<第33回日本映画批評家大賞授賞式>◇22日◇東京国際フォーラム
東出昌大(36)が「Winny」(松本優作監督)で主演男優賞を受賞した。檀上で「役者になって、映画の現場を初めて経験したのが22歳の時。それから14年たって…ずっと、演じるとか、お芝居するって何だろう? と考え続けて、今もその問いは消えないし」と、俳優業について思う心中を明かした。
東出は劇中で、2002年(平14)に起きた違法アップロード問題の要因となったファイル共有ソフト「Winny」を開発、公開したことで、著作権法違反ほう助容疑で04年に逮捕されてしまった、プログラマー金子勇さんを演じた。金子さんは7年後の11年に最高裁で無罪を勝ち取ったが、東大学情報基盤センター特任講師を務めていた13年7月に、急性心筋梗塞で亡くなった。その一連の事件。裁判の実話を映画化した。
東出は「役者の仕事って、僕の場合は、何が映画にとって必要かというと、僕にとっては地味な準備。とにかくせりふを覚えたり」と自身にとっての役者の仕事について口にした。その上で「Winny」を踏まえ「金子さんを演じるなら裁判記録を読むとか、体形を変えるとか、人に見られないところでの準備が、現場に行った時に生きる、よすが」と、具体的に役と作品への向き合いについて語った。
さらに「あとは役者を、どうやっていったら続けていけるんだろうと日々、考え続けるけど、なかなか答えはなくて」と役者を続けていくために必要なことは何なのかを自問自答し続けていると吐露。「たくさん映画、演劇を見たり、先輩方の話をメモしたり、本を読んだり、ずっとし続けても、これさえあれば良い芝居ができるという方程式がなくて。準備以外は、根拠のない自信しかなくて」と、現時点での自分の考えを明かした。
その上で「でも、根拠の自信が行きすぎてしまうと多分、過信になって、芸能人であると言われる声にあぐらをかいて、おごりが生まれると、そんな人間が市井の人間を演じるなんて、やっぱりできないので。人の道、人を演じることから遠のく」と、おごりは演技の敵だと強調。「日々、根拠のない自信を持ちながら、地味な準備を怠らず、いい映画の現場に戻ってこられたら」と語った。
東出は、1923年(大12)9月1日に発生した関東大震災後の混乱の中、発生した実際の事件を題材にした映画「福田村事件」(森達也監督)など、昨年は話題作への出演が相次いだ。司会の松尾貴史(64)から「立て続けに、社会派の名作に出ているが?」と聞かれると「僕自身は、のんびり、ほんわかしているプライベートなんですけれども」と笑った。
一方で「自分のためにお芝居する…全部、自分のために仕事するほど全然、強くない。それほど頑張れなかったんです。でも、誰かのため…家族とか、仕事関係者のために仕事をするんだと思っていたんですけど…」と、周囲のために頑張っていた時期もあったと明かした。その上で「早世した天才プログラマーの金子さんの周りに生前いたご遺族、弁護団の方々が、映画の完成を喜んで『金子さんの人生が報われた』と、初日舞台あいさつに言ってくださった」と「Winny」で演じた金子さんの関係者に喜ばれたと明かした。 そして「うわ…こんなに直接的に、人のためになる仕事なんてあるんだ…その時に、役者をやっていて良かったと、心から魂が震えました。本当に良い作品と出会えました」と、俳優の仕事のすばらしさを感じたと語り、受賞スピーチを締めた。東出の熱い言葉の数々に、場内から拍手が起きた。