トランプ政権が影を落とすハリウッドの空気 夫婦監督が漏らした「鬱々した気分」を思い出す

ヴァレリー・ファリス(左)ジョナサン・デイトン両監督

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

夫婦でメガホンを取るジョナサン・デイトン=ヴァレリー・ファリス監督は、06年にアカデミー賞2冠となった「リトル・ミス・サンシャイン」で知られる。

大家族のマイクロバス旅から、悲喜こもごもを描いたこの作品でイメージされる通り、温厚でちょっとナイーヴな人たちだ。7年前に当時の新作「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」で来日し、インタビューした時、そんな印象を持った。

2人が明かした「当時の心境」を良く覚えている。

ファリス「日本は2度目ですが、映画やその時代背景についてのストレートな質問が多くて正直ホッとしています。米国では話がどうしても政治的なことになって、ギスギスした空気になってしまうんです。今の米国には不必要な緊張感があって、こんなふうにくつろいでお話しすることができませんから」

デイトン「大統領自身が怒りを込めた意地悪なツイート(当時はツイッターを使っていた)を毎日のようにやって、それが国全体をギスギスさせているのです。朝起きてニュースを見るたびに憂鬱(ゆううつ)な気分になります」

話を聞いたのは第1次トランプ政権の2年目に当たる年だった。「バトルー」は、日本では「キング夫人」の通称で知られたビリー・ジーン・キングを題材にLGBTQに寄り添った作品であり、2人がハリウッドの典型的なリベラル派ということもあるが、それでも過去の共和党政権では、こんな鬱々(うつうつ)とした気分になることはなかったとも。

そんなことを思い出したのは先日、在ロサンゼルス27年になる日刊スポーツの千歳香奈子通信員から2期目のトランプ政権下の現地の様子を聞いたからだ。

「(民主党バイデン政権の)4年間、ずっと復讐(ふくしゅう)の機会を待っていたという感じです。1期目と違って周りはイエスマンばかりでまさに王様です」

詳しくは11月15日付の「ニュースの教科書」に書いたが、ロサンゼルス市内では、ICE(移民関税執行局)が(外国人らしい)見た目だけでいきなり拘束、連行を繰り返しているそうだ。同市の人口の半分以上を占めるメキシコ系の人々は恐怖と不安から外出を控えるようになっており、工場や農場の作業員不足が深刻な状況というから、文字通りの異常事態だ。

メディアの方でも、トランプ氏が指名し、放送免許の認可を行う立場にあるFCC(米連邦通信委員会)のブレンダン・カー委員長の圧力で、放送局の姿勢がグラグラしている。反トランプの「ノー・キング」デモにハリウッドの大物俳優たちが参加したこともあって、ニュース番組やトーク番組の司会者はまだまだ自由に発言しているが、FCCの圧力を受けた放送局やその親会社は「大人の事情」でトランプ政権に忖度(そんたく)。政権側に訴えられると、早々に多額な和解金を払って、屈服している。1期目の「空気感」から、ことは「実害」に及んでいる。

第1次政権で「鬱々(うつうつ)した気分」を抱いていたデイトン=ファリス監督は今、何を思っているのだろうか。【相原斎】