志田彩良、2作で連続ドラマ主演「自分の限界を超えている瞬間が初めて実感できている」

念願のサイコパス役に挑戦したという志田彩良。爽やかで清楚な雰囲気とどこかミステリアスな彼女の活躍に目が離せません(撮影・垰建太)

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2024年は、志田彩良(24)の年になる。目標だった連続ドラマ主演の座を2作射止め、この1月から相次いで放送がスタートする。日本テレビほかで5日から放送の「消せない『私』-復讐の連鎖-」(金曜深夜0時半。初回は1時10分)で連続ドラマ初主演。18日からスタートする中京テレビ(愛知、岐阜、三重)で放送の「こんなところで裏切り飯」(木曜深夜1時4分)では、50歳年上の伊武雅刀(74)とダブル主演。両作でこれまでに見せたことのない表情、演技を見せる志田の今に迫った。【村上幸将】

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「消せない『私』-復讐の連鎖-」は、優等生的な女の子の役どころが多かった志田のイメージを一変させる、挑戦的な作品だ。

5日放送の1話では、演じる灰原硝子が人気高校生モデルになったことをねたむ同級生の女子にわなにハメられ、資料室で男子生徒に乱暴される。襲われるさまを同級生の女子に撮影され、動画をインターネット上に拡散されてしまう。誹謗(ひぼう)中傷の標的となり、住所を特定された自宅は不審火で燃え、両親も死亡。炎に包まれる自宅を見つめる視線が、悲しみから鋭くとがった攻撃的なものに変わっていくさまこそ志田の1つの新境地だろう。

深夜ドラマとはいえ、地上波の限界まで攻めた表現を追求したシーンが2つ、登場した。1つは、どん底に落ちた硝子が自室で首をくくるシーンだ。撮影はワイヤで志田の体をつり、首にひもをかけた際もスタッフが「苦しくないですか?」と確認するなど、徹底した安全管理と細心の注意が払われた。その中、志田は「苦しい表情をリアルにしたい」と自らの判断で、苦しさを感じる体勢で演じきった。「本当に無理だったら、すみませんと言おうと思って、ギリギリまで頑張ろうと。実は、ちょっと苦しかった」と振り返る笑顔とは裏腹に、勝負をかけたシーンだった。

2つ目は、資料室内で乱暴されたシーンだ。撮影にあたり、そうした被害に遭った女性の経験談をまとめた資料を読み込み、役について徹底的に考えた。その上で、現場に入った段階で「その場で感じたことを、そのまま…」と、作り込んだ役をあえて脇に置き、共演者との生のぶつかり合いに注力した。「あまり記憶がないくらい」現場に身を投げ出して演じたことで、屈辱と悲しみにまみれた顔全体から、痛みがにじみ出すような迫真のシーンとなった「一番、苦手」だと思ってきた、表情での芝居で大きな成長を見せた。

全てを失い、心の傷を抱えた硝子は祖母の家に引き取られ、すさんだ生活を10年送った末、自分をわなにハメたかつての同級生がテレビの中継インタビューに笑顔で答える姿を見て、復讐(ふくしゅう)を決意。2話以降「髪形も、話し方も変えて、いろいろな人格に変わって」ターゲットに迫り、突き落としていく。

1つの物語の中で、そこまで変身し、変わっていく役どころを演じるのも初めてだ。「これまでだったら、自分の中でお芝居はここまで…と、勝手にブレーキがかかっていた部分が、壊れた瞬間があった。自分の限界を超えている瞬間が、この作品で初めて実感できている」と口にした。そして「(これまでのイメージを)壊したいと思って挑んでいる。ここから全く違った一面を見せていけたらと思います」と意気込んだ。

昨年11月に「こんなところで裏切り飯」全10話の撮影を終え、同12月から「消せない『私』-復讐の連鎖-」の撮影と多忙な日々を送っている。それでも「ありがたいことに休みもほとんどなく、現場に行けている毎日。すごく充実していて、今までにないくらい楽しい瞬間がたくさんある」と笑みを浮かべる。

その裏には挑みたかった影のある役、サイコパス的な役を演じたいという念願が、かなった喜びがある。「1話を見て、苦しくて見たくないという人も、2話からが復讐の始まり。恐らくスカッとして、1話のモヤモヤを解消いただけると思う。勇気を出して見て欲しい」と力を込めた。

何より、1月期に2本の主演ドラマが放送される自覚からか、表情はグンと大人っぽくなった。「こんなに貴重な機会をいただけて、ありがたい。ドラマの主演が自分の中での、1つの目標だったんですけど、同時に2本も出来るとは思っていなかった。感謝しかない」と喜びをかみしめた。そして「役を頂いたからには、自分に出来ることは限界を超えてでもやり切って視聴者の方々に届く作品にしたい」と誓った。

■鋭い洞察力、謎多き秘書

「こんなところで裏切り飯」で志田が演じる小野寺真理子は、全国にホテルを展開するグループを一代で築いた豪腕社長・榊原総一朗の元に前任の産休代理の秘書としてやってきた新人だ。言葉数が少なく、他人に本心を打ち明けない謎多き美女だが、実績とこわもてで社内の人間から恐れられる総一朗が、社員たちに本心を打ち明けられないでいることに気づくなど鋭い洞察力を見せる。

榊原の出張アテンド役に任命された真理子は、出張先でグルメな総一朗にベストな食事を提供するという最大のミッションの遂行に危機が及ぶ中、常に手にする自身のノートから自発的に店を選び、総一朗を導く。ご当地グルメを出すわけでもない、どこにでもありそうな店だったことに上司は危機感を募らせるが、そこで供された一見、どこでも食べられそうなメニューこそ、その店でしか食べられない逸品だった。

グルメを前に、真理子が感情を解き放つシーンは、能面のような顔が感動と喜びにあふれた豊かなものに激変する。「消せない『私』-」とはひと味違うが、この作品でも表情の芝居で新たな引き出しと可能性を示した。コミュニケーション下手な社長と秘書を演じる志田と伊武の掛け合いが大きな見どころだ。志田は伊武との共演を振り返り「すごい表情が豊かですてきなお芝居をされる方。間近で見ていて私も笑ってしまうシーンもあって。伊武さんには、すごく勉強させていただきました」と感謝した。

◆志田彩良(しだ・さら)1999年(平11)7月28日、神奈川県生まれ。11年に母がインターネット上に掲載していた写真を見た現所属事務所からスカウトを受けて芸能界入り。13年に雑誌「ピチレモン」でデビューし、15年12月まで専属モデルを務める。14年に短編映画「サルビア」に初主演し俳優デビュー。17年「ひかりのたび」で長編映画初主演。21年4月期のTBS系日曜劇場「ドラゴン桜」で演じた小杉麻里役で話題を呼ぶ。21年には、今泉力哉監督がメガホンを取った映画「かそけきサンカヨウ」に主演し、所属事務所の先輩・井浦新と共演。164センチ、血液型A。