<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
松本幸四郎がこのほど、「七月大歌舞伎」(同5~26日、東京・歌舞伎座)で上演する「鬼平犯科帳 血闘」への意気込みを語った。
幸四郎は、21年に亡くなった中村吉右衛門さんを継ぎ、24年の映画、ドラマシリーズから鬼平こと長谷川平蔵を演じている。今回は、「2代目吉右衛門に捧ぐ」と銘打たれた公演で、主演、構成、演出も手がける。
「プレッシャー以上のことはない」と言いつつ「堂々と、鬼平が歌舞伎という器に乗っかるとこうなるんだというものを作りたい。歌舞伎の鬼平、鬼平歌舞伎を作るという気持ちで作りたい。支えになるのは、映像でやったことと、叔父が28年間鬼平を演じたこと。まずは初日に向かって突進していきたい」と力強く語った。
映画とドラマでの幸四郎の鬼平は、若々しさと情熱、色っぽさ、重厚感と貫禄、いろんなものが同居していた。せりふ回しや表情に、ここ吉右衛門さんっぽい! と思う部分もあって、見応え十分だった。火付盗賊改方、密偵たち、妻といったキャラクターも丁寧に描かれていた。
今回歌舞伎になる「-血闘」は、吉右衛門さんも歌舞伎版に出演している。鬼平こと長谷川平蔵の若いころのエピソードも満載。まさに鬼になったように悪党に挑む熱い戦いもある。幸四郎が「鬼平犯科帳は人間ドラマ」と言ったように、濃いドラマが見られる。
楽しみなことはまだある。幸四郎の父松本白鸚が、平蔵の父を演じ、長男染五郎が若き日の平蔵を演じる。親子孫3代の共演について幸四郎は「実際の親子だからこそ成立する場面として作っている最中です。長谷川親子、高麗屋親子、孫の心とともに乗っかるのではないか。リアルなのか芝居なのか、そういう不思議な空間になればいい」と話しており、どんな場面になるのか楽しみだ。
映画、ドラマはシリーズとして順調に新作を重ねているが、幸四郎は「1作1作が勝負だと思っている」と慢心はない。歌舞伎版のシリーズ化について問われると「シリーズ化できればいいなと思いますけど、そう思うとすべてを出し切れない。すべてを出し切って、決定版を作るつもりでやりたい」と語った。
決定版にして、シリーズの始まり。上演を重ねるごとに磨きがかかる…そんな鬼平歌舞伎が見られるのか。【小林千穂】