是枝裕和監督、AI題材で映画作った契機は…美空ひばりのモヤモヤと出川哲朗の母復活再会企画

母校の早大の人気授業「マスターズ・オブ・シネマ」の講義にゲストとして登壇した是枝裕和監督(撮影・村上幸将)

是枝裕和監督(63)が13日、母校の早大の人気授業「マスターズ・オブ・シネマ」の講義にゲストとして登壇し、公開中の新作「箱の中の羊」をはじめ、学生の質問に答えた。

「箱の中の羊」は、24年春に中国で死者のよみがえりビジネスが人気という記事を読んだ是枝監督の中に湧いた「最新のテクノロジーで死者をよみがえらせる」という発想が出発点となり、同年秋にビジネスをしている人に会い原案・脚本から手がけた。その題材を着想するにあたり、NHKが19年に没後30年を迎えた美空ひばりさんの過去の映像や音源を基に、最新のAI技術で現代によみがえらせた企画と、出川哲朗(62)と8年前に亡くなった母をAIでよみがえらせ、再会させた企画に、今作でAIを題材として選んだ、契機の一端があったと明かした。

是枝監督は「美空ひばりさんの復活プロジェクトを見て。新曲を歌ったでしょ。モヤモヤした」と当時、抱いた率直な思いを説明した。「中国のビジネスの関連書籍を読んで、生きている都合で、死んでいる人を、もう1回、利用するというのもモヤモヤになった」と振り返った。

一方で「後にお願いして見せてもらったんですけど、出川さんがお母さんと再会し、言えなかったひと言『生んでくれてありがとう』と言う…当人にとって、涙なしには言えない」と、美空ひばりさんの復活企画とは、正反対の感情を抱いたと説明。「出川さん、が悪いわけではない。そういう気持ちは、誰にもあるからこそ、制度として使えるよとなった時、自分も使いたいと思った」とも語った。その上で「モヤモヤだけだと行き詰まるから、2つの感情があったのが、いいところだと思った。多分ね、死んだ人が、もう1回、帰ってくる話をやりたいんだと思ったんだよね。それでAIを使った」と語った。

「箱の中の羊」は、そう遠くない未来が舞台。綾瀬が演じた建築家・音々と、大悟が演じた工務店の2代目社長を務める健介の甲本夫婦が、息子を亡くして2年のタイミングで、桒木里夢(くわき・りむ=10)が演じた息子・翔の姿をしたヒューマノイドを自宅に迎え入れる。ヒューマノイドに前向きだった音々が「おかえり」と駆け寄って喜ぶ一方、健介は戸惑いを隠せず、ヒューマノイドから「パパだよね」と問いかけられても「おじさんでええよ」と答えるなど、夫婦の間には温度差が生じる物語。

◆「箱の中の羊」 息子を亡くして2年。建築家の音々(綾瀬はるか)と工務店の2代目社長・健介(大悟)の甲本夫婦は、息子・翔(桒木里夢)の姿をしたヒューマノイドを迎え入れることになる。到着した日、「おかえり」と駆け寄り喜びを隠さない音々と、戸惑いを隠せない硬い表情の健介。「パパだよね」と問いかけられた健介は、「おじさんでええよ」と答える。ほどなく予期せぬ事態が起こり、夫婦がそれぞれに抱く息子の死への思いがあらわになっていく。夫婦が大きな決断に迫られる中、ヒューマノイド翔はひそかにヒューマノイドの仲間たちとつながり始める。