昨年8月Nスペ総力戦研究所ドラマの映画化、所長の孫弁護士が主張したのは…法的措置は今後検討

第1回口頭弁論後、会見を開いた飯村豊さん(撮影・村上幸将)

25年8月16、17日にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」で題材となった総力戦研究所初代所長・飯村穣中将の孫の飯村豊さん(79)が、NHKなどを訴えた民事訴訟の第1回口頭弁論が18日、東京地裁で開かれた。飯村さんは、祖父の人物像が誤った描写で不当にゆがめられ、名誉を毀損(きそん)されたとして、NHKや番組制作会社などに550万円の賠償を求めて提訴した。

「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」をめぐっては、ドラマパートをベースに約40分の追加シーンを加えた劇場版が、映画「開戦前夜」として26年以降に劇場公開予定と、25年12月に発表されている。製作委員会は、被告の中から放送したNHKを除くポニーキャニオン、東京テアトル、NHKエンタープライズ、RIKIプロジェクトで構成されている。飯村さんは、映画について「虚偽に満ちた番組を元にした映画化が発表され、深い悲しみと怒りを感じ、猛省を促したい、というのが意見陳述のポイントであります」と訴えた。

「開戦前夜」製作委員会は、製作・公開を発表した際に出した声明の中で「本作は歴史的事実を基にしたフィクションです」と説明。「表現にリアリティーを持たせるため、総力戦研究所での研究内容や開戦への流れは、複数の専門家による時代考証と数々の取材に基づいて検討を重ね、そこに創作を加えてテーマを伝える物語を紡ぎました。架空の名前の人物に特定のモデルはいません。『板倉大道少将』も実際には存在せず、架空の人物であることを放送時にはテロップ等により明示しました」と、劇中で國村隼(70)が演じた板倉大道陸軍少将は、あくまで架空の人物であることを強調。映画化にあたって「ご指摘の内容については、誤解が生じることのないよう、テロップでの明示を含む複数の対応を検討しております。引き続き、さまざまなお考えや見解に真摯(しんし)に向き合いながら進めて参ります」とした。

映画「開戦前夜」をめぐっては、NHKの山名啓雄副会長がメディア総局長時代の1月21日の定例会見で言及。NHKは、放送法で営利を目的とする事業が認められておらず、ドラマは共同制作したが放送後は共同制作が終了し、映画の製作委員会に加わっていないと説明した。飯村さんは、会見でそのことに触れ「常識的には噴飯物。雲隠れを世間様は許すのかと憤りを感じる」と批判した。

梓澤和幸弁護士は、池松壮亮(35)仲野太賀(33)中村蒼(34)佐藤浩市(65)らが人気俳優が多数、出演したのは「NHKスペシャルというグレードの高い番組だからこそ、人気俳優を集められた」と主張。「800万人以上、見ている(公共放送NHK)なら当てられると、共同製作会社が映画化に乗り出した。(NHKは)自分が持っていた著作権を(映画製作に)使うなら、やめろと言えるはず。法的、社会的責任はバッチリ、ついて回る。ちょっと考えられない」と首を傾げた。

会見の質疑応答の中で、映画の公開に対し、法的措置を取る可能性はあるか? と質問が出た。飯村さんは「今後、弁護団とご相談したい。何をするか、具体的なことは考えていないが、上映に対する反対の気持ちは、あらゆる機会を捉えて強く申し上げたい」とした。坂仁根弁護士は「何せ公開期日が、まだ決まっていない。内容も分からない。検討することが、いろいろある。内容について、正式に発表なり公開されれば、差し止めなり検討することになるだろう。仮処分なのか訴訟なのか、実際にするか、しないのか…今の時点では具体的に申し上げかねる」と続けた。

飯村さんは「名誉毀損(きそん)の裁判で、私どもに好意的な判決が下ると言うことが、先方に対する強いプレッシャーになることは期待しております。それに加え、上映を差し止めて欲しい云々は、弁護団と話し合って決めていきたいと思います」とした。