<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
音楽家の渋谷慶一郎氏(52)がこのほど、大阪市内で「渋谷慶一郎 アンドロイド・オペラ『MIRROR』-Deconstruction and Rebirth-解体と再生-」(5月16日、フェスティバルホール)の記者発表会見に出席した。
AIが歌い、生のオーケストラ、ピアノ、電子音、映像、そして1200年の歴史を持つ仏教音楽・声明が融合する革新的オペラ。渋谷氏の亡き妻マリアをモデルとして、25年に制作された最新人型ロボット「アンドロイド・マリア」が歌う。マリアは同年11月に東京・サントリーホールでデビューしており、大阪は初登場となる。
公演で歴史ある声明(しょうみょう=仏教の法要で僧侶が唱える声楽全般を指す言葉で「梵唄(ぼんばい)」とも呼ばれる)が行われるということで、会見には大阪で歴史のある漫才コンビとして、ベテラン漫才コンビ海原はるか(77)・かなた(78)も出席した。
最先端の技術を駆使したアンドロイドと芸歴55年を迎えた大ベテラン漫才師の組み合わせに、はるかは「何のために呼ばれたんかな?」と苦笑いしながらも、マリアに話しかけたり、目の前で漫才を披露したりと積極的にコミュニケーション。かなたがはるかの髪に「フーッ」と息を吹きかけるお約束の“一髪”ギャグも繰り出し、マリアから「はるかさんの髪の動きがめっちゃ好きやねん」とほめてもらうと、すっかりご機嫌になっていた。
想像を上回るスピードで進化を続けるAIだが、お笑いとAIについては、タレントの明石家さんまが以前、ラジオ番組で「データだけのことやからな。お笑いは絶対にAIにつぶされる心配はないねん。もう、お笑いは絶対でけへん。データやから、向こうは。過去のもんや。お笑いは今やから。絶対に追いつけない商売」と持論を展開。「漫才師も『M-1(グランプリ)で優勝できるネタを作ってください』って言うたら、バーッてできるんやろ? でも、おもろないらしい。おもしろさはAIでは無理なところあるからな」と話していた。
そんなことを考えながら、はるかかなたとマリアのやりとりを眺めていると、はるかのボケや質問にマリアが返答する際、間があく場面が何度かあった。
間と言っても、体感ではせいぜい1秒ほど。返事を考える間なのか、相手が話しているときは口を挟まないプログラムになっているのかは分からないが、いずれにせよ一瞬の空白が発生。そこで漫才師として無言を許容できないはるかが、マリアが返答する前に次の質問を重ねてしまうため、会話がスムーズにいかない印象を受けた。
ただ、渋谷氏とマリアの日常会話には何の違和感もなかったし、対漫才師用の仕様ではなかっただけかもしれない。技術的な問題なら時間が解決してくれるだろう。
音楽の世界でAIのコンサートを成功させた渋谷氏は「アンドロイドオペラの中では決まってる歌を歌う部分もあれば、アドリブ、即興の部分もある。漫才とも似ていると思う」と共通点を指摘。笑いとAIの可能性について「(AIは)無限なんで。受けきれないネタがないんですよ。言っちゃいけないこともない。可能性はかなりあると思う」ときっぱり言い切った。
テレビ朝日系「報道ステーション」に出演した際に、即興でアンドロイドとピアノセッションをしたことを振り返りながら、「何を歌い出すかまったく分からない。後で大騒ぎになったんですけど、かなりおもしろかった」とニヤリ。あわや“放送事故”の危険性にも「人間だとリミットしちゃうことも、AIはリミットしない。アンドロイドがテレビに出られなくなってもそんなに困らない。危険なタレントですね」と笑い飛ばしていた。
AIがM-1チャンピオンになる時代もそう遠くないのかもしれない。出場資格があるのかどうか知らんけど。【阪口孝志】