<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
中村勘九郎、中村七之助らが出演する「猿若祭二月大歌舞伎」が1日、東京・歌舞伎座で初日を迎えた。
江戸歌舞伎の発祥、猿若座(後の中村座)にちなんだ冠を付けた興行。50年前に始まり、節目の年などに開催されてきたが、今回は3年連続での開催で、恒例となった感がある。
本来は、中村鶴松が初代舞鶴(まいづる)を襲名する興行だったが、飲食店でのトラブルのため謹慎、襲名も見送りとなってしまった。人気、実力ともにめきめきと上がり、勘九郎、七之助も期待を寄せている中村屋に欠かせない俳優。どこかぽっかりと穴が開いたような気持ちになって客席に着いたことは否めなかった。
昼夜ともに注目の演目が並び、鶴松が出演予定だったものは2演目。昼の部「弥栄芝居賑(いやさかえしばいのにぎわい) 猿若座芝居前」は、芝居小屋前という設定で、役者が座元や小屋関係者、客に扮(ふん)して、興行の成功を願う演目だ。
片岡仁左衛門らも出演する中、勘九郎が、猿若祭の開催を何度も「ありがとうございます」と感謝の言葉を口にしたのが印象的だった。「お客さまのおかげです」と客席を見、「皆さま方がお力添えくださったおかげです」と同じ舞台に立つ先輩、同輩、後輩に頭を下げた。せりふに、精いっぱいの感謝や申し訳なさを込めていたのを感じた。
夜の部「雨乞狐」は、舞鶴襲名披露演目だったが、鶴松が休演、謹慎したことで、勘九郎、七之助の2人に配役変更された。2人の父で18代目中村勘三郎さんに当て書きされた演目で、勘九郎が引き継いだ。6つのキャラクターを踊り分けるだけでなく、かなり激しい動きもある難しい舞踊。勘九郎はかつて、演目の途中で靱帯(じんたい)断裂してしまったほどだ。鶴松が自主公演で初めて「雨乞狐」を踊り、再び挑むということで注目していた。
先に書いたように、どこかさみしい気持ちで「雨乞狐」を見始めたのだが、冒頭から目がくぎ付けになった。勘九郎、七之助ともに、キレキレだったり、しっとりだったり、コミカルだったりといろんな踊りを見せ、体の動きだけでなくキャラクターそれぞれの魅力を目いっぱい表現していた。終盤、勘九郎の野狐がせり上がりからポーンとジャンプした時は、その高さに驚いた。
2人ともフレッシュさがあふれていて、すがすがしい気持ちになった。加えて、急きょの配役変更にもかかわらず、ここまで見せられるのは、何よりも稽古に裏打ちされた土台と、中村屋の底力があるのだと強く感じた。
いろいろ思いながらの観劇となったが、勘三郎さんに見いだされ、勘九郎、七之助らと一緒にやってきた鶴松に、土台があるのは間違いないはずだと思う。熱量高い芝居も持ち味だった。舞台復帰を言うのは時期尚早かもしれないが、中村屋で培った力と熱量の高さを見せてほしいと思った。【小林千穂】