<第38回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)>
外国作品賞は、次期ローマ教皇を決める選挙(コンクラーベ)を描いた米・英合作映画「教皇選挙」(エドワード・ベルガー監督)が受賞した。
25年3月20日の公開後、同4月21日にフランシスコ教皇が逝去し、同5月7日に実際にコンクラーベが始まると、翌8日には米国出身者初の教皇レオ14世が誕生と、現実世界の動きが映画の公開とリンクした。その勢いに乗り、日本国内でもムーブメントが起き、興行収入(興収)は10億円を突破。国内で配給したキノフィルムズを率いる、木下グループの木下直哉社長兼グループCEO(60)は「良い作品が受け入れられる年と、受け入れられない年のタイミングがあると一番、思った年。この時流は、なかなかできない、すごい確率」と感慨深げに語った。
海外作品の配給に加え、25年10月31日に封切られ、公開中の吉永小百合(80)の124本目の映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」では、製作総指揮を務めた。これまで東映、松竹といったメジャーしか配給してこなかった、吉永の主演映画の製作、配給を手がけるなど邦画の製作にも意欲的だ。吉永の映画の製作には、東映が製作・配給した2008年(平20)の「まぼろしの邪馬台国」(堤幸彦監督)以降、「てっぺんの向こうにあなたがいる」まで10作全てに参加。25年までに日本国内で公開した邦画と洋画で、自主製作、出資、配給した作品は約520本に上る。
吉永は、日刊スポーツ25年11月16日付本紙芸能面に掲載されたインタビューに向けた取材の中で「てっぺんの向こうにあなたがいる」が、自身のフィルモグラフィーに残る1本になりえたのではないか? との質問に「その通りですね」とうなずいた。その上で「木下さんの映画に対する思いの寛大さ、愛情を、すごく感じる。こんなにすてきなものができるんだ、というのが、あふれている」と、木下氏をたたえた。
木下氏は、吉永の言葉を伝え聞くと「本当に、ありがたい。吉永さんは、映画愛にあふれる方。映画女優で、吉永さん以上の方も、それ以下の方もいらっしゃらない」と感謝とともに、吉永が日本で唯一無二の映画俳優であると絶賛。その上で「吉永さんの映画は、今後もずっとやっていきたい」と、吉永の主演作の製作を、今後も続けていく考えを重ねて強調した。
米国の映画界にも進出した。24年にロサンゼルスにもキノフィルムズを設立し、25円から始動。ハリウッド映画に2本出資し、脚本も複数、買ったという。米国での自社製作の予定については、近々はないと言うが「将来的にやりたいを思って、やっているわけです。日本の映画と同じで、最初は出資から入って行き、米国でも少しずつ、やっていく中で、キノフィルムズの名前が知られた段階でいきたい」と、米国の自社製作にも強い意欲を示した。
実家は福岡県内の特定郵便局で、子どもの頃から「テレビで映画を見るか、映画館で映画を見るか。映画がテレビでもない日は、宿題をした」と語るほどの映画好き。子どもの頃に夢見たのは、映画監督と経営者だったが今、ここまで映画作りをしている未来は「想像できるわけ、ないですよね、そんなもの。映画が好きだから、ここまで来た」と思い描いていなかった。
公開中の山田洋次監督(94)の新作「TOKYOタクシー」の製作委員会にも名を連ねるなど、映画の製作出資においては国内で屈指の存在と言えよう。映画をはじめとした文化のみならず、20年にわたって支援を続けるフィギュアスケートをはじめ、卓球、水泳、テニスへの支援、育成も尽力する。「だから、もっと仕事を頑張らなきゃいけない。映画をたくさん作りたいし、文化にも関わりたい。会社を大きくするモチベーションになる」と、前進を続けていく意欲を口にした。そうした強い言葉を包み込むような、温かく柔和な笑顔が、人を呼び寄せ、つなぎ、輪を作えり、さらなる明るい光を生みだしていく秘訣(ひけつ)だろう。【村上幸将】