イッセー尾形(73)が、一人芝居「イッセー尾形の右往沙翁劇場」に出演する。神戸で11月14~16日に番外編「銀河鉄道に乗ってin神戸」(神戸朝日ホール)、東京で12月5~7日に番外編「銀河鉄道に乗って・すぺしゃるin有楽町」(有楽町朝日ホール)。1人でいろいろなキャラクターの人物を演じて、見る者に訴える独特の芸風で“一人芝居の第一人者”と言われる。尾形に聞いた。【小谷野俊哉】
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1981年(昭56)に日本テレビ系「お笑いスター誕生!!」で8週勝ち抜きの金賞を受賞。大きな笑いを浴びて、芸能界の中央に躍り出ていった他の受賞者たちとは芸風が違った。
「そうですね。だから早々と独自路線といいますか、自分の舞台の方に行ったと思います。だけど、追いかけてくる人もいなかった。弟子になりたいっていうのも1人いたんですけど、『お世話します』って言ったって、お世話するようなセンスというかね、教えることっていうのはない」
19歳の時に演劇の世界に身を投じた。
「若い頃はね、やっぱり変身願望っていうのがあったんですね。役者を含めて、自分の人生で確固たるものになりたいということは、誰しも思うんだ。みんな何かになりたいんだ、というのが1つの原動力」
最初に入った演劇学校で出会いがあった。
「ちょっと変わっているところで、自分の好きなものを作りなさい、条件はあなたが出なさい、あなたが演出しなさい、と。そういうフリーシーンというのをやらせられた。今、自分がやっていることと同じなんです。そういう出会いだったもので、それが芝居だと僕は思ってますね。根のところでは、自分を動かすものは自分が作らなきゃいけないと」
自身の一人芝居とは別に、大勢の俳優が出演する作品にキャスティングされることもある。
「すごい弊害がありますね。一人芝居をやってると、せりふを言ったつもりになってるんですね。『言いなさい』ってうながされて言ってますけど、言ったつもりになっちゃてることが多いんですね。ちゃんと相手に言ったのか、これを考え始めると難しい。だから賭けみたいなもん、爆死みたいなもんですよ。言ったつもりか、本当に言ったのか。どっちか、いまだに分からないことがあります」
自分ではせりふを言ったつもりになっていても、実際には無言のまま。
「こっちはせりふを言ったつもりで、相手のせりふを待っているんですよね。しかも、相手のせりふじゃなくて、自分で言ったつもりのセリフを待っているんです。そういう時間差がありまして。生身と相手するというのは、こんなに違うのかと実感しました」
共演者がいる芝居と一人芝居。
「1人の方がいい、とは言えないね。ただ、出演者が3人いるだけで、舞台上にすごく多いんですよ。その舞台が終わって、自分の一人芝居に戻ると誰もいない、寂しいんですよ。運命って言えば、運命なんですけど、これをずっと抱えていくんだなと思いました」
一人芝居は、1人の出演者が目に見えない相手に向かって話しかけ、それに応えていくのが一般的だ。
「僕はそういうタイプです。相手はいないけど、人に伝えたい、言い返した言葉は頭に入っているというやりとりを、観客に見てもらうという構成なんです。だけどこれは、一致する時と一致しない時があるんですよ。自分の中で何か言って、相手の返事がある。だけど、その次のセリフが見えちゃうんですよ。頭がそっち行っちゃってるというか、今と少し未来がが入り交じっちゃう時があります。これ厄介なもんでね。未来なんて分からないでしょ。それが一人芝居やってると見えちゃうんですよ。それを見ないふりをするのが難しいですね」(続く)
◆イッセー尾形(おがた)1952年(昭27)2月22日、福岡市生まれ。都立多摩高卒業後、71年に演劇活動を開始。演劇養成所アクターズスタジオで演出家森田雄三と知り合い、自由劇場、劇団うでくらべ。81年日本テレビ系「お笑いスター誕生!!」で8週勝ち抜いて金賞。81~89年(平元)フジテレビ系「意地悪ばあさん」。85年映画「それから」、90年「都市生活カタログ」でゴールデンアロー賞演劇芸術賞。09年NHK連続テレビ小説「つばさ」、18年「まんぷく」。19年NHK大河「いだてん」などに出演。171センチ。血液型A。