快男児、叶井俊太郎さんが16日に都内の自宅で亡くなった。
一昨年6月にステージ3の膵臓(すいぞう)がんで余命半年を宣告されてから、1年8カ月。56歳でのあの世に行くのは早過ぎるが、本人は濃い人生を全うして満足なのだろう。抗がん剤治療をして外科手術をしての闘病を「20%の可能性にかけて痛い思いをしたくない」と拒否。最後まで、ひょうひょうと映画宣伝の仕事に没頭した。
2001年(平13)にカルト映画だと思って買い付けた、フランスの恋愛映画「アメリ」が興収16億円のヒットになってマスコミに登場した。09年には「だめんず・うぉ~か~」で知られる漫画家の倉田真由美氏(52)と4度目の結婚をして、中学2年の娘さんがいる。「娘はね、病気の父親と一緒にいるより友達と遊ぶ方がいいみたい。それよりも、くらたま(倉田真由美)は日刊スポーツでコメンテーターをしていたんでしょ。僕が死んだら、仕事を回してあげてくださいよ」と、妻の倉田さんのことを最後まで気遣っていた。
一緒に仕事をしたのは2021年(令3)から2年ちょっと。「頼まれたことは断らない」をモットーにしているので、叶井さんがどんなカルト映画を持って来ても、インタビュー取材は断らなかった。叶井さんも、映画の興行成績と同じく、記事の大きさにこだわることなく“載ればOK”と次々にインタビューをセッティングしてくれた。
東京育ちのユニークで爽やかなおしゃれイケメン。モテ男として知られ、付き合った女性の数は600人と言われた。昨年11月にがんを発表した時に「楽しい老後を送るために、モテモテの秘訣(ひけつ)を聞こうとずっと思っていた」というと「あれは自分でも数は分からない。あと、モテたのは高校生とかの時に新島の民宿とかでバイトして時だから、おじさんになってからは無理」と笑われた。
最後に顔を合わせたのは、先月の10日。1月26日に公開された映画「唐獅子仮面」の光武蔵人監督(50)のインタビューの時。痩せはしたが変わらぬ笑顔に思わず「元気そうですね」と言ってしまったら「そんなわけないじゃないですか」と苦笑された。そして、そのインタビューを後ろで見守っていたが、気が付いたら姿を消していた。具合が悪くなったそうだ。その後はメールでやりとりしたが、現場では会えなかった。
今年6月には、叶井さんが手がけたドキュメンタリー映画「三茶のポルターガイスト パート2」が公開される。「もしも死んでいたら映画に、それかその公開の現場に行ってみたい。でも、なかなか死なないんです」と笑っていた。また、どこかで会えるような気がしてならない。ご冥福を祈ります。【小谷野俊哉】