5月のカンヌ映画祭(フランス)で日本人初の女優賞を受賞した「急に具合が悪くなる」(濱口竜介監督、19日公開)主演の岡本多緒(41)が18日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われたユニクロ「PEACE FOR ALL×難民映画基金 ショートフィルム特別上映会」に登壇した。
難民映画基金は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)親善大使を務めるオーストラリアの俳優、プロデューサーでケイト・ブランシェット(57)が、25年のロッテルダム映画祭(オランダ)で同映画祭のヒューバート・バルス基金と共同で創設。避難を余儀なくされた映画製作者、避難民としての経験を描いた実績のある映画製作者の活動を支援・助成することを目的としており、ユニクロが創設パートナーとして支援している。その第1弾助成作品の「Rotation」(マリア・エル・ゴバチ監督)と「Allies in Exile」(ハサン・カッタン監督)が、この日、上映された。
身重の体で登壇した岡本は、16年5月に結婚した世界的な編集者、クリエーターのテンジン・ワイルド氏の母が、1950年代にチベットから亡命し、スイスで暮らす難民という出自を持つ。自身、モデルとして世界で活躍してきた一方、俳優と並行し、監督として映画製作も行っており、25年に米ニュージャージーに暮らす11歳のペマとチベット系移民の両親の一家を描いた短編映画「マイ・スウィート・パーラ」を手がけた。
岡本は「『パーラ』はチベット語で、お父さんの意味。私の義母が50年代にチベットから亡命し、最終的にスイスで生活している。その中で夫、夫の家族からチベットの人権問題、難民、社会情勢を学んでいった経緯がある」と映画を製作した経緯を語った。「チベット難民は、緊急性としては今は低いと思いつつ、もっと前から続いている問題。人が移住し、次の子どもが生まれ、移住の子、ということが起きている、チベット難民は米国が多い。差別という行為がどこから来ているか切り取りたかった」と製作の意図を語った。
一方で「私がチベットの問題を映画化するのに戸惑ったのは、私が良いんだろうか…という当事者性の問題。チベット難民の息子と結婚した自分には経験がない」と、チベット出身でもない自分が、チベット問題を映画にしても良いか、悩んだとも吐露。「チベットのルーツを持った方にプロデューサー、キャスト、クルーもチベットの方をなるべく使い、当事者に語ってもらうようにした。当事者じゃなくても一緒ににやろうということが、必要かなと思えた」と当事者に製作に関わってもらったと説明した。
今回の上映会は、難民映画基金を創設パートナーとして支援するユニクロが、22年6月からTシャツを着るという身近な行動を通じて平和への思いを共有するプロジェクトとしてスターとし、1000万枚超を販売し寄付金額が30億円に到達したプロジェクト「PEACE FOR ALL」とコラボして行われた。この日は、23年のカンヌ映画祭で主演の役所広司(70)が男優賞を受賞した「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース監督)の企画発案、出資、製作、プロデュースを手がけた有限会社MASTER MINDも率いる、ファーストリテイリングの柳井康治取締役・グループ上席執行役員と、「PEACE FOR ALL」に賛同し、上映会に会場を貸し出した東宝の松岡宏泰社長も登壇。ロッテルダム映画祭マネージングディレクター クレア・スチワート氏と、難民映画基金第1弾5作品を日本で初上映する、東京国際映画祭の市山尚三プログラミング・ディレクターも出席した。【村上幸将】