「山田裕貴のオールナイトニッポン」まで巻き込んだインタビュー…記者と俳優の真剣な向き合いの形

山田裕貴(2025年7月撮影)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

インタビューでは、思ったこと、感じたことを真っすぐに取材対象者にぶつけている。最近、そうした取材が、思ってもみない広がりを見せた出来事があった。

公開中の映画「木の上の軍隊」(平一紘監督)に主演の、山田裕貴(34)のインタビューから4日後の7月15日朝、携帯電話に1通のメールが届いた。「昨日の『山田裕貴のオールナイトニッポン』で山田さんがめちゃくちゃ話してますよ! ! !」。作品の関係者からのメールだった。何を言っているのか一瞬、意味が分からず、radikoのタイムフリーで番組を聴くと、山田がフリートークで「木の上の軍隊」に関する取材を受けた話を、熱っぽく語っていた。

「ある日、ね…取材Dayがあった日にですよ。(中略)何て言ったらいいかな。デューク更家さんをギュッとして、ちっちゃくして、濃縮還元みたいな、果汁120%です、みたいな感じにした方が、目の前にピッと立っていて」

「僕があいさつしたら『あなたね、素晴らしいよ!』と、いきなりきた。(中略)自分なりの言葉で返してくれる人には、刺さったんだな、映画が良かったんだと指標になるところを…俺が一瞬、ビックリしすぎて、何も返せなくなるテンションの人が来てくれた」

インタビューの掲載日は「木の上の軍隊」の全国公開日2日後の7月27日、掲載の告知は掲載日1週間前の20日付紙面で、と内々で決まっており、完全なる“フライング”だったが、聴いていて、笑うしかなかった。“デューク更家さん120%濃縮果汁還元記者”が誰か、山田は「名前は伏せますけど」と言い、触れなかったが、どう聴いても放送3日前に行った、記者の取材について語っているようにしか聞こえなかった。

取材を振り返ると、いきなり「あなたね!」とは切り出してはいないが、山田の芝居を「素晴らしかったです」と評したのは事実。インタビューの冒頭から、近年、芝居に注目していたこと、舞台あいさつなどで表に立った際の、目の色が明確に変わったと感じていることも伝えた。そして目の色が変わったのは、21年12月27日にフジテレビ系で放送されたドラマ「志村けんとドリフの大爆笑物語」で、前年の20年3月29日に亡くなった志村けんさんを演じた時からではないか? と投げかけた。

山田は、黙ってこちらの話を聞いた後、志村さんを演じた思いを吐露した。

「志村さんが亡くなられて2年もたっていない時に、志村さんの役をやります、と発表されて…。もし、文句、言う人たちがいたら、それを背負える? やってみてくださいって、思えたんですよ。何か、自信が付いたんですかね」

どうしても山田に伝えたいことがあった。「木の上の軍隊」の平一紘監督(35)と一緒に臨んだ、7月7日に都内の日本外国特派員協会で行われた記者会見で「僕は虫が大嫌いですが…監督にお願いさせてもらい、うじ虫を食べました」などと撮影を振り返ったコメントを、ピックアップして原稿に書いたことについてだ。

「木の上の軍隊」は、太平洋戦争末期に熾烈(しれつ)な地上戦が繰り広げられた沖縄で、終戦を知らずに2年間、ガジュマルの木の上で生き抜いた日本兵2人の実話をもとにした物語。山田が地元・沖縄出身の新兵の安慶名セイジュン、ダブル主演の堤真一(61)が宮崎から沖縄・伊江島に派兵された上官の山下一雄を演じた。山下には山口静雄さん、安慶名には佐次田秀順さんと、モデルになった実在の人物がいる。

24年11月から約1カ月、沖縄と伊江島で行われた撮影で、山田と堤は撮影のために1本、移植し2本にした伊江島のガジュマルの上で芝居をした。その中に、安慶名が勢いよく動いている、うじ虫を指でつまんで食べるシーンがある。山田は「どれだけ本物に迫れるか。味わった感覚…おなかがすいたら、おいしいと感じるだろうと、身で感じるのが大事」と振り返った。

モデルとなった佐次田さんに近づこうという一心で、うじ虫を食べたと真剣に語った山田の言葉を、話の内容にインパクトがある…もっと言えば、芸能ニュースとして面白い、広く読まれると判断して記者は原稿として書いた。山田も、発言が芸能ニュースになるであろうことは予測していたにしても、真剣な言葉を面白おかしい原稿に仕立ててしまったことを申し訳なく思っていた。その思いを打ち明けると、山田はこう答えた。

「(うじ虫を)食べることがすごいんじゃなくて、佐次田さんや山口さんを思ったらニセモノを食べるのも違うと。体重何キロ落としたとか、くだらない。当たり前のようにやるんじゃないですか?」

山田は「山田裕貴のオールナイトニッポン」の番組内で、そのあたりの記者との一連のやりとりを事細かく振り返った。

「『あなたが伝えたいのは、大嫌いな虫を食べたことじゃなく、戦争と実在のモデルの2人がどうだったか、ということ。それを伝えたいけど、私は芸能ニュースを書かなきゃいけないから、大嫌いな虫を食べたというタイトルの原稿を書いた。本当に申し訳なく思っている』と言う。このご時世に、そんな風に思ってくれている記者さん、いるんだと思って」

「あの会見を全部、見てくれたら、僕の本当の思いは分かりますよ。世の中に、全部が伝わるはずはありません。キャッチーになるフレーズを残すことは、もちろん、皆さんもお仕事だと思うので分かります、と言ったら『分かってくれて、ありがとう…でも、私は心が苦しかったんだ』と言う…もう、すごいんですよ。それが伝わっているだけで、ありがたいなと、俺は思ったんですよ!」

山田に対して、申し訳ないという思いを抱いた、きっかけが6月23日に都内で行われた完成披露上映会にあった。山田は、自身と初共演した印象を聞かれた堤が「(撮影中、山田は)ずっと減量のために干し芋ばっかり食っていた。たまに明日、撮休とかいう時だけ、ご飯を食べたり」と語ったことに対して、ひと言もコメントしなかった。大先輩の堤が、分かりやすい例として山田の減量の話を挙げたのは良いとしても、自分から口にしようとは全く思っていないのだと感じた。「山田裕貴のオールナイトニッポン」で、山田の発言を聴き、見立てが間違っていなかったことが分かった。

「『木の上の軍隊』の話で、体重を実は何キロ、落としました、とかって言うと『山田裕貴、作品のために何キロ減量』っていうのが(原稿や見出しに)使われちゃうじゃないですか? 俺、今回(減量が)何キロか、ひと言も、誰にも言っていないんですよ。映画のことを書いてほしいから…本当だったらタイトル(見出しに)に。でも(記者は、うじ虫について)仕事として書いてしまったと正直に言ってくれているんですよ」

インタビューの掲載2日前の7月25日に都内で行われた「木の上の軍隊」公開記念舞台あいさつも取材した。壇上で、山下のモデル・山口さんの三女平春子さんと、安慶名のモデル・佐次田さんの次男満さんから届いたサプライズの手紙が披露されると、山田は涙をこらえきれなかった。「明るく前を向く映画だって言っていたのに。泣きたくなかったんですけど、これはズルくないですか? 絶対、これがネットニュースに流れるんです」と涙声で口にするやいなや、取材陣が並ぶ最前列の客席に向かって前のめりになり「悲しい映画だと書かないでください!」と訴えた。記者は「山田裕貴『木の上の軍隊』演じた日本兵次男の手紙に涙『悲しい映画と書かないで』異例のお願い」との見出しを付けて原稿を出し、インターネット上に配信された。

山田は「山田裕貴のオールナイトニッポン」の番組内で、記者に関するトークに対するリスナーからの投稿にも答えた。その上で「デュークさん、俺のまねをしてくれそうですよね…多分。このラジオ、来てほしいな」と言った。「俺のこと、メチャクチャ良く、発信してくれると思うんですよね。スペシャルウィーク(2カ月に1回の聴取率調査週間)のゲストで、公開インタビューみたいな。メッチャ面白いわ、それ」とも口にした。

記者は、これまで芝居を見て、取材してきた中で自分が思い、感じたことを、山田に真っすぐに当て、返ってきた発言をそのまま書いただけで、山田のことを殊更、良く書いた覚えは全くない。それでも、山田が番組で語った言葉は、うれしかった。今後も、山田のことは追いかけていきたいし、取材とか、そんなものすら取っ払って、改めて思う存分、語り合ってみたい。今回、約40分に及んだインタビューの中では語り尽くせなかった、芝居や芸能界のこと…さらには、人として何を思い、考え、生きているのか…を。【村上幸将】