ブルーリボン賞授賞式で異彩を放った渋谷龍太 真摯に演技に向き合って新人賞に

ブルーリボン賞新人賞の渋谷龍太(2026年2月撮影)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

先日行われたブルーリボン賞の授賞式には、昨年の映画界を彩ったそうそうたる顔触れがそろった。

山田洋次、李相日両監督、妻夫木聡、広瀬すず、佐藤二朗、森田望智…。映画記者会が選ぶこの賞は作品や演技の質はもちろんだが、現場で取材した記者たちの思いが反映される分、熱意やその人柄などの影響がないと言ったらウソになる。「人間力」も俎上(そじょう)に乗せるところが、評論家が中心になって選ぶ他の賞との一番の違いだと思う。

授賞式の観客は主に新聞読者、総じて年配の方が例年多数を占める傾向がある。今年はその中に若いロックファン風の人たちが混じっていた。

お目当ては、「ナイトフラワー」で麻薬密売の元締めを好演し、新人賞となったSUPER BEAVERの渋谷龍太(38)だ。首にはタトゥーがのぞき、授賞式の映画人の中で異彩を放っていた。

この映画で共演した森田望智は「一番最初のシーンでお見かけした時は怖くて怖くて。本当のヤクザの方かと思いました(笑い)。でも、口数も少なくて、よく見たら震えていらっしゃる。緊張されているんだな、と。ものすごく誠実でピュアな方なんですよ」と振り返った。

佐藤二朗も「控室の隣が渋谷さんで、最初は殺されるかと思った(笑い)、そしたらすごく腰の低いあいさつをしてくださって」と感想をもらした。

渋谷自身、授賞式では「20年音楽だけをやってきまして、ようやく軸ができたと思えたときにいただけたお芝居の機会でした。その上、このような賞までいただけて、自分の中では本当にビックリでした。ひとえに監督やスタッフ、そして共演者と、日ごろ応援してくださる方のおかげだと思っています」と殊勝に語った。

授賞式に先立つ、取材の場でも、初体験の演技に対する謙虚な姿勢や、俳優活動への前向きな思いが伝わってきた。それが劇中のリアルな売人像につながったのだと思うが、選考会でも関係者から漏れ伝わる「まっすぐな姿勢」が投票につながる一因になったことは間違いない。

授賞式後のパーティーでは映画関係者との親交を深めていたが、随所に腰の低い人を実感させた。下北沢や渋谷でのライブ活動からスタートして20年、「本当に賞とは無縁の人生を歩んできました」という渋谷のとっては初の賞でもある。インスタグラムに初対面した山田洋次監督とのツーショットを投稿。素直な喜びも表した。

A4サイズの控えめな大きさの紙に「渋谷龍太」と書いて応援に駆けつけたファンたちも、周囲の年配映画ファン同様に静かに受賞者たちのコメントに耳を傾けていた。ファンにも本人の姿勢が宿るものなのだ、と改めて思った。【相原斎】