【映画大賞】助演男優賞は田中泯「この人にしか言えない…心をわしづかみに」/選考会議論公開

助演男優賞を受賞した田中泯は花束を抱きかかえるようにして笑顔を見せる(2025年12月撮影)

<第38回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)>

助演男優賞は助演女優賞同様に、「国宝」(李相日監督)の出演俳優3人がノミネートに名を連ねた。その中から、田中泯(80)が初受賞した。11月22日に東京・築地の日刊スポーツ本社で開催した、選考会での議論を公開する。(選考委員は敬称略)

<助演男優賞ノミネート>

田中泯(80=「国宝」など)

永瀬正敏(59=「国宝」など)

横浜流星(29=「国宝」)

窪田正孝(37=「宝島」)

佐藤二朗(56=「爆弾」など)

 

福島瑞穂(参院議員) 佐藤二朗さんを推します。「爆弾」は最初、彼が主演だって思ったんですね。イケメンばっかりが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する世界ではなくて、顔芸が素晴らしい迫力。あの緊迫感は、佐藤さんと山田裕貴さんが作っていると思う。

寺脇研(映画評論家) 永瀬正敏さんは「国宝」には、ちょっとしか出ていないけど「国宝」という映画は昨今、説明、描写過剰な作品が多い中、省略しているから、いいんですよ。永瀬さんは「おーい、応為」では、葛飾北斎を演じている。「息子」で助演男優賞を受賞した91年の第4回の時は、まだ若かった。今は立派な、いいおじいさんになった。私がプロデュースした小さい映画(13年「戦争と一人の女」)で起用したが、本当にストイックだった。人の良さが演じた北斎からも出ているし、永瀬さんが演じれば、ヤクザの子供でも本人に問題がなければ、国宝には、なれると思える。あそこ(冒頭で描いたヤクザの世界)があって、歌舞伎の世界があって、やっている。助演者が、ちょこちょこと(良い芝居)をやっているのが、いいところ。

福島 永瀬さんは映画を愛していて、日本映画学校とかギャラとか関係なく協力している。若い人たちが出て欲しいと言うと、作品にも出てくれると聞きます。俺がベテラン、とかいうことじゃなく、育てようという思いがある。「国宝」の冒頭も鮮烈でした。

寺脇 ミニシアターは厳しい。それを(永瀬は)支えている。映画の世界の中で40年、生きてきた人という意味でも、感慨深いものはある。

神田紅(講談師) 横浜流星さんも、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に主演しながらだから、本当に大変だったと思う。主演の吉沢亮さんと同じくらい努力して、2人もすごい。田中泯さんは、共演したことがありますが、役者としてものすごく変身なさった。すごいなと。「国宝」での踊りは、やはりすごい。彼の踊りがないと(作品が)薄っぺらくなる。(出演者の中に)本物がいない中、プロの田中泯さんを意図して入れたであろう、李相日監督も素晴らしいと思います。

石飛徳樹(映画評論家) 田中泯さんですね。最後に、汚いアパートに1人でいるシーン。ここに美しいものが何もないと言う、あの説得力がすごくて。(吉沢亮が演じた)立花喜久雄があいさつに来た時の。あと、あの手の動きが美しい。

伊藤さとり(映画パーソナリティー) 私は、すごく悩んでいます。ただ…映画って、寺脇さんがおっしゃるように、時に当事者的な人がオーラを発することがある。田中泯さんは、この人にしか言えない、せりふだと思いました。「きれいな顔、してるね」をいう、せりふを言った時、心をわしづかみにされました。寺島しのぶさんも、同じですね。キャスティングの素晴らしさだと思うんですが、演技を超えた存在感…この人が見ている世界を感じた。佐藤二朗さんは、主演じゃないか? と思い…目立ち過ぎちゃっていて、山田裕貴さんが主演なら、もう少し抑えた方がいいのではないでしょうか?

笠井信輔(フリーアナウンサー) 助演だから(演技を)抑えなければ…というのは、僕は思っていなくて。取調室=密室のシーンが9割で、動きが制限される中、証言を見逃すな、聞き漏らすなという仕組みで、佐藤さんに誰もが集中する中、あのアクと存在感の強さを作り上げているのは、すごい。佐藤さんじゃないと、あの作品は成立しない。光を当てたい気持ちは強いですね。

神田 佐藤さんは、何をやっても、ああいう感じがするのですが?

笠井 得意技の1つではあるけど、内にこもった役もできる。それしかできない人ではないと思う。

寺脇 そもそも「爆弾」は、何で良いんだろう? 役者はうまいけど、何のためにやったんだろうと…映画として、何かに貢献していたのか? 今の日本の中で底辺にある人が、ゲームみたいな話の中で、いくらやったって、顔芸を見ているみたい。

伊藤 私も同じ。窪田正孝さんも、良かったけれど「宝島」で受賞かな? となってしまう自分がいます。

福島 エンターテインメント映画ですが5、10、15年後、反すうする映画ではないと思う。

石飛 横浜流星さんは、あまり助演という感じがしない。助演男優賞は違う…、むしろ主演に近いです。

<投票1回目>

田中泯 7

永瀬正敏 3

横浜流星 3

佐藤二朗 2

<投票2回目>

◎田中泯 8

横浜流星 4

永瀬正敏 3

※過半数の8票を得た作品、俳優が受賞

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