歌舞伎役者の中村橋之助(30)、福之助(28)、歌之助(25)の成駒屋三兄弟を中心にした歌舞伎自主公演「第4回神谷町小歌舞伎」が5月1~3日、東京・台東区の浅草公会堂で開催される。このほど、日刊スポーツの取材に応じ、同公演にかける思いなどを語った。
これまでに3度開催。その最たる成果について、橋之助は「僕を含め、福之助、歌之助の名前が、松竹やお客さま方の中で挙がる機会が増えた」とした。同公演を通して示した3兄弟の実力が、本興行の役へとつながっている。
また、相乗効果も生まれている。福之助は「神谷町小歌舞伎は僕たちを見に来てくれるけど、本興行はそうではない」としつつ、「神谷町小歌舞伎を見てくださった方が、僕たちに興味を持って本興行を見に行ってくれたり、逆に本興行を見てくださった方が僕たちに興味を持って神谷町小歌舞伎に来てくれたりもしている」と説明した。
さらには、成駒屋一門の成長にもつながっている。歌之助は「僕たちも先輩方からアドバイスをいただいたりの勉強中ですが」と前置きした上で、「お弟子さんたちの芝居に対する取り組みが変わってきている」という。当初は「稽古しなくて大丈夫? 状態だった」というが、今は「神谷町小歌舞伎に向けて、1年間をどう過ごすかが芽生えてきている」。その結果、「お弟子さんによっては、本興行でセリフのあるお役を、ちょっとづついただけたりが増えてきている」という。「うれしい反面、僕たち3人も現状に甘えず、もう一段階上に上っていく準備が始まったのかなと思っています」と自らを律した。
一昨年、福之助が「お客さまを育てる」と発言し、橋之助が「それは失礼な言い方」と制する一幕もあった。橋之助は「お客さま方もこの神谷町小歌舞伎の成長を楽しんでくださっているというのは、僕たちもすごく感じ取っているところ」とし、「僕たちの成長を見守る過程で、お客さま方も歌舞伎に対しての理解、成駒屋一門に対しての理解も深まり、そういった意味では、お客さまも育ってくれていると思う」と改めて言及。「初期の神谷町小歌舞伎ファンが、自慢話にできるぐらい大きくしていきたいですね」。
それぞれが手応えを感じ、一門の成長にもつながっている。その今後について、橋之助は「結構よく聞かれるんですけど」とほほ笑むと、「正直決めていない」とした。「10回やりたいとか、こうしたいとかはなくて、一番は成駒屋一門が強く、大きな一門になること。歌舞伎界の中でもより存在感があって、より必要とされる一門になれるようにというのが大義です」と思いを述べた。
「僕たちが成駒屋の人間として歌舞伎役者でいる以上、歌舞伎座で主役をやれるようになるのもその一つ、自主公演でお客さんをいっぱい入れられるのもその一つ、お弟子さんたちが増えていくこともそ一つ」と続けると、「神谷町小歌舞伎のゴールというよりも、強い一門であるための一つの方法」と力説した。
その上で、「ずっと言っているように“発表会”ではなく“興業”として行いたい」とし、「地方公演があったりとか、まずはそこが目標かなとは思っています」。
初年度は土日開催で、チケットは完売。2年目以降は平日開催もあるが、完売とはならなかった。橋之助は「アンケートの満足度は、おかげさまで高かった」としつつも、「兄弟でも話したことですが、まだ有給を取るほどではないというのが、きっとお客さま方の中にあるのかな…」と推測。今年は土日開催だが、「来年は平日に開催しても、休みを取ってでも見に行きたいぞと思ってもらおうというのが、今回の僕たちの裏テーマでもあります」と意気込んだ
映画「国宝」が大ヒット。歌舞伎界に及ぼした影響について、「何より、注目していただけることが一番」と橋之助。「だからこそ今、頑張んなきゃいけない時なのかなと思います」。神谷町小歌舞伎を「本物を目指すところで、僕たちは高校球児ぐらいの思いとパワーでやっています」と例え、「高校球児を応援したくなるような気持ちで、応援していただければ」と呼びかけた。
「魚屋宗五郎も悪太郎も、ある意味肩の力を抜いて、ただ笑いにきていただけるような演目」とした福之助。「来てくだされば充実した時間を過ごしていただけるように、僕たちも準備しています」とすると、「どうしようか悩んでいる方は、ぜひ見に来ていただけたらと思います」。
歌之助は「第4回まで来られたのは、本当にお客さま方や裏方さんたちのおかげです」と感謝を示した。その上で、今年を「兄たち2人が主役をやり、僕が支えるという立場で試される年」と位置付けた。「僕も力を抜くことなく、今年も来て良かったと思えるような、応援してもらえるようにしたいと思っています」と、それぞれ意気込んだ。【川田和博】