<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
人のことはすごく大事にしてほしいけど、人の目はあまり気にせずに。人はたいして自分のことを見ていないです。逆説的ですけど-。
これは、フジテレビ系ドラマ「ラムネモンキー」(水曜午後10時)の制作発表会見の際に、俳優津田健次郎(54)が観覧に詰めかけた学生へ送った言葉の一部だ。まさに“大SNS時代”の現代だからこそ心に突き刺さる言葉が並んだ。
就活に励んでいるという学生が、「二十歳頃をどう過ごし、将来をどう決めたましたか」と質問をした。
津田は「二十歳の頃は超イライラしてましたね、食えないし何者でもない自分にイライラして、世間に怒りまくってましたね(笑い)」とした。
共演者から意外との声も上がる中、「でも、人とどう接していくかってすごく大事だなと思います。一生懸命やっていれば誰かが見てくれているような気もするんですよね。もし人と出会いたいなら、恐れずにドーンと行ってみてください。若さの一番の武器はもしかしたら、失敗できること、失敗してもそれを取り返す時間があることかなと思います」と丁寧に話した。
そして冒頭の言葉へと続く。話しぶりは静かで穏やかだが、言葉には確かに熱が帯びていた。
続けて、「人と結びついて。SNSとかがいっぱいあって、結びつきが生まれちゃうかもしれないけど、直に結びつけると良いような気がしますね。皆さんは可能性の塊だと思います」と学生の背中を押した。
津田が話した通り、二十歳頃は自分が何をすることができるのか、何になることができるのか、将来に悩みを抱えることが多い。しかし、ふとスマートフォンに目を落とすと、何かしら成功していそうに見える同年代の姿が嫌でも目に映るものだ。「何者かである」ことが称賛の対象となる、昨今のSNSにはそんな風潮を感じることさえある。そういったコンテンツを目にし、不安、うらやましさなどが芽生え、時には必ず成功しなければならないと焦る学生もきっといるだろう。
そこで、津田の言葉を振り返る。ただ単に失敗しても大丈夫だ、というだけでなく、「失敗してもそれを取り返す時間があること」という根拠を津田は提示した。意識したかは分からないが、理由もセットにすることで、ただ放たれた言葉ではなく、より一層学生の心に届く言葉になったのではないだろうか。さらに、「一生懸命やっていれば誰かが見てくれているような気もする」と挑戦すること自体を優しく肯定もした。
そして冒頭に触れた「人の目はあまり気にせずに。大して自分のことを見ていないです」という言葉。成功も失敗もとにかく可視化されやすい時代に、恐れがちな人目という要素を1つ、きっぱりと断ってみせた。ここまではっきり言うとは、と驚いた点でもあるが、そのくらいの気持ちでいて良いんだよ、という津田からのメッセージだと捉えた。
1歩踏み出す際に、不安を抱いたり、周囲からの評価や見られ方を気にしたりすることは、どうしても生じてしまう。津田の言葉で気持ちが少し軽くなった参加者もきっといるだろう。記者もその1人だ。
長い下積み時代を経て、俳優から声優の道へ、そして再び俳優の道へと苦労を重ねながらも挑戦を続ける津田だからこその言葉選び、そして、挑戦と失敗への向き合い方。SNSよりも直接的な人との関わりに重きを置く提言もあった。就活など人生の分岐点に立つ学生たちにとって、改めて自分が存在するこの現実世界をどう生きていくか、金言の数々だったに違いない。【寺本吏輝】