岡本多緒、カンヌ映画祭女優賞は「オリンピックでメダルを取ったよう」原作者の花束にエフィラと涙

映画「急に具合が悪くなる」舞台あいさつを行う岡本多緒(左)とヴィルジニー・エフィラ(撮影・中島郁夫)

カンヌ映画祭(フランス)コンペティション部門に出品された、濱口竜介監督(47)の新作映画「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)ジャパンプレミアが27日、都内のTOHOシネマズ日比谷で開かれた。日本人初の女優賞を受賞した主演の岡本多緒(41)は「たくさんの、おめでとう、という祝辞をいただき、オリンピックでメダルを取ったような…皆さんが元気をもらった、うれしいというのか、感激しているという感じ」と、喜びをかみしめた。

岡本は、同賞を共同受賞したベルギー出身のフランスの俳優ビルジニー・エフィラ(49)が「受賞があるかも知れないと連絡を受けた時、うれしかった。8つしか賞がないわけですから。女優賞と知って、ビックリした。2人の受賞、うれしかったんですけど、なんで監督は登壇しないのかなと、女優が中心にいる映画なので正解だなと」と言うと、うなずいた。そして「私が俳優として(女優賞を)いただいたという感覚ではなく、この2人の間の何かに生まれたものの受賞だと思う。ペアで受賞することに意味があると思うし、そこを映画祭に評価していただいたことがうれしい」と口にした。

「急に具合が悪くなる」は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者の宮野真生子さんと、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者の磯野真穂さんがかわした20通の往復書簡を元にした、19年の同名共著(晶文社)を原作に、濱口監督が脚本を執筆。パリ郊外の介護施設の施設長マリー=ルー・フォンテーヌと、がんで闘病中の日本人演出家・森崎真理との交流を描く。マリー=ルーをエフィラ、真理を岡本が演じた。マリー=ルーと真理を引き合わせる重要な役どころとして、真理が演出する舞台に出演する俳優の清宮吾朗をた長塚京三(80)、吾朗の孫の窪寺智樹を黒崎煌代(24)が演じた。

この日は、磯野さんが花束を持って壇上に駆けつけた。岡本が演じた真理のモデルの宮野さんは、原作の出版2カ月前の19年7月に42歳の若さで亡くなった。そのことを踏まえ「2人が(カンヌ映画祭の授賞式の)壇上で手を携えていた中、私と宮野さんが見たいと思っていた光景を見せてくれたのだと思いました。世界から愛されるだけでなく、世界を愛する俳優として羽ばたいてください」とエールを送った。

エフィラと岡本は、思わず涙。岡本は「ちょっと、磯野さん…やめてください。どうやったら魂を落とし込めれば良いかと思った。そう言ってもらえることが全て。頑張って良かった」と感激。エフィラも「本当にうれしい言葉をいただいて感謝。生きていて、生きていること、やっていることに意味があるんだと思えることは、なかなかない。磯野さんの言葉を聞いて、そう思えた」と感謝した。

◆「急に具合が悪くなる」 フランス、パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌ(ビルジニー・エフィラ)は、入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、日本人の演出家・森崎真理(岡本多緒)に出会い、がん闘病中の真理の描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、交流を始めた2人だったが、ある時、真理が「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、2人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。