池松壮亮「敗北の歴史知り、脈乱れ、息詰まり、涙止まりません」Nスペ戦後80年映画7・31公開

公開日が7月31日に決定した映画「開戦前夜」のキービジュアル(C)2026ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト

25年8月16、17日にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」のドラマパートに、40分の追加シーンを加えた映画「開戦前夜」(石井裕也監督)の公開日が7月31日に決まった。配給の東京テアトルが5月31日に発表した。

「開戦前夜」は、猪瀬直樹参院議員(79)が1983年(昭58)に出版したノンフィクション「昭和16年夏の敗戦」が原案。真珠湾攻撃8カ月前の1941年(昭16)4月に、官僚、軍、民間から日本中のエリートたちが秘密裏に集められた、実在の「総力戦研究所」に着想を得て、石井裕也監督(42)が脚本・編集・演出を担当し、初めて戦争ドラマに挑戦した。

日本最高の頭脳を持つ若者たちに与えられた任務は、内閣総理大臣の直轄機関「総力戦研究所」で「模擬内閣」を結成して日米開戦の行く末をシミュレーションし、東條英機ら「本物の内閣」に報告すること。彼らは、米国に対する「圧倒的な敗北」「日本必敗」という衝撃のシミュレーション結果を命がけで導き出し、開戦へと突き進む軍や本物の内閣と対峙(たいじ)も、見解は採用されなかった。日本は勝ち目のない戦いへと突き進み、彼らの予測は原爆投下以外、ほぼ全て的中。知略が積み上げた予測が、時代が放つえたいの知れない「空気」によって、跡形もなくのみ込まれていった。その空気にも踏み込んで描く。

池松壮亮(35)が、東大法学部を首席で卒業した産業組合中央金庫(現・農林中金)の調査課長で、模擬内閣の内閣総理大臣を務める宇治田洋一を演じる。仲野太賀(33)が宇治田と同じ民間出身の同盟通信社政治部記者で、模擬内閣で内閣書記官長兼情報局総裁を務める樺島茂雄を演じる。

三代目J Soul Brothers岩田剛典(37)が模擬内閣で海軍大臣を務める海軍少佐の村井和正、中村蒼(35)が模擬内閣で陸軍大臣を務める陸軍少佐の高城源一、三浦貴大(40)が模擬内閣で企画院総裁を務める同院物価局事務官の峯岸草一を演じる。

國村隼(70)が総力戦研究所所長の板倉大道陸軍少将、佐藤隆太(46)が陸軍中佐の瀬古明、江口洋介(58)が陸軍省軍務局高級課員で中佐の西村良穂を、それぞれ演じる。

そして、佐藤浩市(65)が陸軍大臣から総理大臣になる東條英機を演じる。劇中で「机の上で日米開戦か。これは面白いな」というセリフも出てくるなど開戦強硬派だった東條だが、総理大臣就任後は天皇の意向から和平交渉を模索する中で、開戦を求めて激化する世論や軍部と、天皇への忠誠とのはざまで苦悩する。近年の研究で明らかになってきた、既存の独裁主義的なものとは違う人物像を落とし込んだ東条を、佐藤が繊細な芝居で演じ上げた部分が、より色濃くなったのも、完全版となった映画の魅力だ。

俳優陣のコメント全文は、以下の通り。

池松壮亮 はじめて今作の脚本を読ませて頂いた時、知らなかった戦前の敗北の歴史を知り、脈が乱れ、息が詰まり、涙が止まりませんでした。2025年の戦後80年に、自分のできるすべてを今作にささげたいと願い、毎日祈るように撮影現場に向かっていました。今作をすさまじい情熱と責任を持って作り上げてくれた石井裕也監督に、感謝と敬意をささげます。そして大きな使命を共有し、共に闘ったスタッフ、キャストの皆さまに心から感謝します。日々あり得ないことが起き続ける世界に、この映画が何ができるのかを考え続け、映画の持つ小さな奇跡を信じ続けました。どうかたくさんの方にこの映画が届いてくれることを願っています。

仲野太賀 昭和16年と令和8年。時代も違えばテクノロジーも進歩し、我々の生活は当時とは何もかもが変わりました。しかし、今作への参加にあたり「総力戦研究所」の存在を知ったとき、過去と現在に共通するある種の「違和感」が浮き彫りになりました。当時、彼らが対峙(たいじ)していたのは、敵国以上に、あらがうことのできない時代の奔流や同調圧力、そしてえたいの知れない「空気」そのものだったのかもしれません。戦後80年が経過し、社会情勢が不安定さを増す現在、今作が描く不穏さは、決して遠い過去の出来事とは思えないのです。

岩田剛典 海軍少佐の村井和正役を演じた岩田剛典です。個人的なことですが、僕の祖父は予科練に所属していましたので、宿命のようなご縁を感じながら参加させて頂きました。地上波放送では放送されていない未公開シーンを含め完全版の内容です。ぜひ劇場でお待ちしています。

中村蒼 戦後の我々が対米戦争は間違いだったと言うのは簡単ですが当時の『総力戦研究所』に所属していた方がその答えを出すのは相当な覚悟が必要だったと思いますし各自の情報と経験に基づき真剣に議論を重ねたと思います。正しい知識と情報を基に話し合い導き出した"日本必敗"という答えが"大和魂"というたった一言の精神論で緻密(ちみつ)なシミュレーションが無視されて戦争へと進んでしまいました。どんなに正しい事を言ったとしても歴史の空気や流れには決して勝てないという事はさまざまな組織でもある事だと思うので共感出来る所は多々あると思います。多くの命が奪われてしまった出来事を忘れないためにも多くの方に届いてほしい作品です。

三浦貴大 撮影当時、全ての俳優が議論を交わし作品に向けて1つになっていたように思います。そういった面でも、けうな作品です。映画として公開されることになり、今、人ごとではなくなった戦争について再び考える、きっかけになってほしいと強く願います。

國村隼 誰もが望んではいないであろう、はずの戦争が何故、起こってしまうのか…。この「開戦前夜」という作品には、かつて日本がたどった、戦争への道筋が描かれている。当時、世界から孤立していった日本には、本当に戦争という選択肢しか残されていなかったのだろうか? 世界は、“あの時”に戻っているのではないかと思いたくなる様相で、だからこそこの作品は生まれ、いまここにあるのだろう。

佐藤隆太 今回、久しぶりに石井監督と再会できた事が何よりうれしかったです。参加初日から石井組ならではの心地よくも鋭い緊張感が張り詰めた現場に、その場にいた役者たちが武者震いをしているようでした。あの場で生まれたひとつひとつの呼吸までもが伝わる様な、研ぎ澄まされた作品になっていると思います。多くの方に受け止めて頂きたいです。

江口洋介 開戦前夜、日米開戦に向けてのたくさんの書物に目を通し、総力戦研究所や陸軍省軍務局について学び、スタッフキャストと共にこの作品に魂をかけて望みました。静かに広がる同調圧力、後戻りができない恐怖、身動きが取れない時代の空気は、現代にも通ずるものがあると感じます。何故日米開戦は起こったのか、たくさんの命がなぜ失われたのか、ぜひ、劇場で観ていただきたい作品です。

佐藤浩市 当時は国におもねる論調のあった新聞。それに踊らされアメリカをたたけとほえる民。一周回って、それを世論として看過できずにチキンレースに出ていく国。戦争という最大の人災が起きる不幸のトリニティが産み出される瞬間、それが開戦前夜。2度と繰り返してはならないと誰もが思っているのに世界のいずこかで起きている戦争。日本は未来永劫(えいごう)、戦後でなければならない。

◆「開戦前夜」 与えられた任務は、内閣総理大臣の直轄機関「総力戦研究所」で「模擬内閣」を結成して日米開戦の行く末をシミュレーションし、東條英機(佐藤浩市)ら「本物の内閣」に報告すること。宇治田洋一(池松壮亮)を始めとする若きトップエリートたちは、国家機密データを駆使した激烈な議論の末「日本、必敗」という1つの結論にたどり着く。導き出された冷徹な「正解」を前に、彼らの理性は「戦争を止めるべきだ」と叫ぶ。そして迎えた、「本物の内閣」への報告会。命をかけた「シミュレーション」の末に、彼らが目にした残酷な結末。これは戦時中の悲劇ではない。今なお我々に突きつけられる社会の闇である。