<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
サムネイルをご覧になったお二方のファンの皆さんは、なぜ共演もしていない俳優の写真が並べられているのか、と感じたことと思います。今回は記者の備忘録のようなコラムですのでご容赦ください。
6月、俳優秋沢健太朗(36)の取材を予定していた前週に、早乙女太一(33)のインタビューが入った。何とも偶然だなと思った。2人は“同じ役”を務めている。秋沢は現在、ミュージカル「梨泰院クラス」に主人公の敵・グンウォン役で出演中。日本版にローカライズされたドラマ「六本木クラス」(22年)で早乙女は、グンウォンに相当する長屋龍河を演じていた。
ともに鋭い視線、引き締まった体つきをしている。早乙女は普段から、見た目が大きくなりすぎないように心がけていると言っていた。理由は「大体僕は、人を殺すか不幸な役が多いんで」。
食べることは大好きらしい。「前は1日4食ぐらい食べてました。寝る間にインスタントラーメン2袋いったり。お米も大好き。でも30歳を迎えて、ご飯を1杯に収めようとか、夜6時台以降は食べないようにしようとか、そんな感じでやってます」と体形維持のために節制しているようだ。
対して秋沢はこの役と向き合うにあたり、意図的に体を大きくした。地位も信頼も失った30代半ばのグンウォンは終盤、主人公セロイと魂を込めて殴り合う。肩幅や胸板で伝わるものがある。「トレーナーさんに相談して、身幅をつけるというのをやってきました。登場した時に、ちょっとこの人違うかもと思われるように」。
ベンチプレスの記録も上がったそう。以前プロ野球を担当をしていた私はそのあたりの感覚が狂っていて、「それすごいんですか…?」とまあまあ失礼なことを聞いてしまった。後でジム通いしている知人らに教えてもらったところ、結構すごいですよとのこと。秋沢さん、すみませんでした。
秋沢グンウォンは、苦しさが内からにじみ出る。「本当は弱い自分というか。お金や振る舞い、人との区別で自分のポジションを見せていくことが大事と思ってはいるんですけど、相当むなしいってことに彼は気付いてると思うんですよね」。悪なのにどこか憎みきれない。そんな人物像になった。
ともに舞台を主戦場にしている。映像との違いは何だろう。
早乙女は「表現方法が全然違う」と言った。「いかにナチュラルなお芝居ができるかっていうのは、映像の方がいろいろチャレンジできます。映像ならではをやることで、舞台に生きることもある。違う手法を経験するほど自分の引き出しが増える」と舞台への還元を念頭に置いている。
これから映像作品を増やしたい秋沢は、その利点を「(後世に)残ること」とした。「おばあちゃんが高齢で、単純に舞台を見に来られないというのもありますし」。ドラマなら年齢や身体的事情、物理的な距離で足を運べない人にも見てもらえる。映画は何十年後でもリバイバル上映できる。「映像で見てもらって『すごい。こんな時代にこんな人いたの?』ってなったらうれしいですよね」と今後への意欲も見せた。
繰り返すが、2人に共演経験はない。4歳から舞台に立ち、10代で売れっ子になっても、自分で選んだ道ではないと反発した早乙女。大志を持って秋田から上京し、食えない時期を乗り越えて力を付けた秋沢。対照的にも見える道のりを歩んだ役者が、くしくも同役をつかみ、それぞれ印象的な“敵”として立ちはだかったのがお芝居のおもしろさだなと思う。
ちなみに、舞台も映像も器用にこなし、声優にも挑戦した早乙女がミュージカルは未経験。「歌がいやってわけではないんですけど…。毎日、喉のことを考えなきゃいけないって考えると、みんなと飲みに行けないし」と笑いつつ「でもしたことがないことは、1度はチャレンジしてみたいなというふうには思ってます」。
詳しくない分野に、それぞれが尊敬の念を持っているのも、何だかいいなと思った。
演者が変われば表現は変わる。それはそれとして、いい悪役はいい俳優というのは共通している。おもしろいかどうかは悪役次第と言っても過言ではない。この役を担った役者は今のところ、日本に2人だけ。ともに唯一無二の味を出している。
ミュージカル版はまだ大阪、愛知公演がありますので、これからご観劇の方はどうぞ楽しんできてください。【鎌田良美】