落語家の3代目桂春蝶(49)が8日、大阪市の上方落語協会会館で「『芸能生活三十周年記念公演』落語で伝えたい思い第十作」(6月24~30日、心斎橋PARCO SPACE14)の発表会見に出席した。
春蝶は13年から創作落語「桂春蝶の落語で伝えたい思い」を作っており、今作が記念すべき10作目。70年万博会場のお膝元大阪・吹田市で育ち、万博のシンボルとして今も残る岡本太郎作の太陽の塔を題材に取り上げた創作落語を披露する。ネタは2部制になっており、第1部は「未来のために」土偶を作る縄文人の話。第2部は、万博のシンボルを拒否していたいた岡本氏が、その土偶を見かけ、太陽の塔を製作するというもの。
使用許可の99%が却下されるとも言われる岡本太郎記念館からも許可を得た。同館の平野暁臣館長と面談した際、師匠の3代目桂春団治から教わった「自分が本当に腹の底からこれを語りたいと思って作ったお話しは、すべて落語だと思います」と話した。結果、平野氏から「何も口を挟まない。あなたの自由にしてください。岡本太郎もそういう人だったから」と同館の協力まで取り付けた。
過去の「伝えたい思い」同様、1~2時間の大作になりそうだが「まだ1文字も書いてない。ジグソーパズルのピースを集めてる状態」。
太陽の塔の裏側に描かれている黒い太陽を見つめながら、「太陽ってエネルギーですから、黒い太陽って黒いエネルギー。黒い過去にきちんと向き合った上で、現在を考えてより良い未来に向かっていくというような岡本太郎の思いをこの話に閉じ込めたい」と意気込む。
芸能生活30周年と相まって「太陽の塔から、少年期からコツコツ影響を受けてきたのならステキと思った。太郎は『芸術は呪術』と書いてあって。僕がおまじないをずっと受けてきたのならうれしいし、それに対する自分なりのアンサー」と鼻息は荒い。
25年に大阪・関西万博が開催されることもあり、周りからは「万博のこと、何か考えてるの?」と聞かれることもあるというが、「僕は冷静に見てて、来年の万博のテーマって『いのち輝く未来社会のデザイン』。それって、55年前に岡本太郎が言ってること。それ、55年前に終わってるのになって」とまったく気にも留めない。
それでも、このタイミングで万博が行われることに「何かを築いて、それをやろうとしてるなら、岡本太郎さんから『お前、やるなら今やで』って言ってくださってる気がする。ご縁ですね」と笑った。
父親の2代目桂春蝶は93年、芸歴30年を前に51歳で亡くなった。「やっぱり51歳ってポイントは意識してます」。父の死をきっかけに落語家になったため、芸歴はかぶっていないが「『先代を感じる』って言われるのはうれしい」。
自身が30周年を迎えたことについて「人間としてはちゃんと生きてない」と苦笑。私生活には胸を張れないが「太宰治もそうですけど、底辺でのたうち回った人が美しいものを作り上げる。美しいものを作ったときに世間がどう反応するか、それが文化、芸術だと思ってるんです。そうやってもがいてきたものが多くの世の中の人と重なればと思うし、そうした連続面が30年でした」と振り返っていた。