佐藤隆太主演舞台「明日を落としても」の再演を望む 30年の時を隔てて阪神・淡路大震災をテーマ

柔らかな表情を見せる佐藤隆太(撮影・浅見桂子)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

俳優佐藤隆太(45)主演の舞台「明日を落としても」を先月25日に東京・EXシアター六本木で見た。阪神・淡路大震災をテーマに、先月11~16日の神戸公演に続いての上演だ。実年齢45歳の佐藤が、震災時1995年の25歳と現在2025年の55歳を演じた。

出演者は他に牧島輝(30)川島海荷(31)酒向芳(66)尾上寛之(40)春海四方(66)田畑智子(44)富田靖子(56)の合計8人。この8人が、30年の時空を超えて演じる。震災で死んでしまった者の心残り、残された者の後悔。その思いが幾重にも積み重なり、舞台となる老舗旅館の同じシチュエーションで、95年を演じていたと思うと照明が落ち、次の瞬間には25年を演じる。

見始めた時は難解な舞台だなと感じた。佐藤が25歳と55歳を演じるのは分かっていたので、舞台の道具立てがシーンに応じて大きく変わると思っていたからだ。それが30年前を演じていたかと思うと、暗転して現在に引き戻される。

初めは、舞台上の富田靖子を見て「1983年の『アイコ十六歳』で14歳の時にデビューしたんだよな」などと思いながら見ていたが、気がつくと舞台に引き込まれていた。何か大きなできごとがあるわけでもなく、震災の激しいシーンが描かれるわけでもない。30年の時を隔てた、登場人物の心の襞(ひだ)の中の思いを描き出している。

エンディングも静かに終わった。観客は大歓声を送ったりチャントをするわけでもない。それでも、この舞台に魅了されていた。

舞台を見た1カ月半前に、佐藤をフジテレビ系主演連ドラ「まっすぐな男」以来15年ぶりにインタビューした。「池袋ウエストゲートパーク」、「木更津キャッツアイ」そして「ROOKIES」で売り出した若い頃と外見は、さほど違っていない。だが、3児の父親になり、人間的な成熟を感じさせてくれた。日大芸術学部時代に宮本亞門演出の舞台「BOYS TIME」で俳優デビューした佐藤ならではの、舞台演劇というものにかける思いを聞かせてもらった。その思いが舞台に現れていた。

上演後はロビーに出て、すぐにパンフレットを買った。阪神大震災だけでなく、災害大国の日本は思わぬ形で大切な人を失った人も多い。再演を切望する。