<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
残念なニュースが飛び込んできた。テレビの通販番組の中で、音楽に特化した長寿番組「音楽のある風景」(30分)が3月で終了するというのだ。
同番組は02年4月に第1回が放送されて23年。現在は各テレビ局のBS放送を中心に、ここでしか購入できないオリジナリティーあふれる企画CDを紹介、販売している。
製作はユニバーサルミュージック合同会社と燈音舎(日高治彦社長)で、厳しい企画会議を経て、特にシニア世代をターゲットとした独自の企画CDを、多数製作してきた。
13年発売の「大人の歌謡曲」(CD5枚組90曲収録、税込み1万980円)は、累計10万セットを超えるヒット商品である。
このほか、昭和から平成の演歌の名曲を厳選した「夢演歌」(6枚組114曲収録)。J-POPの名曲で青春が鮮やかによみがえる「MY MEMORIES」(5枚組80曲収録)。日本の名曲の数々を別の歌手が歌ったカバーアルバムの傑作「SONGS FOREVER」(4枚組70曲)など、数多くの企画CDが製作された。
進行役やタレントが登場する他の通販番組とは違い、収録曲が映像とともに紹介される。紹介されるのは1つの企画CDだけ。例えばフォークソングの場合、60年代の映像が流れる。演歌ではネオン街が、クラシックでは海外の美しい風景が流れる。音と映像が絶妙にマッチし、まるで純粋な音楽番組や紀行番組を見ているような気分になる。一部ナレーションがあるだけで、番組名が「音楽のある風景」であるゆえんだ。
音楽関係者は「コロナ禍などで売れ行きが落ち込んだことも大きな要因ですが、音楽業界がデジタル(サブスク配信)に急速にシフトして、シニア向けなどのパッケージ(CD)の価値や優先度が大きく低下したことがあると思う」と分析している。
こうした企画CDは、CDショップなどに置けない商品として許諾を得ているため、番組が終わると購入方法がなくなる。今後はネット販売やカタログ販売などに移行し、「音楽のある風景」のいぶきは残したいようだ。
ネットやスマホで音楽を聴くのが主流になり、中高年層の中にはその手段を知らなかったり、できない人も多い。そういう世代に「ならば音楽を聴かないでいい」とはならない。
「音楽のある風景」は、そうした世代が潜在的に聴きたい音楽を形にして、テレビを見て気軽に電話をすれば手にできるというシンプルさにこだわってきた。
購入者から毎月数百通の感想が届く。「貴社の多彩な商品を見聞きすることで、80才を過ぎた者の単純な毎日の生活が存分に癒やされております」。製作者には大きな励みだ。
2月下旬から、番組内で「放送終了」の告知を入れる予定という。放送25周年の節目まで、間近だった。
「音楽のある風景」は、音楽に特化した歴史に残る名通販番組である。残された時間で、ぜひあらためて見て、聴いて、そしてお気に入りのCDを手にしてほしい。【笹森文彦】