<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
アイドル史に名を残した1人のアイドルのラストステージを見た。
21日、乃木坂46梅澤美波(27)が卒業コンサートを行った。記者は昨夏からの数カ月、舞台あいさつやインタビューなど、複数回梅澤に取材する機会に恵まれており、どこか寂しさを抱くような感覚でステージを見守った。
梅澤はキャプテンとして約3年の月日を過ごした。昨年12月、2025年を振り返るインタビューの際には「せっかくキャプテンという立場をもらっているなら、メンバーとスタッフさんとの架け橋になれるように。メンバーはこう思っています、と伝えてみるとか、怖さはいったん置いて伝えてみるという実践をする1年でした」と話した。後の取材で分かったことだが、卒業を決意していたからこそより意識した点だったという。
キャプテンとしてのあり方を見つめ直すような話しぶりに加え、昨夏のツアー、舞台上映、映画の舞台あいさつなどが重なった期間を「違う現場に行って違う作業をすることでいろんなところから刺激をもらって、動きやすい夏だった気がします。客観的にメンバーを観察できたし、楽しくバタバタと過ごせた夏でした」と総括し、「9年かけて見つけたものがある」と話す姿に、これがプロフェッショナルの姿だ、というような感覚を得た。
思えば、これが記者が初めて梅澤にインタビューをした日だった。キャプテンにインタビューをするとなると、普段よりも一層背筋が伸びる、そんな感覚で挑んだ記者に対し、終始和やかな空気感で受け答えをしてくれた。その雰囲気に救われ、緊張も幾分かほぐれた。その後も何度かインタビューをさせていただいたが、やはりいつでも温和な空気感で、記者もある種の安心感を持って会話をすることができたことに本当に感謝している。
一方、卒業コンサートでも5期生小川彩(18)らが言っていたように、「圧」も併せ持つのが梅澤だ。記者が見た中では「圧」がどんなものなのか、明確なシーンはこれだと示す自信はないが、インタビューで撮影などの段取りを決める際にも「先にこうしたほうが良いと思います」と進言する姿や、グループ複数人の囲み取材の際にはどうしてもキャプテンに質問が集まりがちなところを他のメンバーにさりげなくパスを出す姿、こういったことは一部分として見えたものになるだろうと思う。
梅澤は秋元真夏からグループのキャプテンを引き継いですぐの取材で「強さを持ちすぎるとみんながビビっちゃうかなと思うので、柔らかさを持ちつつ、いい意味で『圧』みたいなものも持ってみんなを引っ張っていけたらと思っています」と語ったという。
乃木坂46メンバーにインタビューをした際、梅澤からかけてもらった言葉のエピソードが出ることは多い。4期生賀喜遥香(24)は「美波さんに『頼んだよ』って言われたら4期生は皆腕ぶん回しながら『任せてください!』ってなります(笑い)」と表現していた。1人の記者の視点ではあるが、梅澤の姿からも、メンバーが圧倒的な信頼を寄せている様子からも、掲げていたキャプテン像はしっかりと達成できたのではないだろうか。
梅澤が主演の1人を務めるドラマ「失恋カルタ」の会見の際にも共演者から「バラバラにしゃべってもまとめてくれる」「SNSの撮影で意見を出して採用される」と声が上がり、それに対して「周りが適当なので、私が決めるか、って(笑い)」。グループを離れた現場でも、キャプテンは間違いなくキャプテンだった。
日本を代表するアイドルグループの最前線に立つことのプレッシャーは想像を絶するものがあるはずだ。何度取材しても、記者はその感覚を推し量ることしかできない。しかし、緊張も不安も表には見せず、誰もが話しやすい雰囲気を持ち、優しさも温かさも持っている。そしてここぞの場面で引き締める。記者が取材できたのは数カ月の間に数回。しかし、団体の先頭に立つ、人の上に立つ者に必要な力は何なのか、大切な要素を梅澤の姿に見たように思っている。
卒業コンサートの最後の楽曲「乃木坂の詩」の歌詞通り、大きな拍手を背に受けながら振り返らず正面を見てステージを後にする様子を眺めながら、いち社会人として梅澤に抱いた憧れが想起された。【寺本吏輝】