フランスで開催中の世界3大映画祭の1つ、第79回カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを競うコンペティション部門に出品された、是枝裕和監督(63)の新作映画「箱の中の羊」(29日公開)の公式上映が16日、行われ、上映後は9分ものスタンディングオベーションが起きた。
映画初主演で、初のカンヌ映画祭参加となった、お笑いコンビ・千鳥の大悟(46)は「当然、初めてだったので、すごくびっくりしたのと、うれしいというか、こんな経験させていただいて」と感激。「(上映した)映画館もすごいし、ポップコーン入れるところもない映画館。いい経験させていただきました」と、独特の言い回しで初参加の興奮を口にして、この日、10歳の誕生日を迎えた桒木里夢(くわき・りむ)に「な?」と同意を求めた。
大悟は、11日に都内で行われた完成披露試写会の際、カンヌ映画祭参加に当たって「今、これだけは、と考えているのは」と口にして、レッドカーペットに意識を向けていると吐露。「先に車を降りたワシが先に手を出せるか? 車から降りたら手を出す、それだけ考えている。階段でも、ずっと手、出すの?」と、ともに主演を務める綾瀬はるか(41)をエスコートできるか不安を口にしていた。本番では、レッドカーペットに登場すると、車から降りた綾瀬の手を取ってエスコート。見事に成功。「こうやって手を出して歩くのも初めてやし。慣れた感じもどうかなと思いながら、やったつもりでした。ぎこちなかったんならそうかもしれません」と振り返った。綾瀬も「大悟さんがちゃんと律義にやってくださって、ちょっと面白いなと思いつつ、ありがたかったです」と感謝した。
「箱の中の羊」は、24年春に中国で死者のよみがえりビジネスが人気という記事を読んだ是枝監督の中に湧いた「最新のテクノロジーで死者をよみがえらせる」という発想が出発点となり、同年秋にビジネスをしている人に会い原案・脚本から手がけた。そう遠くない未来が舞台で、綾瀬が演じた建築家・音々と、大悟が演じた工務店の2代目社長を務める健介の甲本夫婦が、息子を亡くして2年のタイミングで、桒木が演じた息子・翔の姿をしたヒューマノイドを自宅に迎え入れる物語。
大悟は囲み取材で「大悟さん(の演技)が自然なので、本物の俳優さんのようでした」と感想を伝えられると「本物の俳優でした」と言い、会場を笑わせた。「すみません、そうでした」と言われると「今回だけです」と言い、笑った。
10歳の誕生日を迎えた日に大悟同様、カンヌ映画祭に初参加の桒木は「映画は初めてなのですごくいい体験になりましたし、やっぱり今日僕の誕生日なので…」と口にして、祝福の拍手を浴びた。そして「10歳です。すごく「持ってる」と思います」と言い、会場を笑わせた。
是枝監督にとって、カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した18年「万引き家族」以来、日本映画では8年ぶりとなる自らオリジナル脚本を執筆した作品。カンヌ映画祭コンペ部門への出品は、23年に坂元裕二氏(58)が脚本賞を受賞した「怪物」以来3年ぶり8度目。北米ほか、韓国、タイ、台湾などのアジア各国・地域、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス、スペインなど、早くも世界184の国と地域で配給が決定している。
◆「箱の中の羊」 息子を亡くして2年。建築家の音々(綾瀬はるか)と工務店の2代目社長・健介(大悟)の甲本夫婦は、息子・翔(桒木里夢)の姿をしたヒューマノイドを迎え入れることになる。到着した日、「おかえり」と駆け寄り喜びを隠さない音々と、戸惑いを隠せない硬い表情の健介。「パパだよね」と問いかけられた健介は、「おじさんでええよ」と答える。ほどなく予期せぬ事態が起こり、夫婦がそれぞれに抱く息子の死への思いがあらわになっていく。夫婦が大きな決断に迫られる中、ヒューマノイド翔はひそかにヒューマノイドの仲間たちとつながり始める。