岩下志麻「58年も一緒に暮らし、映画史に残る作品何本も…優しかった」夫篠田正浩さんに感謝

「映画監督 篠田正浩レトロスペクティブ」Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下篇トークイベントに登壇した岩下志麻(撮影・村上幸将)

岩下志麻(85)が30日、東京・Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下で行われた「映画監督 篠田正浩レトロスペクティブ」Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下篇トークイベントに登壇した。夫で映画監督の篠田正浩さんが、25年3月25日に94歳で亡くなって以来、公の場に姿を見せるのは初めて。

トークの中で、司会の映画評論家・立花珠樹氏から、篠田さんが生前「僕が映画監督として1番、ラッキーだったのは岩下と出会ったことです」と語ったコメントが紹介された。岩下は、その一言を聞き「58年間も一緒に暮らしてくれて、本当にどうもありがとうございます。という感じ。夫として」と口にした。その上で「映画史に残るようなすばらしい映画を何本も、たくさん作ってくれた、本当にありがとう。これは映画監督として」と続けた。そして「私は類いまれなる才能、素晴らしい人だったなと思う。あなたは、すばらしい人だったと、いつも仏壇に言っているんです。私は優しい、思いやりのある人と、58年間、暮らせて本当に幸せだったと思っております」と篠田さんに感謝を重ねた。

出会った時の、松竹時代の若き日の篠田さんの様子も語った。当時は小津安二郎、木下恵介、渋谷実といった大御所監督がおり、篠田さんは若手だった。「他の監督さんは背広にネクタイ、ワイシャツにズボンという方が多かったんですけど、篠田はジーンズにピンクのシャツ。すごく目立っていた」。本格的なデビュー作となった60年「乾いた湖」の面接で出会ったが「私の面接の時もピンクのショートパンツですから。この方が監督さん? と思ったくらい若々しい。格好良かったです」と振り返った。

一方で「尊敬する監督。愛情とか恋愛感情とか、全くありませんでした」とも口にした。その上で「メロドラマが多かったので(演じる役どころは)運命に流されている女性が多いですよね? だけど、篠田の作品は必ず、自己主張を持った女性だった。初期の篠田の作品は、出演の交渉がくると、うれしかった」と語った。

篠田さんは「岩下志麻という女優は、正確な演技ができる」と評価し、いろいろな監督に伝えたこともあったという。岩下は「いろいろな監督に聞かれたらしくて。だから私はその後、小津安二郎監督や渋谷実監督の作品に出られた。篠田のおかげだと思います」と、改めて感謝した。

トークの最後には「これからも、篠田の映画を時々、ご覧になって頂けたら、本当にうれしく思います」と客席に呼びかけ、声を詰まらせた。