昨年、劇作家協会新人戯曲賞を受賞した脚本家、演出家の海路(みろ=24)氏が、作、演出を手がける新作「空夢」(4月26日~5月6日、東京・すみだパークシアター倉)を上演する。主宰する劇団papercraftの第10回公演。脚本家としてのこれから、夢、作品にこめた思いなどを聞いた。【小林千穂】
18歳の時、シナリオスクールに通い、ドラマの脚本を学ぶことで、脚本家への道がスタートした。「ごくせん」「ナースのお仕事」などで知られる脚本家江頭美智留氏に出会い、教えを受けたことが、今につながっている。
「プロット(=物語の筋や構想)を見てもらうと『人間ドラマがない。芝居がない』と言われました。最初は何を言われてるか分からなかったんです。今思うと、役者さんが芝居をやる時にちゃんと感情が動くようなものを、ということだったと思います。自分が演出をするようになって、芝居がないとはどういうことか、分かるようになりました。脚本や戯曲は人が演じることを前提に書くものなので、感情が動くように作らないといけない。『芝居がない』と言われたのは衝撃的でした」
江頭氏が主宰する劇団の公演を見たことが、舞台、演劇への入り口になった。
「舞台の魅力は、同じ空間を共有していること。当たり前と言えば当たり前ですが、板の上に世界があって、その世界と客席がシームレスになっていることが、生の演劇のいいところだと思っています」
20年に劇団を立ち上げたが、世の中はコロナ禍だった。
「良くも悪くも、コロナ前の演劇を知らないので、公演を打つことのリスクが分かってなかった。お客さんはこんなにも来ないもんだろう、公演はこんなにもつぶれるもんだろういう心構えがあったんだと思います。何も考えてなかったから、奇跡的にここまでこられた。もっと頭が良かったら、公演打たなかったかもしれないですね。ただ当時は、なんとか千秋楽まで公演をつぶさずにやりたい、とがむしゃらでした」
がむしゃらさの原動力を聞くと、冷静な表情で一気に語った。
「やらなかったら何者でもなくなっちゃうと思いました。一応、大学に行っていましたが、書くことばっかりやってて友達も全然できなかったし、サークルも入っていませんでした。ここで辞めちゃったら何も残らなくなっちゃうから、自分の存在意義というか、自分を保つために必死にがむしゃらに書いて、公演をしたという感覚でしたね」
年に3~4回の公演を精力的に続けてきた。昨年の劇作家協会新人戯曲賞の受賞後初公演は体調不良者が出て1回しか上演できなかったため、「空夢」が実質約1年ぶりの公演となる。
「気にしてくださった方、楽しみにしてくださってた方、受賞して見に行きたいと思ってくれてる方に対して、自分たちはこういう作品をやる人です、劇団ペーパークラフトはこういうことやりますよというのを見せたいです。受賞してちょっと自分の中で心境の変化がありました。賞がすべてではないと思いますが、目に見える結果があることによってやれる創作って絶対あると思います」
いつか海外で作品を上演したいという夢もある。
「野田英樹さんが『THE BEE』をイギリスの俳優の方々とワークショップをして創作して、日本に逆輸入して上演されましたよね。その過程にとても興味を持ちました。すっごい楽しそうだと思いました。ただ、今、自分がやっている作品は日本人感覚に基づいて作っているので、さらに別の角度から書く力を付けないといけないなと思います。遠い先の夢ですけど興味があります」
夢をもう1つ明かしてくれた。師匠である江頭氏の作品を演出することだ。
「江頭先生に出会っていなかったら、大学で就活していただろうし、書くことから離れていたかもしれない。あの出会いがあったか、なかったかで、人生がすごく変わったと思っています。教わったことが原点です。江頭先生の『名前を呼んで、もう一度』という作品がすごく好きなので、いつかかかわれたらいいなと思っています」
新作は、同級生が暮らす”同級生の街”で起こる物語。不思議で不穏で、独特な雰囲気が漂っている。
「最初に『同級生が1人多い』というワンフレーズが浮かんだんです。いつの間にか同級生が多いんだけど結局何も分からない。そして、見もしないのに見たように語る、空夢、という言葉に出会いました。2つの要素が合体したところから入った作品です。うその裏にある人間の汚さや、何かかを守るための言葉や行動、いろんなことが隠れているんじゃないかと感じています」
ダンスパフォーマンスグループ、s**t kingz(シットキングス)の小栗基裕、坂ノ上茜らが出演する。
「過去の作品も含め出演者には、見せようとせず、その場にただいてください、と伝えています。目の前で起きていることを目撃するように作りたいんです。小栗さんはダンサーなので見せることに対しての意識を強く持ってやってこられたそうです。だから、今回はすごくチャレンジングだとおっしゃっていました。それぞれの出演者みんな何かチャレンジがあるだとろうなと思いながら書きました」
稽古開始を目前に控え、さらに脚本をブラッシュアップさせるという。
◆海路(みろ)1999年(平11)7月20日、埼玉県生まれ。日テレ学院シナリオライター講座で学ぶ。20年主宰する劇団papercraftを立ち上げる。「今日のどこかで」がウェブドラマ化され、脚本、演出を担当。23年「檸檬」で劇作家協会新人戯曲賞。映像作品も手がけ、短編映画の監督も。
◆空夢 小栗基裕、坂ノ上茜、前田悠雅、入手杏奈、朝田淳弥、佐々木修二、村上航が出演。全14回公演。チケットは3月9日一般発売。