早瀬憩、坂口健太郎主演「私はあなたを知らない、」で初ヒロイン、新垣結衣から変わった目標

ヒロインとして出演した映画について語った早瀬憩(撮影・中島郁夫)

女優の早瀬憩(18)が、坂口健太郎(34)主演の日仏共同製作の映画「私はあなたを知らない、」(中野量太監督、今夏公開)で、初のヒロインを務めることが22日、分かった。劇中で演じるのは、母をあやめて自分を天涯孤独の身にした、服役中の主人公に会いに行く、という難役。24年の初主演映画「違国日記」(瀬田なつき監督)などで25年に第67回ブルーリボン賞新人賞を受賞した際は、ダブル主演の新垣結衣(37)を目標に掲げていたが、今回の難役を経験し「唯一無二の女優」と、考えが1段階、ステップアップした。

台本に初めて目を通した段階で「複雑で難しい。自分の力量じゃ生ききれない役だと思った」と察知した。劇中で演じた朝子は、坂口が演じる、たった1人で生活していた西山夕平が職場で出会ったシングルマザー紗月の娘だ。出会いから13年後、唯一の肉親の祖母が亡くなって天涯孤独になった時、半年間だけ本当の娘のように愛してくれたものの、記憶にはない夕平の存在を知る。そして、母をあやめて服役中の夕平に会いに行く役どころだ。「台本を読んで、自分の脳が追いつかなくて、本当に会いに行けるの? と思った」と振り返った。

朝子役は、オーディションでつかみ取った。「オーディションの段階から指導してくださって、監督の熱量が、汗をかくくらい伝わってきた。監督の下でお芝居できたら、幸せだという気持ちは強くなった」と、中野量太監督(53)との出会いに運命を感じた。

撮影は25年9、10月に行われた。「坂口さんの姿が夕平そのものだったので、実際に会った時の朝子の気持ちは、こうなんだ、と、台本を読んだ時に理解できなかった感情にたどりつけた」と坂口と芝居することで、朝子の感情が自然と理解できた。

クランクアップ時は、中野監督が「最後、崩れ落ちるようにクランクアップしたあの姿は、今でも忘れられません」と振り返るように、号泣した。「撮影中、今まで感じたことのない感情、したことのない表現をさせてもらうことが多く、今までの自分のままでやったらダメだと思うタイミング、シーンが結構あった。クランクアップ時に、今まで知らなかった自分を知ることができた」と涙の理由を明かした。そして「この作品に出会えて良かったと、しみじみ思いますし、撮影期間を通して成長できていたら。自分では分からないですけど、今後、自分の未来に繋がっていたら、いいなと思います」と感謝した。

ブルーリボン賞受賞当時は17歳だったが、高校卒業後は進学せずに女優業1本で生きていくつもりだと明かしていた。「私はあなたを知らない、」の撮影を経て今春、高校を卒業した。「お仕事でやっていくと、自分では決めていて先日、高校を卒業して、その状態になって。今までは学業優先の中でお仕事をやっている状況だったのが、今はお仕事1本になって、大好きなお芝居に時間を費やせるんだという気持ちが、すごく大きい」と率直な心境を口にした。

好きなお芝居を、仕事にしていくと決意し、そこに向かって日々を重ねた人生の流れの中で巡り合ったのが「私はあなたを知らない、」であり、中野監督であり、坂口だった。図らずも「違国日記」同様、母を亡くした役を演じ「また、お母さん、亡くしていますね」と因縁、運命、人生の転機を感じており「難しい役ほど挑戦ですから、成長できる、きっかけになっていると思います」と口にした。

ブルーリボン賞受賞時に、今後の夢、目標を聞かれ「結衣さんのように全国民に愛されるような唯一無二だと思われるような女優さんになりたい」と即答した。それから1年がたった今、口にした目標は「唯一無二でありたい」。「結衣さん」という名前が、なくなった。

新垣は今でも、心のよすがとして、大きな存在として居続けるが、そこから大きく、一歩を踏み出せた。「確証めいたものはないですけど、ブルーリボン賞以降の現場で、たくさんの人と出会い、たくさんの言葉をいただき、たくさんのシーンを撮り、たくさんの知らなかった感情と出会う日々。徐々に気付かぬうちに変わっていっている部分はあるのかなと思います」と振り返った。

その上で「唯一無二、と同時にお芝居が好きなので、息の長い俳優さんになりたい。ずっと続けていった、その形が唯一無二になったらいいなと思います」とも口にした。「私はあなたを知らない、」は、その1つのきっかけになりうる要素がある。日仏共同製作で、既にフランスでの公開も決まっていることだ。「本当に、想像がつかないですが楽しみ」と喜ぶ裏には、製作中から議論を繰り返した作品が、どう受け止められるか? ということへの興味がある。「1つの良い物を作ろうと一丸の、同じチームの中で、私はこう思う、と意見が出て、現場で論争が起きるくらいになった。不安よりも国内外、問わず、見た方の感想を聞きたい」。

そして、こう続けた。「もう18歳なんで、大人になります」。新垣結衣の、少し後ろに立ち「結衣さんを目指す」と口にした少女の殻から乗り越えた瞳に、ブレはない。なりたい大人の俳優、思い描く未来に向かって、自分で道筋をつけて歩いて行く。【村上幸将】

◆早瀬憩(はやせ・いこい)2007年(平19)6月6日、千葉県生まれ。19年から芸能活動を開始し、21年に女優デビュー。23年の日本テレビ系ドラマ「ブラッシュアップライフ」、24年のNHK連続テレビ小説「虎に翼」などに出演。映画は、25年『か「」く「」し「」ご「」と「』(中川駿監督)「この夏の星を見る」(山元環監督)に出演。6月5日に出演作「モブ子の恋」(風間太樹監督)の公開を控える。

◆「私はあなたを知らない、」28歳の西山夕平(坂口健太郎)は天涯孤独の身。粛々と働き、自分の中で決められたルーティンで生活をし、たった1人のその環境を寂しいとも感じずに生きてきた。職場にやってきた新しいパート職員・紗月と出会うまでは。彼女と出会い、生きる喜びを得て夕平の毎日は輝いていった。そしてある日、紗月から5歳の娘・朝子を紹介される。彼女は実はシングルマザーだった。紗月と朝子との生活が、これまで知らなかった“家族”という幸せの形を知り、夕平の心を開放していくが…。

原案・脚本も務めた、中野量太監督のコメント全文は、以下の通り。

常識的には絶対に会うべきではない人に出会い、心を通わせていくという難役を、憂いを帯びた繊細な表情と大胆かつ無垢(むく)な心模様で、見事に演じてくれたと思っています。オーディションの時から、早瀬さんには、貪欲に役に近づこうとする強い意志を感じていました。現場では、柔らかでありながら、全身全霊で役に向き合い、最後、崩れ落ちるようにクランクアップしたあの姿は、今でも忘れられません。演出していて、とても楽しかったし、何より、うれしかったです。俳優・早瀬憩の神髄を撮れたと思っています。皆さんに観て欲しい!