フランスで開催中の世界3大映画祭の1つ、第79回カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを競うコンペティション部門に出品された、是枝裕和監督(63)の新作映画「箱の中の羊」(29日公開)の公式会見とフォトコールが17日、行われた。
同監督は質疑応答に答える中で、主演の綾瀬はるか(41)と映画初主演で、初のカンヌ映画祭参加となった、お笑いコンビ・千鳥の大悟(46)の芝居を見ながら、撮影現場で1つの発見があったと口にした。
「箱の中の羊」は、そう遠くない未来が舞台。綾瀬が演じた建築家・音々と、大悟が演じた工務店の2代目社長を務める健介の甲本夫婦が、息子を亡くして2年のタイミングで、桒木里夢(くわき・りむ=10)が演じた息子・翔の姿をしたヒューマノイドを自宅に迎え入れる。ヒューマノイドに前向きだった音々が「おかえり」と駆け寄って喜ぶ一方、健介は戸惑いを隠せず、ヒューマノイドから「パパだよね」と問いかけられても「おじさんでええよ」と答えるなど、夫婦の間には温度差が生じる。
物語を踏まえ、海外メディアの女性記者から「夫婦2人の間に優しさや、いかなる形の愛も見られないという印象を受けました。母とロボット、あるいは父と息子の関係にも、同じようなものは見当たりませんでした。これは日本社会への警鐘なのでしょうか、それとも単に監督の視点に過ぎないのでしょうか」と質問が出た。
是枝監督は「そんなことはないんですけど、親密さをどう描くかは作家によって違うかと思いますが、僕が考えたのは、前半は感情の交流がこの2年の間止まってしまっている。そこからスタートして」と、まず切り出した。続いて「それが子どもを呼び寄せるときに見直した画像の中に残っている自分の妻の笑顔を見た時に『この男は失ってしまったこの笑顔を取り戻したいがために、この息子をもう一度呼び戻そうとするんだな』と」と口にした。
その上で「僕は綾瀬さん、大悟さんの2人のお芝居を見ながら撮影現場で発見したんです。『あ、ここがこの夫婦がやり直す、夫婦関係を築き直すきっかけになるんだろう』と、僕自身が気付かされたというのがありました」と、綾瀬と大悟の現場での芝居から、大事なものを得たと説明。「それを縦軸にして、もう1度、脚本を強化して撮影しました。おそらく夫婦の時間が戻ってくるのは、森を去って、家に戻ってきてからなんじゃないかと僕自身は捉えています」と、2人の芝居から脚本を強化できたと開かした。
◆「箱の中の羊」 息子を亡くして2年。建築家の音々(綾瀬はるか)と工務店の2代目社長・健介(大悟)の甲本夫婦は、息子・翔(桒木里夢)の姿をしたヒューマノイドを迎え入れることになる。到着した日、「おかえり」と駆け寄り喜びを隠さない音々と、戸惑いを隠せない硬い表情の健介。「パパだよね」と問いかけられた健介は、「おじさんでええよ」と答える。ほどなく予期せぬ事態が起こり、夫婦がそれぞれに抱く息子の死への思いがあらわになっていく。夫婦が大きな決断に迫られる中、ヒューマノイド翔はひそかにヒューマノイドの仲間たちとつながり始める。