声優の小見川千明「橋渡し的な部分を」中村福助・児太郎の舞台出演、物語のストーリーテラー担う

舞台「第二回 中村福助・児太郎の会 三本の糸」上演を前に歌舞伎ポーズで意気込みを語った小見川千明(撮影・松尾幸之介)

声優の小見川千明(34)が、27日上演の舞台「第二回 中村福助・児太郎の会 三本の糸」に出演する。歌舞伎俳優中村福助(63)中村児太郎(30)親子による第2弾で、今回は児太郎が企画・構成も担当。歌舞伎「三人吉三巴白浪」を題材に、現代を生きる人々に「生きること」と問う和洋織りなす物語となっている。歌舞伎のエッセンスも残る作品で紅一点の出演となる彼女に、このほど見どころと意気込みを聞いた。【聞き手=松尾幸之介】

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小見川は物語のストーリーテラーの立場を担う。

「今回は現代演劇の要素も組み込んだエンタメ異種格闘技のような感じで、歌舞伎が好きな方もそうでなかった方も楽しめるものになっていると思います。私もみなさんとの橋渡し的な部分を担っていきたいです」

「生きること」を問う物語だけに、感じることも多いという。

「福助さんと児太郎さんを中心に、構成も児太郎さんがやっていることに意味があるんだなと思っています。詳しくはネタバレになってしまいますが、父と子の関係、愛情だけではない要素も裏テーマとして描かれているので、このテーマを2人がやるんだなと、今から私もドキドキしています。私は女性で、歌舞伎役者の方とご一緒することがほとんどないので、こんなチャンスにめぐりあえてとてもうれしいです」

稽古では歌舞伎特有の作法に戸惑うこともあったが、必死に食らいついている。

「児太郎さんがムードメーカー的な感じで盛り上げてくださいますし、今はすごく楽しいです。今回は普通の役者さんも出られていますが、歌舞伎の方々はみなさん稽古終わりとかはちゃんと膝をついてごあいさつをされます。最初は私も追いつかなかったです(笑い)。お弟子さんたちはみなさんずっと正座で座られていて、歌舞伎の世界なんだなと感じながらやっていますね」

子役から20代中盤までは役者として活動していたが、近年は声優に転向。地声のハイトーンボイスとギャップのある演じ分けで、各所で存在感を放っている。声優としては10代の役を演じることが多かったが、今回は「自分史上最も年相応の役をいただきました」と笑う。

「普段、10代をやり過ぎていて、逆に探り探りな感じです。お芝居の幅も広がりますし、ファンの方々に見ていただけるのもうれしいなと思っています」

声がかかれば舞台の仕事も精力的にこなしており、4月には別作品にも出演予定。音響や演出を担う仕事もこなすなど活躍の幅を広げており、「40歳までに『売り言葉』のような一人芝居に挑戦することも目標のひとつです」と掲げる。今回の舞台では歌舞伎の特徴的な間の使い方も勉強になったという。

「今は15秒の動画だったり、アニメだと23分間の中にどれだけテンポよく詰め込むかという作業をやってきましたが、歌舞伎では静寂の使い方をとても大事にされています。無言で移動する場面もあったり、所作がより大事になってきます。もっと間をとってくださいと言われるので、まわりのみなさんと比べて違和感が出ないように緊張しながらやっていますね」

迫力ある殺陣のシーンもあるなど、古典と現代が組み合わさった注目作だ。

「どう生きていくか、愛って何だろうと帰り道にかみしめながら振り返ることのできる作品です。殺陣のシーンだけでもチケット代のもとがとれるくらいなので楽しみにしていただけたらと思います」

○…企画・構成を務める中村児太郎もコメントを寄せ「皆さまのお力添えのおかげで2回目の『中村福助・児太郎の会』を開催できまして、うれしく思います。1回目は古典の重きを置いておりましたが、今回はさまざまな新しい試みをしておりますので、お客さまに楽しんでいただけますよう、精いっぱい務めて参ります」と意気込みを語った。小見川については「私とは別世界の声優という場で活躍されている方」とし「共演をさせていただき、日々刺激を受けております」とした。

◆舞台「第二回 中村福助・児太郎の会 三本の糸」あらすじ とある村。政(松田凌)とお静(中村児太郎)は仲むつまじい夫婦。弟の佐吉(中村莟玉)とも仲良く、幸せな日々を過ごしている。赤子を身ごもっているお静は無事に3つ子を産むが日本一の剣の使い手、椿鬼座右衛門(安田桃太郎)が村人たちを襲い、その手下によって絶命するお静、政、佐吉。天つ神(中村福助)の助けにより3つ子はそれぞれの道に分かれて成長する。ひょんなことから導かれるように出会う3人(中村児太郎、松田凌、中村莟玉)。3人が実の兄弟と分かると、親のかたきを討ちに椿鬼座右衛門のもとへ…。ストーリーテラーとして小見川千明が物語をひもといていき、越中睦が鬼座右衛門の息子・恨次として、人としての本当の道を問う。生きるとは何か。自分とは何か。心の奥に潜む弱さ、強さが親子の因縁とともに三本の糸によって巡り絡まり、逃げられない運命の渦にのまれる。「三人吉三」を題材に、バロック音楽と邦楽器がコラボレーションし、彩を添える。

◆小見川千明(おみがわ・ちあき)1989年(平元)11月11日、神奈川県出身。子役として活動を始め、08年にアニメ「ソウルイーター」で声優デビュー後は多くのアニメ作で活躍。趣味は読書、映画観賞、気象通報、特技は人の背中で腹筋をすること。158センチ。血液型O。