アクション監督大内貴仁さんの話で思い出す 香港映画黄金期の熱気

大内貴仁氏

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

映画の取材を始めた80年代前半、香港映画界は元気が良かった。ジャッキー・チェンがヒット作を連発し、ホイ兄弟の「Mr.Boo!」シリーズや「霊幻道士」のキョンシー・ブームもあった。

アクション監督の大内貴仁さん(49)に話を聞く機会があって、あの頃の熱気を思い出した。

大内さんの最新作は、ドニー・イェン(62)主演の「プロセキューター」(26日公開)だ。「ジョン・ウィック:コンセクエンス」で演じた盲目の殺し屋が記憶に新しいドニーは、香港を代表するアクションスターだ。

「(製作、監督を兼ねる)ドニーさんのアイデアで、撮影現場でどんどん変更が入る。日本だったら『絶対無理』となりますが、そのアイデアでやった方が良くなるという共通認識がスタッフの間にあるから、なんとかしよう、となる。なんとかしてしまう。ジャッキー・チェン以来の伝統、臨機応変の対応に改めてリスペクトでしたね」と大内さんは振り返った。

映画「孔雀王」(88年)で香港の撮影現場を経験した三上博史に「形になった台本はなく、撮影前日、場合によっては当日に2、3枚のペラ紙を渡されるんです」と聞いたことがある。競合作品があふれ返った当時は、アイデアを盗まれないため、とも言われたそうだが、俳優もスタッフも臨機応変の才能が求められるのが香港映画界だ。

大内さんは岡田准一が主演した「SP」や佐藤健主演の近作「はたらく細胞」などでスタイリッシュなアクションを演出してきた人だ。アクションコーディネーターを務めた「るろうに剣心」の「壁走り」も記憶に焼きついている。

大内さんのアクション人生は香港でスタートしている。

「子どもの頃からジャッキー・チェンのアクションが大好きだったんです。大学を出たときにはアクションクラブへの入会とか、自分なりに準備していたんですけど、まずはチャレンジと、バイトでお金をため、身ひとつで香港に渡ったんですよ」

ツテもない上に90年代も終わりに差しかかった香港映画界には往年の元気はなかった。

「タウンページのような電話帳を元に手当たりしだいに電話をかけたり…。で、3カ月目に奇跡のようにエキストラの仕事が入ったんです。そこに出ていたのが憧れの『酔拳2』でお父さん役をやっていたティ・ロンだったんですよ。自分なりにメドがついた気がしました」

そんな奇跡のような出会いがいくつか重なり、大内さんのアクションの礎が出来上がった。帰国後はアクション監督の谷垣健治さんの元でキャリアを積み、10年の「SP」で初めてアクション監督を務めることになった。

新作の「プロセキューター」はドニーふんする戦う検事を主人公にした異色アクション。香港の裏通りや地下鉄車内を舞台に格闘シーンが繰り広げられる。大内さん率いる日本の9人のスタントチームが加わったアクションは香港ならではのものに大内さんのアイデアが加わり、味わい深い。【相原斎】