なべさんの言葉で45年間の酔っ払い人生で最長の断酒期間も…気がつけばウイスキーをグイグイ

なべおさみ(2018年11月撮影)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

新年を機にお酒をやめた。19歳、大学に入学したときから45年間、コロナ前まで週に5日、飲み屋10軒を心に決めて、強くもないお酒を飲んできた。ビール、ウイスキー、バーボン、赤白ロゼのワイン、レモンサワー、日本酒、焼酎とのべつ幕なしに飲んできた。

ただ、飲むだけでなく、仕事絡みも多い。会食も多いのだが、新宿二丁目、ゴールデン街とマスコミが集まる店で飲みまくっった。景気が悪くなって2次会がなくなっても、1軒だけで帰るのは酔っぱらい道にもとると、行きつけの酒場に通った。

ところがだ、コロナ禍に還暦を迎えた頃から、酒場通いが週に3日に減った。行きつけの店が閉まってしまったからだ。新宿30年近く、最盛期は週に5日通った二丁目のゲイバーのママは70歳を機に店を閉めた。その後、通ったゴールデン街のママはゴルフをしたり仲がよかったのだが、生まれ故郷の博多に帰ってしまった。いまさら、1人で気軽に入れる店を新たに開拓する気にもならない。10年くらい前までは10軒近くのバーにボトルキープしていたのだが、それも今は新宿二丁目と麻布十番のゲイバーの2軒だけ。

断酒を思い立ったのは、昨年暮れにプロゴルファーのジャンボ尾崎さんが78歳で亡くなった時。親友のなべおさみさん(86)を取材したのだが、この方はお酒を一滴も飲まない。2014年(平26)に81歳で亡くなった俳優菅原文太さんとは「僕はね、文太さん主演の映画『トラック野郎・爆走一番星』に出してもらった時に、酒を飲まないから東映の大泉撮影所まで車で送り迎えをして、いろいろな話を聞かせもらったんだよ」と言っていた。だが、そんなもんかと聞き流していた。

そんな元気な86歳がYouTube「なべおさみチャンネル」で元日に「長生きしたいなら今すぐ、酒をやめろ」という映像をアップした。記者は昨年から血圧が高く、朝起きたら血圧を測り、トマトジュース、豆乳、りんご酢を飲み、暮れには筋トレを数年ぶりに再開した。その身になべさんの言葉は天の啓示のように突き刺さった。それで、正月から酒を断った。

ところが、1週間たった8日に週刊誌のおねえさん記者にごはんに誘われた。お茶かジュースを飲んで頑張ろうと心に誓った。だが、指定されたのは四谷のジンギスカンの店。「俺はジンギスカンを食うのにビールを飲まないなんてやぼなことはしない。でも、今年はお酒は基本的に飲まない、飲むとしても押さえて飲む」と宣言した。最初は押さえて飲んでいた。ビールは注がれたらすぐ飲み干すのが基本と思って生きてきたが、半分飲んでグラスを置く。

ところがだ、相手がレモンサワーに切り替えた。そこから勢いがついてしまった。荒木町に場所を変えて2年前に新宿から移転した文壇バーに。カウンターに座れば、すてきなおじさまがズラリ。まずは角樽から升酒で乾杯。そしておじさまの中に10数年ぶりに会う、一般紙記者を発見して勢いがついた。気がつけばウイスキーをストレートでグイグイ。押さえて飲むどころではなく、目の前にグラスを置かれるとすぐ飲み干す。

振り返れば、7日間という短い間の断酒生活。だが、45年間の飲酒生活で、一番長い禁酒だった。今後はどうするかとも思うが、年が明けたら顔を出さなくてはならないすし屋が1軒。新宿二丁目、六本木、麻布十番にバーがそれぞれ1軒。お酒をやめることも、長生きもできそうにない。そう実感した、正月過ぎでした。【小谷野俊哉】