。

「うんまあね、もう結婚したし。いろんなことをやった。要するにあれですよね、未練がないってことですね。ええ、だからこの世に。もう余命半年って言われても、悲しくはなかったですよ。やり残した的なことは、まあないです。もう全てやり切ったという。だから、そうすると心残りっていうのは、来年公開を控えてる映画とかですね」

少しずつ痩せ、体力も弱っているが、余命宣告の半年はクリアした。それから1年後の今も、仕事は続けられている。

「この間、病院に行ったら肝臓に転移の疑いがあるって言われたんです。でも治療は全然してないんで、いわゆる抗がん剤的な。だから、それでもっているのかもしれないね。抗がん剤治療するとやっぱり体力が弱るから」

標準治療は拒否したが、免疫治療はやっている。

「免疫療法的なNKT細胞治療といって、血を抜いて、それを京都大学で培養して戻すみたいなことをやっています。去年やって、今年も、今やってる最中ですね。あと1週間か2週間に1回、高濃度ビタミン点滴をやってます。自宅でね」

今年8月には入院して手術を受けた。

「1カ月くらい入院しました。あれは、直接、食道と腸をつないだんで。膵臓の所にあるがんが大きくなっちゃって胃を圧迫して食事が取れなくなっちゃった。だから、がんの治療ではなくて胃を半分切って、食道と小腸をつなげた手術。それで、やっと食べられるようになりました」

余命宣告された時を1年すぎても、痩せた以外は元気に仕事をこなしている。

「なかなか死なないねえ。でも、あんまり末期がんでステージ4の人のインタビューってないですよね。受けないし、だいたい入院中じゃないですか。入院中でステージ4の人のイメージって、寝て管につながれてっていうイメージですよね。もう痩せ細ってね。去年の6月に言われた時はステージ3で、今年の春夏でステージ4になりました」

死は誰にでもやってくる。だが来たるべき日に対して、葬式の準備もしていないという。

「何もしてない。くらたまに任せますから。希望は全然ないですね。だから本当は墓とかいらないと思ってます。逆に、なんか散骨とかね。海に散骨するのもいいなと思ってます」

8日にプロデューサーを務める、早河ルカ(20)主演の映画「恐解釈 桃太郎」が公開された。昔話を血しぶきが飛ぶ、ホラー映画にしたてた。

「もうほぼコメディーに近いですよね。一応ホラーでお願いしたんですけどね。主演の早河さん、頑張ってますよ。鬼に取りつかれる役の長村航希、なんか最近ドラマに出てます。いい感じですね」

倉田氏と結婚したのは09年。

「くらたまは悲しんでるけど、最近は慣れてきたんじゃないですか。今一緒に住んでいる娘は中学2年。娘はもう全然なんとも思ってないですよ。彼女も本当になるようにしかならんと思ってる子だから。病院でお父さん苦しんでたらなんだろうけど、日常生活送ってるから別に全然悲しんでないです。良かったなと思いますよ」

霊の存在や呪いを描いたホラー映画を、たくさん手がけてきた。死んだら、どうなるのだろう。

「よく分かんないです。今ちょうど『三茶のポルターガイスト・パート2』というドキュメンタリーを撮ってますけど、コックリさんのシーンあるわけですよ。そこで僕を呼び出してくれれば、死んでいればそこに行けるじゃないですか。来年6月に公開なんで、そういうことやってみたいなと思いますけどね。それまでに死んでなけりゃいけないんだけど、なかなか死なないんです。『恐解釈 桃太郎』にも『叶井俊太郎に捧ぐ』ってエンドロールに入れちゃってるけど、まだ生きてる。なんだったら、来年の6月くらいに『三茶のポルターガイスト・パート2』の宣伝やってるかもしれないし(笑い)。面白いね。その時はまた取材してください。『まだ生きてた!』みたいな(笑い)」

スタンバイOK。笑顔で人生のエンディングを迎えられる。

◆「エンドロール!」(CYZO) 膵臓がんで余命半年を宣告された叶井氏が友人、知人である鈴木敏夫氏、奥山和由氏、ロッキン・ジェリービーン氏、河崎実氏、岩井志麻子氏、中瀬ゆかり氏、中村うさぎ氏ら15人の文化人と対談。あとがきは夫人の倉田真由美氏。

◆叶井俊太郎(かない・しゅんたろう)1967年(昭42)9月18日、東京都生まれ。ラジオ局ADなどをへて、91年(平3)に映画配給会社入社。92年香港映画「八仙飯店之人肉饅頭」買い付け。ジャンルはエログロ・変態から恋愛まで幅広い。01年映画「アメリ」が興収16億円の大ヒット。03年ファントム・フィルム設立も05年退社。同年トルネード・フィルムを設立して社長。同社は10年に3億円の負債を抱えて破産申請。プロデューサーとして「いかレスラー」「ヅラ刑事」「日本以外全部沈没」など河崎実監督作品を手がける。09年9月に漫画家倉田真由美氏と4度目の結婚。中2の娘がいる。昨年6月に膵臓がんで余命半年の宣告を受ける。