<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
8月10日、“最初で最後”の日本武道館公演をもっての解散を発表しているロックバンドT-BOLANのライブを取材する機会に恵まれた。
現在、T-BOLANは“ラストツアー”と銘打った47都道府県ツアーを開催中。このツアー開始前には、上野博文(ベース=60)にステージ4の肺がんが発覚。以前のインタビューでは「ツアーだけはやりたかった。だから副作用の少ない薬での治療をお願いした」という。まさに“命を削って”、ステージに立ち続けている。
そして、森友嵐士(60)は4月末、和歌山&奈良の2公演を体調不良によりキャンセル。SNSでファンへの謝罪と振り替え公演を約束。その約束通り、6月の開催を発表した。
おそらく、満身創痍(そうい)。だが、ファンへの感謝、そして大好きな音楽への思いを実現するための気力は一切衰えない。おじさん記者としては、そんな男たちの姿を目に焼き付けておきたかった。
T-BOLANを知ったのは、おそらく94、95年あたり。92年入社で営業に配属され、会社の先輩に連れていかれたスナックで、先輩が歌った「離したくはない」だった。
元メタル系バンドマンだったおじさん記者にとっては「メタルこそ音楽」という、今となっては“なぞのこだわり”にまだ縛られていた時代だった。だが、お世辞にもうまいとは言えない先輩が歌う「離したくはない」が、なぜか刺さった。すぐにシングルCDを買いにいったことを、今でも覚えている。
あれから約30年。T-BOLANとして最後になるであろうツアーは、記者としてはもちろんだが、1人の男として、見ておく必要がありそうな気がした。
実際に見ると、いろんな意味で心が震えた。とても4月末に体調不良だったとは思えない森友のパワフルさに加え、たびたび起こった“上野コール”。そして、ライブ終わりには、観客から“ありがとう”の感謝の声。終わりが見えていることを差し引いても感動的なシーンだった。
アンコールで森友は客席を練り歩き、客席で歌った。目の前で歌われたファンにとっては、一生忘れることのない、最高の思い出になるだろう。笑顔、元気を森友流で直接届けている姿を目の当たりにし、「来て良かった」と心から思った。そして、ファンの“ありがとう”も納得できた。
パワフルなステージだけに、身体への負担も気になる。それでも、ファンの声援、拍手、そして“ありがとう”の言葉を胸に、武道館まで駆け抜けてくれることを祈ります。【川田和博】