【こんな人】M-1優勝たくろうは「空気を読まない男」赤木裕と「当意即妙」きむらバンドの2人

「M-1グランプリ2025」で優勝した、たくろう(撮影・松尾幸之介)

<M-1グランプリ2025>◇決勝◇21日◇テレビ朝日

結成15年以内で争う漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2025」決勝が21日、都内で行われ、結成10年目で初進出のたくろうが第21代王者に輝いた。ドンデコルテ、エバースとの最終決戦を制した。きむらバンド(35)、赤木裕(34)の2人で、過去最多1万1521組の頂点で賞金1000万円などを手にした。

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おどおどしたような、不安げな表情から飛び出すワードセンスで笑いを引き出す赤木裕。M-1グランプリ決勝では何度も会場の爆笑を誘った。ただ「挙動不審を演じているつもりはないんです」と日刊スポーツのインタビュー(2024年7月)で明かしたことがある。

ほぼ素の自分をさらけ出し、それが「空気を読まない男」と、周囲からは認識されている。かつて仕事に遅刻した後、先輩芸人から「赤木、気ぃつけろよ」と注意されたことがあった。横にいたきむらバンドは緊張したが、当の赤木は涼しい顔。遅刻したことなどすっかり忘れ「気をつけて帰れよ」という意味で聞いていたという。それでいて「赤木なら仕方ない」と周囲を納得させるのも、不思議なキャラクター。

中学、高校と野球部だった赤木。イチローにあこがれていた。高校の途中で負傷したため、しばらく練習を休んだ。けがが癒えて練習に戻ろうとすると、監督から「もう選手はいい。マネジャーをやってくれ」と通告された。体格的に貧弱で、野球センスも明らかに欠如していたのだが、知らぬは本人だけだった。

漫才師には珍しい上着(ジャケット)なしが舞台衣装。柄物のシャツに、太い眉、落ち着きのない表情は、いかにもおたく風だが、それが誰にもまねできない武器となった。「1週間、マクドナルドばかりでも飽きない」という食生活も、ユニークな赤木らしい。

志半ばで野球を断念した赤木に対して、きむらはジャニーズ入りを早々にあきらめた。小さな頃から吉本入りか、ジャニーズ入りを夢見ていたが、小3で急に前歯がにょきっと生えた。当時は矯正するという考えもなく、アイドルになる夢は消え、将来の進路は吉本にしぼられた。

NSC卒業後、「おもろい奴がいる」という友人の紹介で、1期後輩の赤木と出会い、コンビを結成した。きむらのあこがれ「木村拓哉」と、赤木が大好きな「イチロー選手」の名前を足して「たくろう」結成。

きむらの強みは、当意即妙。頭がいい。インタビューでは、記者の喜ぶようなコメントを間髪を入れず、返してくれた。この頭脳が、たくろうのネタを生み、怪人・赤木を自在にコントロールする。

きむら、赤木はともに挫折を味わい、お笑いの道にやってきた。M-1グランプリ優勝で、一躍「時の人」となったが、大阪・よしもと漫才劇場で培った自力はまだまだこんなものじゃない。たくろう旋風はこれから、さらに吹き荒れる。【三宅敏】

【M-1】たくろうが第21代王者、1万1521組の頂点に輝く/詳細