ハリウッド知る岡本多緒、フランストップ俳優エフィラが語る、世界の巨匠と濱口竜介監督の違いは

映画「急に具合が悪くなる」カンヌ国際映画祭女優賞受賞会見で笑顔のヴィルジニー・エフィラ(左)と岡本多緒(撮影・鈴木みどり)

世界3大映画祭の1つ、 第79回カンヌ映画祭(フランス)で、日本人初の女優賞を受賞した「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)主演の岡本多緒(41)とベルギー出身のフランスの俳優ビルジニー・エフィラ(49)と濱口竜介監督(47)が26日、都内の日本記者クラブで会見を開いた。

岡本は、13年に真田広之(65)も出演した米英合作映画「ウルヴァリン:SAMURAI」(ジェームズ・マンゴールド監督)で、映画デビューを果たすなど、米ハリウッド作品に出演経験がある。エフィラも、16年にフランス国籍を取得し、同国で最も権威があるセザール賞最優秀女優賞を23年に受賞したトップ女優だ。質疑応答では両者に、世界的な作品、監督と、濱口監督との違いは? と質問が出た。

エフィラは「日本人だからフランス人だからの違いじゃなく、偉大な監督は自分のやり方を持っている」と、まず口にした。その上で「他の偉大な監督ともやっているが、竜介さんの特賞は撮影シーンと同じくらいシーン外のことが重要。シンプルな部分で言えば、俳優と監督の仕事の仕方が合致している。耳を傾け、周りの環境と一体になって物事を掘り下げていくやり方」と答えた。

さらに「複雑な部分は、他の監督は長回しのシーンで間違ったり、したら編集したり、他のところから撮る。濱口監督は最初から、もう1回、長回しで撮る。撮影現場でいる、時間というものを感じる。それとともに、みんなと一緒にやっている一体感を感じた」などと語った。

岡本は「まず、書く脚本の大ファン。今回、参加する前から、強く思っていた。筆力、文才・監督の書かれる文章、せりふは多分、いろんな監督とやってきた中でも、素晴らしい」と即答。「役者がプロジェクトに対し、やりたいという第一歩はそこにあると思う。何度読んでも面白いという感覚になれることはなかった。それが第一」と続けた。

さらに「いろいろなユニークな部分があるんですけど、印象に残っているのは、役者を見てくださっているのが、他の監督と比べても強く感じます」と強調。「ここからは想像なんですけど、他の部署への信頼。気を使わなければならないことを、違うところで準備し、カメラが回ると俳優のことを見て、聞いていると体で感じられる。声をすごく聞いている…いろいろばれちゃうので緊張しました」と言い、笑った。

「急に具合が悪くなる」は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者の宮野真生子氏と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者の磯野真穂氏がかわした20通の往復書簡を元にした、19年の同名共著(晶文社)を原作に、濱口監督が脚本を執筆。パリ郊外の介護施設の施設長マリー=ルー・フォンテーヌと、がんで闘病中の日本人演出家・森崎真理との交流を描く。マリー=ルーをエフィラ、真理を岡本が演じた。マリー=ルーと真理を引き合わせる重要な役どころとして、真理が演出する舞台に出演する俳優の清宮吾朗をた長塚京三(80)、吾朗の孫の窪寺智樹を黒崎煌代(24)が演じた。

◆「急に具合が悪くなる」 フランス、パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌ(ビルジニー・エフィラ)は、入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、日本人の演出家・森崎真理(岡本多緒)に出会い、がん闘病中の真理の描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、交流を始めた2人だったが、ある時、真理が「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、2人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。