映画「開戦前夜」(石井裕也監督、7月31日公開)の公式サイトが12日までに更新され、同作ドラマ版への訴訟提起を念頭に「映画の公開予定に変更はございません」とあらためて報告された。
同作をめぐっては、昨年8月にNHK総合で放送されたドラマ版となるNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」の内容をめぐり、モデルとされた人物の親族が、名誉を毀損されたとして同局などを相手取り損害賠償請求を起こしている。
ドラマパートに40分の追加シーンを加えた映画版について、NHKエンタープライズなどが入る製作委員会は今回の声明で、提訴について「原告の一方的な見解に基づくものであり、本製作委員会として断じて受け入れることはできません」とコメント。「原告の一方的な主張に基づき公開を中止することは、歴史的事実や実在の組織・事件を題材とする表現活動に重大な萎縮をもたらしかねません」として、予定通り公開するとした。
「開戦前夜」は、猪瀬直樹参院議員(79)が1983年(昭58)に出版したノンフィクション「昭和16年夏の敗戦」が原案。真珠湾攻撃8カ月前の1941年(昭16)4月に、官僚、軍、民間から日本中のエリートたちが秘密裏に集められた、実在の「総力戦研究所」に着想を得て、石井監督が脚本・編集・演出を担当し、初めて戦争ドラマに挑戦した。主演は池松壮亮。
▼公開全文
製作委員会からのメッセージ
本作ドラマ版(NHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」のドラマパート)に関する訴訟の原告は、メディア等を通じ、本作を「故人(原告の祖父)の名誉毀損」「歴史捏造」「史実歪曲」等の強い表現で批判しています。しかしながら、これらは原告の一方的な見解に基づくものであり、本製作委員会として断じて受け入れることはできません。
私たちは、原告が故人について大切にされている人物像やご心情を軽んじるつもりはありません。これまでも、原告のご懸念を真摯に受け止め、本作の登場人物が原告の祖父であると同定されないよう、複数回にわたり原告との間で対策について協議を重ねたうえで、フィクションであることの明示や誤解防止のための表示・説明など、必要な対応を行ってまいりました。映画版においても、誤解を避けるための措置を講じております。
本作は、特定の人物の評伝でも顕彰作品でもありません。また、特定の人物を貶めることを目的とした作品でもありません。描こうとしているのは、敗戦を予測する合理的な知がありながら、なぜ国家が開戦を止められなかったのかという、当時の社会の空気です。原告の祖父は本作に登場せず、当然のことながら同氏の人格や人物像を描く意図もありません。
本作は、歴史的事実に着想を得たフィクションです。したがって、本作を「歴史捏造作品」であるかのように断定することは、作品の内容および制作意図を正確に踏まえたものではありません。
原告は、本映画の上映を阻止する旨も明言しております。しかしながら、原告の一方的な主張に基づき公開を中止することは、歴史的事実や実在の組織・事件を題材とする表現活動に重大な萎縮をもたらしかねません。これまで当たり前のように見られてきた歴史ドラマ、社会派作品、実在の出来事に着想を得た映画やドラマを、観客の皆さまに届けること自体が難しくなるおそれがあります。
本製作委員会は、本作が原告を含む第三者の権利を不当に侵害するものでないと確信しております。したがって、映画の公開予定に変更はございません。なお、本作ならびにキャスト・スタッフ・その他関係者の信用や名誉を不当に毀損する発信や働きかけに対しては、法的措置を含め適切に対応してまいります。
映画『開戦前夜』製作委員会