香川照之主演「災 劇場版」サンセバスチャン映画祭で公式上映、1800席満席に中村アン感激

サンセバスチャン映画祭コンペティション部門に出品された「災 劇場版」公式上映に参加した、左から関友太郎監督、中村アン、平瀬謙太朗監督(C)WOWOW

スペインで開催中の第73回サンセバスチャン映画祭のコンペティション部門に出品された、香川照之(59)の主演映画「災 劇場版」(関友太郎、平瀬謙太朗監督、26年公開)公式上映が23日、行われた。

日本での公開に先駆けてのワールドプレミアには、国際映画祭への参加は初となる中村アン(38)と関友太郎(38)平瀬謙太朗(39)両監督が登壇。香川は参加しなかったが、メイン会場のクルサール1は1800席以上の観客席が満席となった。観客は誰1人、席を立つことなく上映後は拍手が鳴り止まず、階段の上から下まで埋め尽くされた観客に温かく迎えられ、中村は「皆さん優しかったです。こんな景色を見る日が来るとは思わなかったし、夢がある仕事だなと思いました」と感激した。

「災 劇場版」は、香川が主演し、WOWOWで今年、放送・配信された「連続ドラマW 災」全6話をリビルド(再構築)した。香川は、人々の前に現れると次々に“災い”が起こる。“ある“男”を演じるにあたり姿、口調、性格や所作まで変えた。映画は各話、完結する全6話の物語を、時系列や展開を大胆に再構築することで、世界観やテーマ性を引き継ぎながらも全く新しい1本の映画に仕上げた。

上映後の記者会見で、関監督は「新しい怖さを作ろうと思いました。直接的で激しい表現はなくても怖い、日常だけれども怖い、というような味わったことのない表現を目指しました」と語った。「ドラマの脚本を書いている段階から映画については考えていました。ドラマでは主人公が1話ずつ変わるオムニバス形式ですが、映画ではこれを群像劇のように編集し、新しい映画版の“災”を誕生させることを試みました」とドラマの段階から既に映画化を想定し脚本づくりをしていたことを明かした。平瀬監督は「僕たちの人生に突然現れる“災い”を映画として描こうと思いました。なおかつそれを俳優が演じるということに挑戦しました」と続いた。

不可解な事象の真相を追う刑事・堂本を演じた中村には役作りについて質問が飛んだ。「監督とは同世代ということもあり、しっかりとコミュニケーションを取りながら、ものづくりに対して今までに味わったことのない気持ちで、とても楽しく演じさせていただきました」と語った。

香川にとっ「災 劇場版」は、監督集団「5月」の関、平瀬両監督らとともに作り上げた、22年11月18日公開の主演映画「宮松と山下」が新人監督の登竜門となるニューディレクターズ部門出品されたのに続き、2作連続でのサンセバスチャン映画祭出品となった。出品決定時には「シーンの順番はめちゃ苦茶、私が演じる多岐にわたる人物像がさらにそれを混沌(こんとん)とさせ、一体現地の人たちはどこまでこれを理解するというのだろう」と、独特の言い回しで出品決定への思いを語っていた。

会見の最後に日本映画の国際的な展開について質問が出た。平瀬監督は「僕たちは国際映画祭で挑戦し続けたいです。このような機会は新しい表現を世界に投げかける場所であり、どのようなリアクションが返っていくかということを楽しみにしながら作っています。日本映画全体においては僕たちよりも若い世代もたくさん増えてきていて勢いがあると思います。負けないようにチャレンジしたい」と意欲を見せた。

◆「災 劇場版」さまざまな悩みや葛藤、希望を抱えながら現代を生きる罪なき6人。ところが気が付くと、どの物語にも“ひとりの男”が紛れ込んでいる。男は性格を変え、顔つきを変え、口調や笑い方や歩き方まで変え、全く別々の人間として人々の前に現れる。そして、次々に“災い”が起こる。“男”は一体何者なのか?彼らに訪れる“災い”とはなんなのか?

◆監督集団「5月」 監督・脚本・編集を務めた関、平瀬の両監督は、「だんご3兄弟」の作詞、プロデュースなどで知られる、東京芸大大学院映像研究科の佐藤雅彦名誉教授(71)の教え子。佐藤研究室の5期生4人と「Cプロジェクト」と名付け、5人でカンヌ映画祭を目指して3年が経過した14年に短編映画「八芳園」が、世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)短編コンペティション部門にノミネート。18年「どちらを」も、同部門にノミネートされた。その後、同名誉教授を含め「3監督でやろう」と3人で作った「5月」で「宮松と山下」を製作した。「災」も原案から手がけ、NHKのドラマ演出などで活躍した関監督と、二宮和也(42)主演映画「8番出口」(川村元気監督、8月29日公開)でも共同脚本を務める平瀬監督が監督・脚本・編集を務めた。