市原隼人の“男の夢”がかなった「おいしい給食」5周年で初実現したファンミと舞台にかけた思い

「おいしい給食」ファンミーティング「全校集会」のライブアクト「おいしい給食 ロスト・オブ・アゲパン」で甘利田幸男を演じる市原隼人

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

市原隼人(38)の“男の夢”が、また1つかなった。主演の連続ドラマ「おいしい給食」5周年で初のファンミーティング「全校集会」が7月21日、東京・きゅりあん大ホールで行われた。

「おいしい給食」は、19年10月期にテレビ神奈川をはじめ独立系UHF局で第1期が放送された。原作のないオリジナル企画ながら、放送開始から5年で連続ドラマ3作、映画は公開を控える「-炎の修学旅行」(綾部真弥監督、10月24日公開)まで4作を製作、公開するまでに成長した。

2回公演で2000人を動員した「全校集会」では、初の試みとして舞台を上演。市原は壇上で勢いよくスライディングし、衣装のズボンに穴を開けてしまった。さらにステージから客席に駆け降ると、1694平方メートルに1074席が並ぶ大ホールの通路を、縦横無尽に駆け回った。特に中央通路では、まるで陸上選手が何本もダッシュを繰り返すかのように往復し、走り追えて壇上に戻ると、倒れ込んで突っ伏した。演技の一端ではあっただろうが、最後のあいさつで「1、2部で全ての力を使い果たしました。余力がなくて」と口にしたのは本音だろう。

「おいしい給食」は、漫画や小説などの原作がないオリジナル企画だ。1980年代の中学校を舞台に、市原演じる頭の中に給食のことしかない給食絶対主義者の教師・甘利田幸男が、給食好きの生徒と、日々の給食をいかにおいしく食べるかに腐心し、手を加えるなどするバトルを5年にわたって描き続けてきた。

そもそも制作陣は、企画を立ち上げた当初、小さなオリジナル企画を受けるか、半信半疑で市原に台本を渡したという。それに「やりたい」と応えた市原が、綾部真弥監督(44)と相談し、リハーサルの段階で甘利田のキャラクターを自ら持ち込んだという。撮影前日まで電話で同監督と「メガネありでいこう」「食べる時は外そう」「芝居は突き抜けてやって良い」と話し合うなど、二人三脚で甘利田のキャラクターを作り上げた。

ドラマのseason1に続き、20年3月に公開された初の映画「劇場版 おいしい給食 Final Battle」は、タイトルが示すとおり綾部監督が企画を締めくくる思いで作った。ところが同年、全世界がコロナ禍に陥り、日本でも公開直後の同4月7日に第1回の緊急事態宣言が発出され、映画館はストップ。映画館が再開した際、作品を見に行った綾部監督は、200人収容のスクリーンに20人程度いた観客の姿に「あらゆる層の方が『おいしい給食』を選んでくれた。終わらせず、立ち上がらせて満席の映画館で見ようというのが夢になった」とシリーズの継続を決意した。

そして、seasonを重ねるごとに「こっけいな姿を見せても、笑われても、恥ずかしいところを見せても、人生を謳歌(おうか)することを忘れない」(市原)甘利田のキャラクターが、着実に人々の心をつかんでいった。映画は当初、100席未満の席数のスクリーンで舞台あいさつが行われたこともあったが、24年4月公開の3本目の映画「おいしい給食 Road o イカメシ」では東京・新宿ピカデリーの580席あるスクリーン1で行われた完成披露舞台あいさつのチケットが2回とも即完売した。

「全校集会」で行われた舞台は「-ロスト・オブ・アゲパン」と題し、「-炎の修学旅行」の物語の前を描いた内容だった。ファンミーティング内での寸劇といえば、軽いものを想像するかも知れないが「-ロスト・オブ・アゲパン」にかけた市原の思いは、生半可のものではない。「どうせやるなら、中途半端は嫌ですと」と、稽古も1カ月、妥協なく行った。

そして壇上で、ドラマや映画の中で見せるような、コミカルかつ高い身体能力を存分に発揮したゴムまりが弾むような動きで客席を沸かせた。「映像だと最大瞬間風速で行けますけど(舞台の)30分はつらい」と口にしつつも、言葉とは裏腹の全力の芝居、動きを見せ続けた。だからこそ「(甘利田として着る)80年代の衣装がないのに(スライディングで)パンツに穴が開いちゃった。今日、2回公演で、1回目に溶けちゃった」と衣装を1つ、ダメにしてしまった。

最後のあいさつで、市原は「おいしい給食」への熱い思いを吐露した。

「自分自身、何度もこの作品に救われているんです。(出演する)作品を比較することは、しませんが…これからも作品を作り続ける意義に、迷うこともあると思いますが『おいしい給食』は本当に愛情あるすてきな作品であり、僕の財産。皆さまを支えにして奮闘して参りたい」

次第に涙声になり「涙もろくなったのか(会場で)泣いているお子さんを見ると『おいしい給食』で元気になって欲しいと思う」と声を詰まらせた。感情が高ぶったのは、直前に、毎シーズン、聴くたびに涙するという主題歌「君の花」を、給食ボーイズが生歌唱したこととも無関係ではないだろう。

この日は、日本全国の47都道府県中46自治体に加え、海外からも熱烈なファンが駆けつけた。市原は客席に向かって「(シリーズが)こんなに続くと思っていなかった。夢を見させていただいた。ぜいたくな1日…前代未聞」と感無量の思いを口にした。そして「皆さんのためなら、何でもできる。ここに立てるのも、好いてくれる皆さまのたまもの。感謝の思い、ちゃんと伝わってるかな」と呼びかけた。ファンへ5年分の恩返しをした、市原の「おいしい給食」への道が、今年も始まった。【村上幸将】

◆「おいしい給食」season1 甘利田が1984年(昭59)に赴任した常節(とこぶし)中1年1組で、佐藤大志(19)が演じた神野ゴウと毎日の給食を、どうおいしく“うまそげ”に食べるかで、しのぎを削った。20年3月公開の初の映画「劇場版 おいしい給食 Final Battle」では、給食撤廃を進める教育委員会のストップに動いた甘利田が、給食のある中学校への移動処分を受けた。

◆「おいしい給食」season2 21年10月期に放送された、2年ぶりの続編「season2」では、甘利田が黍名子(きびなご)中に異動した2年後に、ゴウも転校したことで、3年1組を舞台に2人の給食バトルが再燃。22年5月公開の2本目の映画「劇場版 おいしい給食 卒業」では、教育委員会が乗り出したメニュー改革に不穏なものを感じた甘利田が、給食を守るために立ち上がった結果、北海道函館市の中学校に広域転勤となり、ゴウも卒業した。

◆「おいしい給食」 season3 23年10月期に放送された「season3」は、甘利田が赴任した函館市の忍川(おしかわ)中1年1組が舞台。席替えでストーブの前に座ったことを機に、給食に執念を燃やし始めたケンと、甘利田が給食をおいしく食べる、その一点に知恵を絞るバトルを展開。24年5月公開の3本目の映画「おいしい給食 Road to イカメシ」では、描かれる時代は1989年(平元)と平成の時代に突入。町長選を前に給食完食のモデル校に選定され、揺れる忍川中と、そこに敢然と立ち向かう甘利田を描いた。