フランスで開催中の世界3大映画祭の1つ、第79回カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを競うコンペティション部門に出品された、濱口竜介監督(47)の新作「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)の、ワールドプレミアとなる公式上映が15日、行われた。
公式上映に参加した黒崎煌代(24)は「本当に、あっという間だったなという感じで。国が違うと笑うところも違ったりして、こちらが気付かされる。2回目なんですけど、今日は新しい気持ちで見られて感動しました」と目を輝かせた。カンヌ映画祭への参加は、25年の前回に、フランス監督協会が主催しカンヌ映画祭に併設して開催される独立部門・監督週間に初主演映画「見はらし世代」(団塚唯我監督)が出品されたのに続き、2度目。2年連続でレッドカーペットを歩いたが「去年は去年、今年は今年の良さがある。コンペと言ったらすごいですから…大きなスクリーンに映って、うわっと(驚いた)。2年連続というのは置いておいて、このメンバー、皆さん一緒に上がれたのは、すごい感動的でした」と喜びをかみしめた。
「急に具合が悪くなる」は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者の宮野真生子氏と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者の磯野真穂氏が交わした20通の往復書簡を元にした、19年の同名共著(晶文社)を原作に、濱口監督が脚本を執筆。パリ郊外の介護施設の施設長マリー=ルー・フォンテーヌと、がんで闘病中の日本人演出家・森崎真理との交流を描く。マリー=ルーをベルギーの俳優ビルジニー・エフィラ(48)、真理を女優・モデル・映画監督のTAOこと岡本多緒(40)がダブル主演で演じた。
マリー=ルーと真理を引き合わせる重要な役どころとして、真理が演出する舞台に出演する俳優の清宮吾朗を長塚京三(80)が、黒崎は吾朗の孫の窪寺智樹を演じた。黒崎は「私はただ、元気はつらつにやっただけ…それは冗談で」と笑いつつ「智樹は、内部と外部、どっちもを行き来するような、どこにも属さない唯一のキャラクター、パーソナルだったので。すごい哲学的な話をしている中でも、ネイチャーではないけど、私の体と自然を存分に感じて、ひたすら自分の感じるままに演技させていただきました」と撮影を振り返った。
長塚は「監督の書かれた脚本通りに一字一句、一間一間、間違いないように注意してやるしかない。結果、哲学的に非常にユニークな…それが唯一の道なんだろうなと思いました」と撮影を振り返った。その上で「完璧すぎると言うのか…逆に底が見えなくて、親しみやすいんだけど、底が見えない。(演出されるのに)ドキドキしますね」と濱口監督の演出を評した。
◆「急に具合が悪くなる」 フランス、パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌ(ビルジニー・エフィラ)は、入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、日本人の演出家・森崎真理(岡本多緒)に出会い、がん闘病中の真理の描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、交流を始めた2人だったが、ある時、真理が「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、2人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。