<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
俳優の山口崇(やまぐち・たかし、本名山口岑芳=やまぐち・たかよし)さんが4月18日に肺がんのため死去した。88歳。21日に所属事務所が発表した。
山口さんといえば、1971年(昭46)から1年間、NHK総合で放送された時代劇「天下御免」(金曜午後8時)が代表作。「江戸時代、発明家の平賀源内が抜群の行動力と長崎で身につけた新知識を駆使して、権力に臆することなく次々と起こる難事件を解決する痛快時代劇」(NHKアーカイブス)である。
時代劇ではあるのだが、ゴミ問題や公害、受験戦争など放送当時の世相を絡め、風刺を効かせたニュー時代劇だった。時には江戸時代と現代が交錯するシーンも登場した。当時35歳だった山口さんの、さっそうとした演技が老若男女の視聴者を引きつけた。
脚本は早坂暁氏で、音楽は山本直純氏。タイトル画は黒鉄ヒロシ氏。ナレーションは人気絶頂の水前寺清子が担当した。
出演陣も多彩な顔ぶれで、林隆三さん、秋野太作、坂本九さん、ハナ肇さん、中野良子らが出演した。
全46話が放送され、すべての回で高視聴率を記録。以後「平賀源内イコール山口崇」と言われるほどのはまり役となった。
テレビの時代劇は、実在した役柄と俳優がイコールとなるはまり役が多い。TBS系「大岡越前」の加藤剛さん。同「水戸黄門」は東野英治郎さん。テレビ朝日系「遠山の金さん」は杉良太郎。
江戸幕府の8代将軍・徳川吉宗は、NHK「男は度胸」の浜畑賢吉さんと、テレビ朝日系「暴れん坊将軍」の松平健。坂本龍馬はTBS系「JIN-仁-」の内野聖陽と、NHK大河「龍馬伝」の福山雅治。
山口さんは「大岡越前」で、徳川吉宗を長年演じ、平賀源内とともにはまり役と言われた。
現在の時代劇では、NHK大河「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」が面白い。江戸時代のメディア王・蔦屋重三郎(横浜流星)の波瀾(はらん)万丈の人生を描く。安田顕演じる平賀源内が、前半のキーマンとして登場した。
発明家、本草学者、鉱山技術者、戯作(げさく)者、画家等々。時代を先取りした天才を、安田は情熱的に早口でまくしたてる怪演で見事に演じ、新たな平賀源内像を作り上げた。
4月20日放送の第16回で、源内は謎を残して獄中死した。視聴者からは「源内ロス」の声が相次いだ。
翌日の21日、18日に死去した山口さんの訃報が公表された。まるで、「安田源内」のクライマックスを待っての公表のようだった。平賀源内のはまり役が、山口さんから安田にバトンタッチされたかのようでもあった。【笹森文彦】