T-BOLAN森友嵐士“奇跡の男”上野博文への称賛と和歌山&奈良公演延期の裏側/連載2

“最初で最後”の日本武道館公演について取材に応じたT-BOLAN森友嵐士(撮影・川田和博)

ロックバンドT-BOLANのボーカリスト森友嵐士(60)がこのほど、日刊スポーツなどの取材に応じ、事実上の“解散”となる8月10日開催の“最初で最後”の日本武道館公演やメンバーへの思いなどを熱く語った。【聞き手=川田和博】

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ベーシスト上野博文(60)は、2度病魔に襲われている。1度目は15年のくも膜下出血だ。

森友 倒れた時の状況が良くなかったので、命があって、またこうして会えるだけでも、本当に奇跡的なんです。

その時僕らが思ったのは、上野にとって、何もなかった時よりも、人生の時間がきっと短くなっているんだろうなということ。だから、残りの人生を本当にやりたいことで使い切ってほしいという思いがメンバーの中にあって、そのことで僕らが協力できることがあるなら、最大限力を出すという思いがあった。それで「何がしたいんだ」って聞いたら、「ライブ」という言葉を出してきた。

僕もリハビリをやっていた時期があって。僕らミュージシャンにとってはステージに立つことは、本当に大きな意味があるんです。彼の中で、生きていく意味として、ステージに立つということが、すごく大事だと思うんです。その気持ちもくみ取れたし、リハビリをやらなければいけない状況もあった。

彼にとってライブがゴールとしてあることが、リハビリの力にもなると思ったんです。そういう意味を込めたのが、あのカウントダウンライブでした。

ラストライブツアー開幕の約2カ月前、今度はステージ4の肺がんが発覚する。

森友 連絡が来て、病院にすぐに駆けつけたんですけど、最初は「会いたくない」って。怖がりで、検査をちゃんと受けていなかったんです。

でも、あいつはツアーのことが気になっていて、「やりたいんだ」って。「だったら、まず今の状態をはっきり確認しないと、治療方針が決まんないじゃん」って。「今の状況が全部そろった上で、自分の意思を貫こうぜ。それは俺らもサポートするから」と説得して、検査を受けたんです。

彼の中に、ツアー初日からステージに立ちたいという思いはやっぱり強かった。ギリギリまで分からなかったけど、僕らもできる限りのことをやったし、彼も治療をね。

病気を抱えても、ミュージシャンである以上はステージに立ちたいという思い。だが、森友は上野のもうひとつの思いを挙げた。

森友 彼は同じような病気を抱えたり、何か障害があっても前を向いてる人たちの光になっている。音楽だけでなく、生きざまとして、上野がみんなに届けられる大きな力なんじゃないかなって。それが、16年からの僕らの中で話してることでもあります。

「それでもやりたい」という気持ちをステージに持ち込んで、やれるだけのことをやっていく。それは彼も望んでいるし、彼の病気にとっても多分、みんなの拍手や声援が何よりの力だとも思うんだよね。

1公演は約2時間半。上野は座ることなく、ベースを弾き続けている。

森友 すごいよ。とてもステージ4の肺がんを治療をしながらステージに立ってる人には見えない。実際はきついはずなんです。でも、それ以上に「ステージに立ちたい」という気持ちが、やっぱり生きる力になっているだろうしね。

だって、あんなに脚光を浴びたことないですから。上野の人生で、今が一番目立っていますよ。自分でセンターに行きますからね。「お前、行くんだ」みたいな。でも、そういう人格になっちゃったんです。多分、控えめじゃなくなりましたよね。

もともと言葉でしゃべるタイプじゃないので、おそらくセンターに立つことで「俺こんなにやっているから。お前らも楽しんで一番好きなことやっていけよ」と、メッセージを届けているんじゃないかなと思っています。

約1年におよぶ“ロングラン”のラストライブツアー。森友自身も26年4月、体調不良により和歌山、奈良の2公演を延期した。

森友 基本的に自分の体の不調とか、体力低下に鈍感なんです。4月上旬ぐらいから回復が遅いことはすごく感じていた。思うことはいっぱいあったけど、メンタルでいけちゃう。だから、頑張ってはいたんですけどね。

地方でも医者に診てもらってはいたけど、いよいよやばくなってきた時に、主治医に見てもらったら、いろいろとトラブルを抱えていることが分かった。

でも、和歌山と奈良は大事な場所だったんです。行っていないから。だから、なんとか持ち直せないのかなって。最善の治療を全部施してもらってもダメなら、最初から延期にしたけど、できる可能性があった。だから、そこに挑戦した。それが結果的にドクターストップ。申し訳なかった。 その時「中止ではなく、延期にしてくれ」って。「スケジュールを今すぐ探してくれ」ってお願いした。「絶対にいきたい。これがいけなかったら意味がない」ってね。そこは本当にお願いして、探してもらった。(つづく)