“しゃべり屋”古舘伊知郎(71)が、今月7日の東京・EXシアター六本木から「古舘伊知郎トーキングブルース 2025」をスタートさせた。来年1月からは福岡、名古屋、大阪、横浜と“しゃべりの巡礼”に出る。テーマは「2025(ニセンニジュウゴ)」。今年を2時間、ノンストップでしゃべりまくる。古舘に聞いてみた。【小谷野俊哉】
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トーキング・ブルースには一貫した思いがある。
「僕の中でトークするブルースの定義とか、目指すところとか、理想像っていうのは、言葉に表すんだったら1回目のタイトルがたまさにそれだったんですけども。1988年(昭63)から、ずっと一貫してるのは『言葉を持った時に人間に悲しみが生まれた』っていうテーマで、それはもうずっとある。これが、やっぱり僕のテーマ」
テレビ朝日の局アナ時代に海外のロケ取材に行った。
「アマゾンの奥地の未開地に、あんまり文明になじんでない部族の取材をしたし、フィリピン奥地の首刈り族の取材もやったことがあるんですけど。『水曜スペシャル』という、やらせの本体みたいな番組があったんで、すごい取材をやらされるわけですよ。現場責任者に脅されながら、フィリピン奥地で『首刈り族古舘伊知郎の超過激実況シリーズ フィリピン奥地首刈り族対抗ジャングルマラソン』の実況をやってるんですよ。だって腰みの付けて上半身が裸の首刈り族が、前を走ってた対抗部族の襟首をつかんで川に落としてました。川に転落させたんですよ。それは放送でカットされてもいいんです。すごいことをやらされてきているので、いい経験をしてるんですけどね」
アマゾンの奥地にロケ取材に行った時に、その後に一貫するテーマに出会った。
「ブラジルの部族の時には、この人たちにとっての幸福論とか、幸せとかは何なのかなと思ったんですよね。移動採取でジャングルを動いてるんですけれども、60人ぐらいのユニットで。そこのトップの聞いたわけですよ。あなた方にとって、僕らは文明の中で格好つけて生きているのかもしれないけど、どういう時に幸せを感じるのかと。聞いたら、現地の言葉からポルトガル語に訳して、英語に訳して、日本語に訳すみたいな。時間がかかるんだけど、短くポツリポツリと言ってるから、早く聞きたいなあと思ったら、ようやく日本語で教えてくれたのが『質問には答えられない』と言っている。なぜかというと『私たちには幸せ、幸福の反対側にある不幸という概念と言葉を持ち合わせていないので、その質問に答えることができない』と。うわーっと思いましたね」
「幸せ」が生まれたことで、「不幸」が生まれた。
「やっぱり幸せという言葉を置くと、韻踏むと必ず『不幸』という反意語が出てくるので。これはペットボトルである、決して灰皿ではないとか、リコーダーではないとかね。そういう反意語が括弧の中に内包されるから、ペットボトルとして言葉がラベリングされるわけじゃないですか。だから幸せっていうのを、概念を持って言葉化しちゃった瞬間に、いい面もいっぱいあるけど、副作用も伴っていて、不幸っていう対極の相対的な反対側のものの言葉を生む。そして不幸ってのは結構継続するけども、幸せってのは瞬間刹那(せつな)かもしれないし、たまゆらかもしれないし。だからそういうことですね。人間は言葉を持ったことで、悲しみが生まれたってことだから」
言葉を持ち、不幸を知って人類は歴史を築いてきた。
「いいこともいっぱいあって、文化文明を築いて今日ここまで来た。そして、自分たちより頭のいいAIっていうのをね、生んだわけですけども。反面で非常に悲しいというか、言葉が駆使されることが、言葉があることによって未来予測できちゃうってこともあるじゃないですか。来週の木曜日ちょっと午後1時は無理なんだとか、長期予報を見て旅行行くのやめようかとか、先もの相場の動きや経済もそれで動き、あらゆることがワンクール先、ツークール先の予想で人間は生きちゃうんですよ。でも他の動物は、ほとんど今しか見てないはずなんですよ。もちろん先を見て、食物を貯蔵する動物もいますけど」
言葉を持ったことで、人類は未来を予測して生きるようになった。
「基本的に今、人間が忘れかけているのは、今を生きることを忘れている。これも悲しみの1つだと思うので、そんなことが渦巻いちゃっているんですよね。それを面白くやらないとお客さんにエンタメとして聞いてもらえないので、今言っているような大枠を、ちょっとこう面白おかしくするというところに、非常に苦労をしております。毎年そうなんですけどね。そのままストレートに打っても、お客さん重くなるだけなんです。軽みに持っていかなきゃいけないというところが、なかなか難しいんですよね」
(続く)
▼「古舘伊知郎トーキングブルース『2025』」
26年1月18日 福岡・Zepp福岡
26年2月12日 愛知・Zepp名古屋
26年3月7日 大阪・Zeppなんば
26年3月20日 神奈川・Zepp横浜
◆古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年(昭29)12月7日、東京都生まれ。立大卒業後の77にテレビ朝日入社。同8月からプロレス中継を担当。84年6月退社、フリーとなり「古舘プロジェクト」設立。85~90年(平2)フジテレビ系「夜のヒットスタジオDELUXE、SUPER」司会。89~94年フジテレビ系「F1グランプリ実況中継」。94~96年NHK「紅白歌合戦」司会。94~05年日本テレビ系「おしゃれカンケイ」司会。04~16年「報道ステーション」キャスター。現在、TBS系「ゴゴスマ」水曜日コメンテーターなど。血液型AB。