2024年度の第29回「新藤兼人賞」授賞式が6日、都内の如水会館で行われた。席上で、主催の協同組合日本映画製作者協会の押田興将代表理事(55)は、大手配信プラットフォームのNetflixとタッグを組み、新藤兼人賞でノミネートの最終選考に残った若手監督から企画を何本か集め、同社が開発費を出し、配信作品を製作していくプロジェクトをはじめると明らかにした。
新藤兼人賞は、日本映画の独立プロ57社によって組織される協同組合日本映画製作者協会が、本年度公開作品の中から将来性のある新人監督と、優秀な作品の完成に貢献を果たしたプロデューサーや企画者を選出し、授与する。押田氏は「Netflixに企画を出していただいて、何本か開発費を出してNetflix作品として配信する。2時間もの、連ドラは問わない」と概要を説明。「スクリーンではなくても、配信というプラットフォームは世界に向けて発信できる。そういう形でも、次作にトライしていただきたい。僕らも全面的にバックアップする」と続けた。「来年5月くらいまでには企画開発する作品を決めて、経費をかけながら、きちんと開発していく。若い才能を世界に発信することに挑戦したい」と語った。
さらに「来年、もう1つ始めたいプロジェクトは、そういうものもスタッフがいないとできない。昨今、スタッフがいないから流れる企画もある。良いスタッフを育てたいという、プログラムを始めたい」と、スタッフ育成にも踏み出すと明かした。「来年4、5月…大人数ではできないが、文化庁の力を借りず、我々が育てたいスタッフの養成講座をやりたいと思っています」と説明。「クリエーターと、クリエーターを支えるスタッフを、両輪で育てたい」と意気込みを示した。
新藤兼人賞は、2024年度は、215作品が選考対象となった。金賞は、河合優実(23)が主演した「ナミビアの砂漠」の山中瑶子監督(27)が受賞した。同作は、5月に世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)と併設して開催されたフランス監督協会主催の独立部門・監督週間に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞した。
銀賞は、今年の日本映画界を席巻した「侍タイムスリッパー」の安田淳一監督(57)が受賞した。8月に“インディーズ映画の聖地”こと東京・池袋シネマ・ロサのみの全国1館で公開後、口コミで話題を呼び、累計で全国338館まで上映が拡大した。
受賞者には、正賞の新藤兼人監督デザインのオリジナルトロフィーと、副賞として金賞には賞金50万円とUDCast賞、銀賞には賞金25万円が贈られる。UDCast賞は、最新映画の字幕や音声ガイドを映画館で楽しめる無料アプリUDCastと、金賞受賞作のバリアフリー版制作が提供される。既に受賞作がバリアフリー化されている場合は、金賞受賞監督の次回作に提供。UDCastは、場面の説明をする音声ガイドやセリフや音の情報を入れた字幕など視覚、聴覚に障がいがある観客をサポートするアプリだ。
プロデューサー賞は、製作プロダクションと映画の配給を行う、コギトワークスの関友彦代表取締役が受賞した。プロデューサー賞には、正賞のクリスタルトロフィーと副賞の賞金50万円が贈られる。
新藤兼人賞は、日本映画製作者協会に所属する現役プロデューサーが、その年度で最も優れた新人監督を選ぶ。完成度や将来性のみならず「この監督と組んで仕事をしてみたい」「この監督に映画を作らせてみたい」というプロデューサーの観点を含む日本で唯一の新人監督賞。新人監督たちを発掘、評価し「今後の日本映画界を背負ってゆく人材を育てたい」というプロデューサー達の思いから、96年に「最優秀新人監督賞」として始まり、00年からは日本のインディペンデント映画の先駆者として知られ、12年5月に100歳で亡くなった、新藤兼人監督の名前を冠した現在の名称となり、29年目を迎えた。