女優中村玉緒(本名奥村玉緒)さんが、9日に肺炎のため亡くなった。86歳。所属事務所が発表した。
中村さんは上方歌舞伎の名門成駒屋の2代目中村鴈治郎の長女として生まれ、兄は中村扇雀という歌舞伎の名門で育った。1962年には俳優勝新太郎さんと結婚。97年に勝さんが下咽頭がんで亡くなるまでの35年間の結婚生活を送った。
中村さんは15年秋に公開された映画「ポプラの秋」の取材会で勝さんについて言及。同作で死者への“手紙配達人”を演じ「主人が地獄にいるなら、私は天国ではなく、地獄に行きたい」とコメントした。
中村さんは「メールはやらないので手紙派」といい、勝さんとは「話すとケンカになるから、手紙でやりとりしていた」というのは有名な逸話。
ただ、手紙といっても、メモの走り書きのようなもの。豪快な生活ぶりで借金も多かった勝さんに「早く借金を返して。明日のご飯が食べられません」などと書いた紙を渡していたという。
「でも、私、ラブレターを書いたことも、もらったこともない。小学生時代、初恋の人には、字が汚くてラブレターを書けなかった。もらったこともない。主人からも」と明かした。
勝さんからはラブレターはおろか、走り書きメッセージメモにも返事はなかったという。中村さんは周囲の猛反対を押し切り、勝さんと結婚し、彼の豪放な生きざまに妻として、翻弄(ほんろう)され続けた。それでも、最後まで愛を貫き通し、今でも「主人に会いたい」と話す。
自らの死後の話題にも応じ「私は棺桶には何も入れない。この世でやりたいことは全部やっていく。天国へは何も持って行く気はないし、ただ『主人に会いたい』。それだけ」と笑った。そして、その先が「天国か地獄が分からないけど」と言い、勝さんが地獄にいるなら「もちろん、私も天国ではなく、地獄に行きます」と言い切った。
◆中村玉緒(なかむら・たまお)本名奥村玉緒。1939年(昭14)7月12日、京都生まれ。01年から京都市特別観光大使を務め、11年から、「京都名誉観光大使」に就任。血液型O。