新藤兼人賞金賞は黒崎煌代初主演「見はらし世代」の団塚唯我監督「国内の賞は初めて」笑み

第30回新藤兼人賞授賞式に登壇した、左からプロデューサー賞の松井俊之氏、金賞の団塚唯我監督、銀賞の板橋知也監督(撮影・村上幸将)

2025年度の第30回新藤兼人賞授賞式が5日、都内の如水会館で行われた。同賞は、日本映画の独立プロ58社によって組織される協同組合日本映画製作者協会が、本年度公開作品の中から将来性のある新人監督と、優秀な作品の完成に貢献を果たしたプロデューサーや企画者を選出、授与する。本年度は選考対象の215作品の中から「見はらし世代」の団塚唯我監督(27)が金賞に選ばれた。同作は今年5月にフランスで開催されたカンヌ映画祭に併設して開催された監督週間に出品された。同監督は会場を見渡し「(参加者が)たくさんいますね。国内の賞は初めて」と喜んだ。

団塚監督は、初主演の黒崎煌代(23)が演じた主人公の蓮が、遠藤憲一(64)が演じた疎遠だった父初をはじめ、家族の距離を測り直そうとする物語だと紹介。脚本は、映画を製作したシグロ代表取締役の山上徹二郎プロデューサーと、作品をプロデュースした山上賢治プロデューサーの親子の関係性を投影したものになったと振り返った。

そして「どの製作会社とやるかで映画の形は代わると感じながら作った。誰と一緒に作るかによって、どういう映画になるか変わると、強く、強く実感した映画。どういう方と作るか、分からないですし…分からないことは多いですけど、この人達とやったから、こういう映画になったと感じながら作り続けていきたい」と今後の抱負を語った。

銀賞を受賞した「ひみつきちのつくりかた」の板橋知也監督は「コロナ前から温めていた企画。50代の4人の中年男性が主役で、友達が亡くなり夢の秘密基地を作ろうぜという話。プロット(あらすじ)を見せたら、どこがターゲットだ? と言われた」などと、製作の道のりが険しかったと振り返った。

「暗い気持ちが続く中、コロナを忘れるような楽しい作品を作りたいと企画提案した。どこがターゲットか分からないけど、面白いものを作ろうよと。作ってから上映まで時間がかかったんですけど『6、7回、見ました』などと、いろいろな方に支持いただいた。作って良かったと思った」とスピーチした。

プロデューサー賞は「この夏の星を見る」の松井俊之氏が受賞した。7月4日に公開し、現在も上映が続いているが「出資したお金をリクープ(回収)できていない。責任を果たせていない」と明かした。一方で、この日、参加できなかった山元環監督が次回作の撮影中だと明かし「彼の前進を期待して撮った。(欠席は)ご容赦頂きたい。私の賞より金賞、銀賞を取らせたかった。ただ、このラインアップの中に残っただけで、やってきたかいがあった」とも語った。

◆新藤兼人賞 協同組合日本映画製作者協会に所属する現役プロデューサーが完成度や将来性のみならず「この監督と組んで仕事をしてみたい」「この監督に映画を作らせてみたい」というプロデューサーの観点を含む日本で唯一の新人監督賞。96年に「最優秀新人監督賞」として始まり、00年からは日本のインディペンデント映画の先駆者として知られ、12年5月に100歳で亡くなった、新藤兼人監督の名前を冠した現在の名称となった。受賞者には、正賞の新藤兼人監督デザインのオリジナルトロフィーと、副賞として金賞には賞金50万円とUDCast賞、銀賞には賞金25万円が贈られる。UDCast賞は、最新映画の字幕や音声ガイドを映画館で楽しめる無料アプリUDCastと、金賞受賞作のバリアフリー版制作が提供される。既に受賞作がバリアフリー化されている場合は、金賞受賞監督の次回作に提供。UDCastは、場面の説明をする音声ガイドやセリフや音の情報を入れた字幕など視覚、聴覚に障がいがある観客をサポートするアプリだ。