アイドルの恋愛禁止は日本独特の文化?「さまざまな思いが…」映画「恋愛裁判」深田監督に聞いた

深田晃司監督(2025年12月撮影)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

人気俳優が結婚した時には、決まってネット上で「○○ロス」現象が起きる。そんな心境に陥ったことはないが、気持ちはわかる。むしろ祝福コメントのほうに建前的な響きを感じる。

先日、映画「恋愛裁判」(23日公開)を撮った深田晃司監督(46)に話を聞く機会があり、それが日本独特の感覚であることを改めて考えさせられた。

映画は、アイドルの「恋愛禁止ルール」にスポットを当て、心ならずもルールを破ることになった元センターの女性の「闘い」を描いている。アイドルの契約書に「恋愛禁止条項」があるのは日本と韓国だけといわれ、欧米の人々は違和感を覚えるという。

「カンヌ映画祭や海外のいくつかのイベントで上映しましたが、その反応には各国で明確な違いがありましたね。韓国やアジア諸国では、比較的自分ごととして見てくれましたけど、フランス人にとって『恋愛禁止』なんて違和感の塊なんですね」

深田監督がこの題材に着目したのは10年前。恋愛禁止条項を巡る裁判の記事を実際に目にしたという。

「アイドルの女性がファンの男性と恋愛したことで所属事務所から損害賠償を請求されたというものでした。僕みたいにそれほど関心がなかった人間でも、実は『紅白』やCMなどを見ながら知らず知らずのうちにアイドル文化にどっぷり漬かっている。だから、恋愛禁止の暗黙のルールがあることは認識していたんですが、まさか契約書に実際の恋愛禁止条項があり、裁判にまでなるとは思わなかったんです」

当時、間を置かずに2件の裁判があり、禁止条項を破ったアイドルの法的責任を巡る判決は「1勝1敗」と明暗を分けた。が、どちらもアイドルの価値を維持するために異性との交際を避けようする事務所の姿勢には、裁判所が一定の理解を示している。

「疑似恋愛」の対象として活動する営業方法は裁判所も認めているということになる。

構想10年の間、調査を続けてきた深田監督は「握手会とかの接触イベントも日本独特の文化ですし、昔のアイドルのキャッチコピーもほとんどが疑似恋愛を匂わせるものでした」と振り返る。

一方で「実際には知れば知るほど、現在のアイドル事務所のトップに高圧的な人は少ないし、アイドル文化を純粋に愛している人が圧倒的に多い。条項を盾にとってアイドルを縛っているという単純な図式では描ききれないさまざまな思いが絡み合っています」とも。主演に元日向坂46の齊藤京子を迎え、映画はリアルにアイドル文化の今を映している。

齊藤の他にも私立恵比寿中学・仲村悠菜、いぎなり東北産・桜ひなの、元STU48今村美月らが出演。齊藤は「出来上がった映画はフィクションというより、実際のアイドル活動のドキュメンタリーを見ているような感覚でした」という。

“アイドルオタク”ではなくても、映画オタクを自認する監督らしく、名作にオマージュをささげたシーンもいくつか挿入されており、見どころの多い作品となっている。【相原斎】