初めての法廷取材は疑問や発見だらけ えっ、まだ前半? えっ、ここで交代? えっ、検察官?

東京地裁(2023年10月撮影)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

初めて裁判所の法廷で取材した。6月2日、東京地裁で開かれたジャングルポケット元メンバー、斉藤慎二被告(43)の第5回公判だ。

これまでにも相撲担当時代に裁判所へ行って取材したことはあったが、出てきたところで弁護士に取材するといったことしかなく、法廷内に入って取材したことはなかった。おそらく、多くの読者の方も、法廷での取材や様子などは知らないと思うので、私が感じた疑問、発見、意外と感じた出来事などを率直に書いていく。

(1)傍聴券獲得 まず、傍聴券を求める人が多いと想定される裁判は、地方裁判所のホームページに「傍聴券交付情報」として掲載される。今回の場合、東京地裁のホームページ上で公開。ただし、何について争われている裁判、日時などは公開されるが、被告の氏名などは公開されない。第4回公判を取材した記者から「6月2日午前10時~」と聞いていたので、これに合致する裁判の「傍聴券交付情報」が公開されるのを待った。意外と、ギリギリまで出ない。5月31日が日曜日だったこともあり、おそらく今回は、6月1日に公開されたように記憶している。ホームページには「当日午前9時20分までに指定場所に来られた方を対象に抽選を行います」と書かれていた。

当日午後9時9分に、番号が記された抽選の紙を受け取る。第4回公判の時は、係員に「ここに並べばいいんですか?」と聞いている間に1人に抜かれ、その1つ前の、抜いていった人の番号が「当選」だった。妙に悔しかったので、今回は「この番号は運命だ」と思えるように、スタスタと並んだ。最終的には、あまりにもキリが良いが、20席の傍聴券を求めて200人が並び、倍率は10倍だった。

(2)当選後 開廷は午前10時。抽選結果は、午前9時22~23分ごろには確認し、法廷に入ることができると分かったので、タバコを1本吸おうと思っていた。だが、別の先輩記者に「早く行った方がいいぞ」と言われ、なくなくそのまま東京地裁の中に入った。以前は、地裁の中に喫煙所があったと記憶していたが、コロナ禍の影響なのか、閉鎖されていた。自宅で午前8時20分ごろに吸ったきりだったので、すでにタバコを吸いたくなっていたが、仕方なく東京地裁の入口に向かっていった。

どうも、この時間帯が最も混雑するのか、東京地裁に入るための手荷物検査が長蛇の列になっていた。法廷内には、電子機器類などを持ち込めないと知っており、この時点で手荷物を預けるのかと思っていたので、スマートフォンや、タバコなど、ポケットに入っていたものを全てカバンに入れていた。だが、手荷物が返ってきた。手荷物検査員に聞くと「荷物を預けるのは法廷に入る直前」と言われた。知らないことが多いものだ。

「429号法廷」とのことで、4階に行った。エレベーターを降りると、この裁判用のシフトが敷かれており、429号法廷に向かう通路に柵が設けられ、係員がおよそ15人もいた。「傍聴券をお持ちの方は、壁に沿って並んでください」。この並ぶのが、開廷15分前、9時45分までと聞かされていた。ただ、後から分かったことだが、「司法記者クラブ」に加盟している会社の人は、頻繁に記者交代しながら出入りしており、傍聴券さえあれば、9時45分までに並ばなければいけないわけでもないようだ。「早く行った方がいいよ」と、たきつけられ、前から5番目に並ぶという、やる気満々な感じになってしまった。

(3)法廷へ 9時45分になると、壁沿いに列をつくっていた、傍聴券を持った人たちが順々に、柵の中へと案内された。その直前にブラウンの上下、スカートタイプの着崩したスーツのような、オシャレな服で入っていくキレイめな女性が、大荷物を持ってノーチェックで入って行った。「あれはどういうことだ?」と思っていた。少しして判明したが、検察官だった。ドラマのイメージで、検察官はキャリアのある男性がやっていると勝手に思っていたが、オシャレでキレイな女性だったのでビックリした。

そして、自分も柵の中に入り、手荷物を預ける。この日、何度も聞くことになる「電子機器類、スマートフォンなどはお持ちじゃなかったですか?」に「ないです」と即答。ノートとペンは持参が許されていたので持ち込んだ。荷物を預けると、女性と男性に分かれて列をつくるよう指示された。金属探知機を体の隅々まであてがい、体もめちゃくちゃ触れるため、検査員は同性が触る体制にするため男女の列になっていた。

空港よりも、各段に厳重にチェックされた。持っていたペンはトレイに出し、金属探知機をあてられ、何か細工が施されていないかチェックされた。頭にも金属探知機をあてられた。カツラ対策なのか…。いや、そもそも、カツラの人は、法廷に入ることができるのか…。「それも取ってください」とか言われてしまうのか。まだまだ、1度入っただけでは初心者。こうやって書いていくうちにも、疑問が出てくるものだ。

(4)いよいよ法廷内 シートに「記者席」と書かれたイス以外は、自由に座ることができる。どこが正解か分からない。とりあえず、声を聞き取りやすいよう、前の方を選んだ。向かって左側が被告側、右が検察側。右側の3人のうち、最も裁判官に近い席に、さっきのノーチェック素通り女性が座っていた。両者の声が聞こえるように、中央ぐらいに座った。中央前方…。この裁判が楽しみで仕方なかった人みたいな席に陣取ってしまった。午前9時57分、斎藤被告が入廷してきた。上下黒のスーツで紺のネクタイをしていた。バウムクーヘン販売をしているからか、やけに日焼けしていた。

(5)裁判開始 午前中のメインは被告人質問。被告人の弁護士が、被告人に質問していく。ここは事前に打ち合わせしていて、しかるべきなので、被告もよどみなく、スラスラと答えていた。不同意性交の裁判で、生々しい描写も語られた。ピッタリ正午に被告人質問が終わった。「今日はここまでかな」と思っていたが、ほどなく女性裁判長が「午後は1時30分から再開します」と一言。「えっ!?」。まだ続くと、そこで初めて知って、かなり驚いた。

中央の記者席では、テレビのニュース番組などでよく見る、裁判の様子を描く人がいた。記者席の記者は、頻繁に出入りしていたが、予想外に、絵を描く人も入れ替わっていた。あまりどういうシステムか分からないが、ほとんど描いていない人が去り、次に来た人は、めっちゃくちゃ描く。ちょっと目を離すと、まあまあ絵ができあがっている。合同で1枚の絵を完成させているのか-。やはり初心者には、いろいろと分からないことが多い。唯一、分かったのは「記者席」の中央最前列は、絵を描く人の席のようだということ。普通の記者が、そこに座っていると、「ちょっとここは…」と、どかしていた。なんとなく、ベテランの絵を描く人は、なかなか描かず、若めな人が、めちゃくちゃ描いていた気がした。

午前の部が終わり、「タバコを吸いたい」という感情は、マックスに達していた。「喫煙所はどこだ?」。やみくもに東京地裁を出ると、目の前に大きな公園があった。日比谷公園だった。案内図を発見。“ダメ元”で喫煙所を探すと、あった! 一目散に向かった。けっこう遠い…。ようやく喫煙所に着いた時点で、すでに12時50分。この時点では、午後の部が始まる15分前の午後1時15分には、429号法廷前で並んでいないといけないと思っていたので、急いで2本吸い、午後1時ちょっと過ぎに東京地裁へと戻っていった。

ただ、やはり遠い…。しかも、「このぐらいあれば足りるだろう」と、ノートが残り8ページほどで、この日の取材に臨んでいたが、すでに午前の部で使い切ってしまっていた。コンビニは東京地裁の地下1階にあると聞いていたので、急いで向かい、1冊購入した。そこから急いで4階に向かい、午後1時14分ごろに何とか、所定の場所に到着。ただ、あまり集まりが良くなくて、またもや5番目ぐらいに並んでしまった。そこで初めて、厳密に15分前に来ていなくてもいいと知った。

(6)裁判終了 午後の部は、例のオシャレな女性検察官が、斎藤被告に質問する時間が続いた。さらに、被害女性の弁護士からも質問があった。「最長で午後5時ごろ」と、裁判取材に詳しい同業他社の人に聞いていたので、ある程度覚悟していたが、午後3時17分に斉藤被告とその弁護士が退廷した。知らなかったが、被告側が出ていって、おそらくエレベーターに乗り込むまでは、検察側も一般の傍聴席に座っている人も、記者席に座っている人も、法廷から出ることどころか、立ち上がろうとすると「座ってください!」と裁判所関係者に注意され、立ち上がることさえ許されなかった。被告と接触できないようになっていた。

4月1日から芸能担当となったのだが、直前に計8~9年ほど担当していた大相撲も、1日の労働時間としては、早いと午前5時台に家を出発し、午後9時、下手すると同11時ごろまでの労働もあるが、ここまで集中した状態で、メモし続けることはない。利き腕の右腕はパンパンだった。そこから、ようやく原稿を書く作業に入ったのだが、味わったことのない徒労感を覚えた。これが大相撲のように15日間も続いていたとしたら…。司法記者クラブの人たちは、そんな毎日かと思うと「そりゃあ、途中で交代するよな」と感じた。そして、絵を描く人たちも。交代しながら1枚の絵を描いているのか、それぞれが別々の絵を描いているのかどうか、分かっていないが、少なくとも、いろんな世界があるのだなと痛感した1日だった。あと、タバコを吸える自由な環境に、ありがたみを覚えた1日でもあった。【高田文太】